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■4月初旬の休日の朝、かねての目論見、土筆(つくし)採りの日だ。毎年この季節の恒例行事である。昨日からの雨が土筆の生育を一気に促した筈だ。
 めざすは北六甲台の北西の台地周辺の土手である。ぬかるみに備えて長靴に履き替え準備万端。歩くこと数分。右の画像は、目的地を臨む畦道からの風景である。土手に植えられた桜も見頃だ。
■目的地に到着。一週間前、下見に来た時は5cm程の固そうな胞子が雑草の隙間からわずかに頭をのぞかせていた。
 そして今日、このところの菜種梅雨が好環境となったようだ。太った茎に、程よい柔らかさの胞子の土筆たちが田んぼの土手沿いに群がって出迎える。摘んで回ること約1時間。スーパーの小さ目のビニール袋に一杯の収穫。200g前後か。
■幼い頃、郷里の線路道沿いに点在する土筆を摘んで回った。当時の記憶に残る土筆はセイゼイ10cm程だったはず。北六甲台に引っ越して間もなく、散策の途中で30cm近くの土筆を発見して驚いた。土筆がこんなにも大きくなることを、この土手で教えられた。今年も30cmサシで比較したところ右の通りの発育である。
■さていよいよ調理にかかろう。「土筆の油炒め」である。まずは工程中もっともいやな袴取り作業である。茎の節々を袴が取り巻く。これだけは食べられない。ひとつずつ丹念に取り除く他はない。胞子の粉を含んだ袴は指先にまとわりついて最後の抵抗を試みる。指先の黒ずみもやむなし。
 根気との闘いである。作業時間約75分。かくして袴をはがされて妙に艶っぽくなった土筆たちはご覧の通りのありさまとなる(上の真ん中の画像)。袴をなくしてスッピンになった土筆たちは水風呂で汚れ垢を落とされ、熱湯で骨抜きにされて湯上がり美人となる。(上の右側画像)
 ゆがきあがった土筆たちには、オリーブオイルを垂らした熱したフライパンに投入されるという過酷な運命が待ち受けている。顆粒状の「だしの素」と醤油で味付けして一丁あがり。右側の画像から、出来上がったばかりの湯気の立つ香ばしいばかりの絶品の「土筆の油炒め」を想像いただけるだろうか。
■アツアツの土筆を肴に缶ビールをグットひといき。キク〜ッ。こたえられない。たまらない。この一瞬のためだけに朝からの苦難の道のりがあった。ナントオーバー。ナントつましい幸せ。