6月12日(水)ガイランゲルフィヨルドからフロムへ
■ゲイランゲルホテルのフィヨルドビューの部屋での目覚めだった。未明の2時過ぎに目覚めた時の窓越しの風景は、既に夜明けが訪れ船着場の灯りだけが深夜を物語っていた。まさしく白夜であった。
■二度寝の後もやっぱり5時過ぎの早朝だった。7時の朝食までたっぷりある時間を家内とフィヨルド地区の絶景を散策することにした。ホテル東側の坂道を上ると、すぐ東側斜面の牧草地で山羊たちの群れが遊んでいた。子山羊が母山羊のお乳を吸っている愛らしいシーンをキャッチした。梢にはこの地の名も知らぬ野鳥がさえずっていた。ほどなくガイランゲル教会の白い小さな尖塔が見えてきた。その時向こうからツアー仲間の年輩のおじさんが下りてきた。聞けば朝4時に出発して、昨日訪ねたフリーダールスユーヴェット展望台まで行ってきたとのこと。上には上があるものだと感心しきり。高台に建つ広大な建物が見えてきた。ガイランゲルのハイグレードホテル「ユニオン」だ。ホテル客らしき台湾人の旅行者たちと挨拶を交わした。ホテル西側には雪解け水を集中させた爆流が爆音を轟かせていた。ホテル南側の道をまっすぐに行った先に昨日の展望台があるようだが、ここで折り返すほかなかった。
■朝食を済ませて出発までの小一時間を今度は湾に沿って散策した。湾北側のおみやげ店の店先に大きなトロール人形が鎮座している。湾にはいつの間にか巨大豪華客船クイーンエリザベスが停船していた。これほどの巨大船舶が入選できるのもフィヨルドの切り込んだ深い海底のたまものだろうか。途中でツアー中に仲良くなった香川県のご夫婦に会い打ち解けた会話を交わし合った。
■9時にホテルを出発し、歩いて数分のフェリー乗り場に行った。ジョーズが口を開けたような入口からヘルシルト行きのフェリーに乗船した。1時間余りの船旅はフィヨルドの大自然を満喫する快適なクリーズだった。高い絶壁の両岸から流れ落ちる豪快な滝、幾つもの筋となって流れ落ちる7姉妹の滝などその水量と高さは日本では到底望めないものだ。湾の左右を構成する入り組んだ山並みを雲海が覆い息を呑むような幻想的な光景を演出する。
■下船したヘルシルトの船着場のすぐ先に村を貫く川の流れを集めた勇壮な滝を見学し、再びバスに乗車した。一時間ほど走ったバスが長い車両の列の後ろで停車した。「ここからはフェリーでフィヨルドを渡り対岸に向かいます」という添乗員のガイドがあった。入り組んだフィヨルドで架橋が追い付いていないルートでは渡し船ならぬフェリーの渡しに頼るほかないようだ。ほどなく到着したフェリーに10分ばかり乗船し対岸に到着した。バスでしばらく走りノルドフィヨルド地区に入り、シェイという町のドライブインで昼食となった。タラのムニエルのような料理だった。
■そこから1時間ほど走ったところにヨステダール氷河一角のボイエ氷河に到着した。山合の頂きから裾野にかけて巨大な白亜の鎧が覆っている。「氷河は積雪と違ってブルーの筋が走っている」というガイダンスを眼前の光景で確認した。発車したバスは再びフェリーの渡しに阻まれた。今度は1時間ばかりの待ち時間の末、ようやく乗船できた。再出発したバスがしばらくして世界最長の道路トンネルに入った。全長24.5kmのラルダールトンネルで約20分をかけてようやく抜け出した。
■夕刻6時頃にソグネフィヨルドの観光拠点フロムに着いた。宿泊ホテルは湾岸に建つ白いリゾートタイプのフレットハイムホテルだった。指定の部屋はフィヨルドビューの反対側の裏庭しか臨めない部屋だった。それでも夕食はバイキングながらツアー中最も豊富で質の高い食材をチョイスしたもので大満足だった。夕食後、ホテル周辺の絶景に囲まれたリゾート地を散策した。ホテル東側にはフロム鉄道の始発駅のフロム駅がある。その周囲には観光案内所やお土産店やカフェの風情のある木の建物が立ち並ぶ。ノルウェーの有力食品チェーンのCO-OPの店でツアー仲間たちがこぞって買い物を楽しんでいた。部屋に戻り白夜の夜を眠りに就いた。  

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