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 船坂ビエンナーレの棚田エリアの北の端、大多田川の川沿いに沿って東に向った。川沿いの竹林を抜けると藁屋根をトタンで覆った古民家が建ち並ぶ集落に入った。幟を目印に左折して石橋を渡ると、かっての共同洗い場のような小屋がある。10着ほどの洗いざらしの白い上着やスラックスが小屋の天上からテグスで吊るされている。Eat and・・・Iと題された作品の作者のコメントには「洗濯が作品になりました」とある(分からん!?)。
 来た道を戻り、大多田川と有馬街道を渡る。正面のゆるやかな山道を登った先に、船阪小学校東門の石造りの二柱が建っていた。校庭に入ってすぐ右手の急階段を上がり、細長い校舎のベランダ廊下を伝って正面玄関に出る。玄関前の坂道を下り、山裾の坂道から竹薮に囲まれた道を上ると、右手に11番目のオブジェがあった。真っ直ぐに天に伸びるように立つ青竹が群生している。地上1m位のところにピンクの折り紙を付けた糸が巡らされている。けはいJと題されたこの作品の作者は「あやしの世界を表現した」とコメントする。何となく雰囲気はわかる。
 突当りを右にカーブする道を行く。次の作品手の花〜船坂Kはそれとは分かりにくい廃屋のような民家だった。1階ガラス戸の中の土間には煉瓦造りの釜戸や鋤、鍬、臼、杵などの古民具、地元で採取した枯れた植物が所狭しと並んでいる。これが作品と言われると釈然としないのは芸術に対する洞察力不足か。
 すぐ先の古刹・善照寺の本堂に次の作品があった。本堂の青畳の上の円盤に金属製の3人の宇宙人が手を繋いで立っている。一人分の空間があり、見学者がそこに乗っかる。左右の宇宙人の差し出す手の先のボタンを同時に押すと円盤が回りだす。傍にいた作者に「一周回っている間に願い事を唱えてください」と促される。子供たちに夢を託した未来人Lと題する作品だ。  
 善照寺前の二筋に分かれた道路の山肌に沿った道を進む。突き当たりの三叉路を右に行くと茅葺き古民家が集まるエリアに入る。その一棟に四つのオブジェが集まっている。
 饗宴M(無造作に置かれた白いシーツの波間に浮ぶけいとうの花束)。実りN(床が取り除かれた剥き出しの土間の上に数個の瓜の形のオブジェがぶら下がっている)。神秘の力に絡まれながらO(カジュマロの樹を模した粘土で捏ねられた真っ黒な焼き物が不気味に上に向って伸びている)。THE MOTHERP(焼かれた粘土の筒が珊瑚礁のように束になってより大きな筒を造っている。「土」を感じること・・・と作者は語る)。place/armQ(棚田エリアの最初のオブジェと同じ作家の作品である。民家隣接の小屋の土間が掘られて大きな穴があいている。掘られた土や石が穴の周囲に盛られている。地面を掘るという単純な行為の痕跡としての作品・・・と作者は語る)。MomentR(民家の奥の部屋で作家のベルリン滞在中の映像がプロジェクターからエンドレスに流されている)。
 以上が湯山古道エリアの作品群である。車道として整備された現在の有馬街道の北の山裾を歩くコースである。湯山古道と呼ばれた往時の有馬街道のルートだったのだろうか。杣道や竹林の間を縫う情緒のある旧道にオブジェが点在するエリアだった。茅葺き民家の集落をゴールとしたコース設定も見事な演出である。