9月14日 フランク王国の面影が残るチューリヒ市内  
■ドイツ鉄道の12時34分ミュンヘン発の列車は、定刻の16時34分にチューリヒ中央駅のホームに滑り込んだ。まずホテルにチェックインしなければならない。予約ホテルのアストールまで徒歩10分の距離である。歩くことにしたが、失敗だった。地図からは高低差は読み取れない。中央駅(画像@)を出て300mばかり歩いて左折すると結構急な坂が待っていた。坂道を重いスーツケースを押しながら500mほど行った右手に目指すホテル(画像A)があった。
 チェックインし、部屋に入る。部屋中ベッドだらけというスーツケースを空けるスペースにも苦労する狭い部屋だった。9月半ばの残暑を凌ごうとエアコンを探すがどこにもない。このホテルは2泊の滞在予定である。18時、ブルーな気分を振り払うように市内観光に出かけた。
■ホテル前の坂道を真っ直ぐ下り、1kmほど歩いた所に2本の塔をもつ独特の建築様式の大聖堂(画像B)があった。ガイドブックによると11世紀から12世紀にかけて建てられたスイス最大のロマネスク様式の教会である。ローマ帝国の没落につれて西ヨーロッパで勢力を拡大したのがフランク王国だった。8世紀に最大版図を築いたカール大帝の建設した教会跡に建てられたのがこの大聖堂といわれている。
 大聖堂の西を流れるリマト川を渡ると聖母聖堂(画像C)がある。堂内にある1970年にシャガールが描いたというステンドグラスをぜひ見たかったが、18時の閉館時間を既に過ぎていた。
 リマト川沿いを北に向う。先ほど渡ったミュンスター橋(画像D)やチューリヒ湖に注ぐリマト川の河口が美しい夕暮れの景色を描いていた。
本場チーズフォンデュの期待との落差
 しばらく歩き左折すると聖ペーター教会(画像F)に出る。この教会には16世紀に建てられたヨーロッパ最大の時計を持つ時計塔がある。
 聖ペーター教会の北側の入り組んだ路地をさ迷いながらリンデンホフの丘の石段を昇った。丘の上の公園の片隅で地元のオジサンたちのグループが大型路上チェスのようなゲームに興じていた(画像G)。丘の東側の展望台からは大聖堂をはじめとしたチューリヒの旧市街の街並みが一望できる。
■旧市街の主要な観光ポイントを回り終え、夕食に向う。スイスに来た以上フォンデュを見逃すわけにはいかない。「地球の歩き方」のガイドから「ラクレット・ストゥーペ」というスイス料理の店(画像I)を選択した。ビールと野菜サラダ、チーズフォンデュをオーダーした。独特のドレッシングで味つけされた野菜サラダ(画像J)に納得した後、本場のフォンデュが登場した。煮え立ったチーズの入ったお鍋が食卓用固形燃料のスタンドに載せられる。角切りの食パンと小型ジャガイモがそれぞれに盛られたバスケットが届けられる(画像K)。
 フォンデュ用フォークで具材を突き刺して溶けたチーズに絡めて食べる。それはそれで美味しいのだが肉系や野菜系の追加の具材が来ない。日本円にして一人2500円位の料理である。まさか食パンとジャガイモだけではないだろう。ところがそのマサカだった。チーズフォンデュとは基本的にパンをチーズに絡めて食べる料理とは後で分った。それにしてはこの値段は何だ!ドイツでのビールやソーセージのコストパフォーマンスの良さを実感した後だけに値段の高さに驚いた。ネット情報でスイスの物価の高さは承知していたものの早々に実感させられた。
■20時、ホテルに帰り、21時30分には、眠りに就いた。ところが部屋の前は、路面電車の走る大通りで、しかもホテル前に停留所があったからたまらない。夜遅くまで襲ってきた路面電車の停車と発車の轟音が、眠りをしばしば中断させた。部屋の狭さとあいまって、チューリヒのホテルには苦い思い出しか残っていない。 
9月15日 アルプスを望むユトリベルクの展望
■朝6時起床。7時過ぎ1階フロント奥の食堂で朝食。アメリカン・ブレックファーストだが品数は少ない。混み合ってきた食堂で、食べ終えた食器が残されたままの隣のテーブルを指差して宿泊客の黒人女性に話しかけられた。意味はわからないものの、どうやら「この席は空いているか?」と言ってるようだ。思わず「NO BODY」という英語が口をついた。「サンキュー」。着席しながら彼女が言った。「ホーッ!通じた。結構やれるじゃん。」私の密かな呟きである。
■今日予定の現地ツアー「グレートカントリーツアー」は11時、中央駅付近からの出発である。時間はたっぷりある。市内観光は昨日でほぼ終えた。「地球の歩き方」をチェックし、「チューリヒで最も高い場所・ユトリベルク」へ行くことにした。
 8時過ぎ、中央駅からユトリベルク行きのSバーン(通勤路線の普通列車)に乗り込んだ(画像@)。途中、車内の路線図で確認し、どうも乗換駅を間違えたようだ。途中駅で下車し、次の電車を待った。小雨模様のホームを近所のオジさんがあのハイジの犬・セントバーナードを連れて散歩していた(画像A)。
 9時25分、15分ばかり時間をロスしたがユトリベルク駅(画像B)に着いた。山の中腹の広場に路面電車のように乗入れる終着駅だった。改札口のないお土産やを兼ねた駅舎がポツンと建ったなんとものどかな風景だ。
 駅の東側の山道を、先行する乗客たちの後について登った。10分ほどで高い鉄塔のある展望台に到着(画像C)。展望台からは素晴らしい眺めが広がっていた。東には川のように左右に広がるチューリヒ湖と、その奥にチューリヒの市街地見える(画像D)。南側にははるか彼方に鋭い稜線を描いたアルプスの山々が遠望できる(画像E)。

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