現代ギリシャの隣国トルコとの共存
■12日間のギリシャの旅で唯一ギリシャ以外の国に立ち寄った。トルコ共和国に属するエフェソス遺跡である。クルーズ2日目の朝、クシャダシ港に着岸した客船から下船し、トルコの一歩を印す。岸壁にはトルコの民族衣装に身を包んだ数名の男女が歓迎演奏で出迎えてくれる。入国ゲートを乗船IDカードで通過した。パスポートの提示すらないあっけなさである。エフェソス遺跡は古代ローマの足跡を色濃く残す史跡である。実際に、遺跡の中の広場では、皇帝を中心に武将や侍女が見守る中で剣闘士の闘いが演じられるというローマ時代のショーが催ようされていた。
■翌日には、ギリシャのロドス島の城塞都市・ロドスを訪れた。ここでは聖ヨハネ騎士団の名残りの史跡と、騎士団を死闘の末追放したオスマン・トルコのスレイマン大帝の建てたスレイマン・モスクが共存していた。
トルコとの確執の歴史とEU加盟
■古代ローマの時代、ギリシャとトルコはパックス・ローマナの下で共存していた。その後ビザンチン帝国を征服したオスマン・トルコの支配下でギリシャは400年に及ぶトルコ支配の時代を迎える。19世紀初頭から始まったギリシャ民族のトルコからの独立戦争は、多くの犠牲を伴って闘われ、ギリシャ共和国の礎を築いた。上述の私が体験したギリシャと隣国トルコとの今日の共存は、両民族のこうした永い確執の歴史の果てにもたらされている。表面的な友好関係はいざ知らず、ギリシャ人たちのトルコに対する内面の心理はどのようなものか。
■今、トルコ共和国はイスラム圏の国家として唯一EU加盟を目指している。かってローマ帝国の領土でもあったことがその背景にあると思う。ロ−マ時代に培われたカルチャーが、他のイスラム国との決定的な違いもたらしているのではないか。EU加盟では先輩格のギリシャがトルコの加盟にどのような対応を見せているのか知りたいと思った。

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