エピローグ「スカンジナビア」
■初めての北欧三国の旅だった。事前に「地球の歩き方(北欧編)」を読んで一応の学習をしたつもりだった。帰国後あらためてネット等でも復習した。今回訪問したスウェ−デン、ノルウェー、デンマークは、一般にスカンジナビア三国と呼ばれ、一体感の強い国である。北西ヨーロッパの巨大な半島・スカンジナビア半島周辺の国々である。
■三国には共通点が多い。関空で現地通貨と両替した時も、三国とも通貨はユーロでなく、スウェーデン・クローナ、ノルウェー・クローネ、デンマーク・クローネと独自通貨であり、円レートも各17円、19円、19.4円と近似値の水準だった。ともに立憲君主制国家で男女の機会均等が進んだ福祉国家であり、環境問題への対応も進んでいる。
■今回のツアーはノルウェーのフィヨルド見学がメインだったため、5日間がノルウェー滞在で、前後の各一日をスウェーデンとデンマークに短期滞在した。それでも三国の首都であるストックホルム、オスロ、コペンハーゲンで一泊することができた。半日の自由時間のあったコペンハーゲンでの滞在がとりわけ北欧の息吹を感じる上で印象深かった。
■三つの首都で市内観光をした。それぞれに共通して見学したのが王宮だった。現地ガイドが伝える王室のエピソードを通して立憲君主制の国民への定着を窺わせた。コペンハーゲンの市内散策では自転車走行の多さと整備された自転車レーンに驚かされた。ホテルの窓から見た多数の風力発電機の列と合わせて環境対応の意識の高さを感じた。市内のあちこちで手押しのベビーカーを押して歩く若いカップルを見かけた。整備された公園でピクニックを楽しむファミリーやジョギングに励む市民たちのなんと多いことか。とりわけ早朝のホテル近くの公園のベンチで静かに読書にふける老婦人の姿は印象的だった。「ゆりかごから墓場まで」の高福祉の実態を垣間見た。
■とはいえ三国の旅は旅行者には辛いものがある。なんといっても物価が他のヨーロッパ諸国に比べて高い。食事の際のビールは軒並み千円前後と目をむく価格である。お土産の品々も円換算して思わず断念することもしばしばである。消費税が概ね25%程度だから致し方ない。
■それでも国民にとってこれは許容された現実のようだ。三国が今なおユーロ導入に踏み切れないのも、「高福祉」の枠組みが通貨統合で崩れることの懸念が国民に根強くあるからともいわれる。市場経済主義が加速化し格差社会の悲惨な現実が到来しつつある我が国の現実を思いながら、北欧三国の国民の選択の賢明さを学んだ。 
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