ギリシャの日常生活に溶け込んだ正教会
■ギリシャを旅して否応なく印象に残るものにギリシャ正教がある。メテオラ修道院の立地の過酷さとそこでの厳しい戒律生活に信仰の厳しさを見た。あちこちの道路脇に祀られた正教会の祠に土着の信仰の深さを感じた。スーパーの入口で遭遇した修道僧に写真撮影をお願いした時、街角のファーストフード店で飲食する修道士を見かけた時、ギリシャの日常生活に溶け込んだ正教会の実像を垣間見た。
■日曜の朝に訪ねたテッサロニキのアギオス・ディミトリオス教会でミサを終えた直後の信者の礼服姿の多さや若者たちの姿にこの国での正教会への信仰の深さが窺われた。実際にギリシャ全人口の95%以上が正教会の信徒であり正教会は国民の中に確固とした地位を占めている。
アレクサンドロス、ユリウス・カエサル、織田信長 
■このようなギリシャにおける正教会の位置は、永く他民族支配が続いたその歴史と無縁ではない。
■ローマ帝国支配下のギリシャに初期キリスト教が伝来した。キリスト教の普及過程で異教徒に対する教義の深化が求められ、ギリシャ哲学との融合がはかられた。その後のキリスト教が時代の変化を受け入れローマ・カトリックとして新たな教理を付加していくのに反し、ギリシャでは初期の論理的な教義を守り続ける。それはあたかもローマ帝国の国教となったキリスト教に対するギリシャ人としてのアイデンティティーの主張であるかのように見える。その後のイスラム帝国・オスマントルコ支配下のギリシャでも正教会がギリシャ人共通の心の拠り所として存在し続けたことは想像に難くない。
■ギリシャにおける正教会の地位は、ギリシャの血に塗られた歴史の土壌の上に形成されている。  

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