トップ 都市景観形成建築物 「西宮の民家」の古民家

 都市景観形成建築物等の指定制度は、昭和63年に制定した西宮市都市景観条例に基づくもので、西宮らしい都市景観の形成を図るため、地区の都市景観を特徴づけているもの、歴史的・建築的価値がある建築物などを指定し、貴重な景観資源として保全し、将来へ引き継いでいこうとするものです。
 この制度は、景観的に優れた建築物等の保全が目的ですが、凍結的な保全でなく、機能上、管理上必要な増築・改築工事をしながらも、建築物の外観上の特徴を損なわないようにしていただこうというものです。 
 現在以下の7件の建築物が指定され、山口には今西邸と細木邸の二件が指定されている。両邸宅の玄関先には、御影石の石柱に「西宮市都市景観形成建築物 ○○邸 1993年12月指定」のプレート(右画像)が設置されている。 
 1 関西学院大学図書館及びランバス記念礼拝堂
 2 武庫川学院甲子園会館(旧甲子園ホテル)
 3 聖和大学4号館及び旧宣教師館

 4 今西邸(山口町)
 5 芝辻邸(名塩木之元)
 6 細木邸(山口町)
 7 神戸女学院
■「山口中学校創立50周年記念誌」には、この住宅の所有者・今西永児氏の以下の記述がみられる。(抜粋編集)
 『今西家は奈良が発祥の地といわれ、春日大社の神官を務めていたようだ。その後全国各地に散らばった今西家のうち三田市香下の今西家から8代前(約250年前)に山口町名来に分家してきたのが現在の我が家である。先祖は農業の傍ら、紙梳きや水車を使った精米を神戸、大坂に販売していたようだ。我が家の家屋の特色は、通常四間取りの多い中で六つの部屋がある六間取りであることで、山口町の茅葺き家では最も大きかったようだ。茅葺き家は、夏は涼しく、冬は暖かで快適だが、今日のように住環境が西洋化してくると若い人たちには住みづらいかもしれない。また茅葺き家は、20〜30年に一度は葺き替えをしなければならず、その為の大量の茅の確保や葺き替えの特殊技術を持つ職人さんの手配が極めて困難になっている。そのことがかつては山口にも多くみられた茅葺き家が、現在ほとんどなくなっている背景にある。』
■今西邸は、「西宮の民家」での調査対象外で構造上の把握は困難であるが、現在も山口では数少ない茅葺き家のひとつとして健在である。区画整理された名来の平地の一角にひと際大きく目につく茅葺き家は、春にはピンクのレンゲ草や黄色の水仙の背後に風情ある佇まいをみせている。
■「西宮の民家」には、細木邸に関して下記の記述が見られる。(抜粋)
 『細木家は、上山口の中心部の上山口公民館の北西に建っている。江戸末期の安政2年(1855)の建築が文書で残されている。代々農業を営む大百姓のうちのひとつである。規模は正面8間半、奥行5間半と大きい。(中略)幕末における上層農民の豊かさの象徴のようにみえる。』
■現在、母屋の屋根はトタン葺きであるが、「西宮の民家」掲載の細木邸の母屋は茅葺屋根(右画像)である。トタン屋根の古民家の下に茅葺屋根があることが良く分かる。
■旧街道に沿って東側に建っている。広大な敷地の中に手入れの行き届いた庭が屋敷前に広がっている。また母屋に隣接して万延元年(1860)建設の蔵が建っている。