エピソード「ツアー仲間の人間模様」
■10日間の北欧の旅を終えて、今回のツアーほどツアー仲間たちの人間模様の面白さに触れたことはないと思った。以下、ツアー中に体験した様々な出来事や交流を通してその人間模様を綴ってみたい。
■今回のツアーは19組38名のメンバーだった。内11組がリタイヤ世代のご夫婦である。残り8組の内、2組は母娘の組合せで6組は女性二人組である。実質的なリーダー役の添乗員もアラフォー世代の女性である。
■最初の衝撃的な出来事を往路乗継ぎのドーハ空港で目撃した。ツアー仲間が初めて顔合わせをした時だ。アラフォー女子の添乗員は体格もよくややポッチャリ系だった。間近に陣取ったショートカットのやせ気味の60代女性がいきなり添乗員のボンレス気味のお腹を撫ぜて声を掛けた。恐らく「ダイエットせんとアカンね」みたいな科白だったと思う。添乗員にしてみれば、出合頭のいきなりのカウンターパンチだったに違いない。このツアーの波乱の幕開けだった。
■70代の女性二人組のキャラも強烈だった。学生時代の友達どうしという二人の、ツアー中のバス車内のおしゃべりはとどまることがない。狭い車内で二人の会話はそのまま周辺座席への口害となって撒き散らされた。片方の白髪の女性の延々と繰り広げられる旅自慢に遭遇し、正直うんざりした。翌日の自主的な座席移動では彼女たちからいかに距離を確保するかがテーマとなった。そのテーマは同じ想いを抱いた被害者同盟の共通のジョークのネタとなった。
■その相方の強烈なキャラをコペンハーゲン行の大型客船の免税店で目撃した。お土産用のお菓子をいくつか購入した彼女がレジに並んでいた。すぐ後ろに並んでいた家内が二個のお菓子のひとつの袋の綻びを見つけて注意した。すぐに違う商品を持ってきて取り替えレジを済ませた直後のことだ。レシートをチェックした彼女は取替えた筈の商品がそのままカウントされていたことに気付いた。やにわにレジの若い男性スタッフに猛然と抗議し始めた。もちろん英語が話せない。「スリー ノー、ツー、チェンジ、バック」とかの話せるだけの単語を並べてまくしたてた。通じない会話を前にスタッフもアングリしながら見つめるばかりだ。長蛇の列になった。別のレジに向かった家内の後を追うしかなく、その後の顛末は知らない。・・・が、翌朝、彼女に会って顛末を聞いた。責任者らしき人物が登場してレシートと商品を突合せ、あらためてレジを打ち直してもらったと得々と語った。げに恐るべきは日本人おばあちゃんの怖いもの知らずの根性と執念である。 
■母娘二人組の一組の70代半ばのおばあちゃんがまた凄かった。中小企業の事務の責任者として今なお現役である。メリハリの効いたトークと意表を突いた爆弾発言でしばしば周囲を爆笑の渦に巻き込んだ。そのおばあちゃんと40代の娘はバス車内でも席を別にし、ほとんど口をきかない。「うちは娘と仲が悪いんや」と公然と娘の前でも口にする。ある時、「そんな仲が悪いのになんで一緒にツアーに参加したん?」と聞いてみた。「そりゃあ、これやがな」と親指と人差し指で輪っかを作って見せた。「うちが全部だすんやから付いてくるがな」とあっけらかんである。横で娘もニコニコと笑っている。この親子タダモノではない。ひょっとしたら結構うまくいってるんではないか。
■その他、酒飲みオヤジの愛嬌のある傍若無人ぶりとか、社交ダンスの良きパートナー同士のご夫婦のアツアツぶりとか話題に事欠かない。・・・・がこれ以上のおしゃべりは白髪のおばあちゃんの二の舞である。というわけでこれにて一件落着ッ! 

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