9月6日(火) フェアモント・スプリングス・・・超豪華ホテル体験
■バンフの象徴ともいえる最高級ホテル「フェアモント・バンフ・スプリングス」での夜が明けた。今回のツアーの最高の贅沢だった。とはいえ一泊一人1万8千円の宿泊費は日本国内の高級ホテル並みであり、決して手の届かないレベルではない。チェックインの際には日本語の利用案内が渡され、部屋にも日本語のレストラン案内が備えられていた。日本人客の多さを物語っている。
 体内時計のコール音にいつものように5時過ぎには目が覚めた。デジカメ片手に館内を散策する。宿泊ルームと同じ8階のテラスから眺められるボウ川の流れとロッキーの山並みが美しい。パブリックスペースにあるトイレを覗いてみた。ゆったりしたスペースの中にふんだんに大理石が使われ、塵ひとつなく磨き上げられた美しさに目を奪われる。1階のフロント前のロビーは、煉瓦仕立ての壁面が造りだす広々とした空間だ。高い天井に吊るされた豪華なシャンデリアが、重厚な雰囲気を映しだしている。
■贅沢ついでに朝食もホテルで採ることにした。7時前に中二階にあるボー・バレー・グリルに行くと既に多くの宿泊客達で賑わっていた。ビュッフェスタイルで提供されるメニューの豊富さに舌を巻く。焼鮭やご飯などの日本食にもことかかない。好きなものを思う存分チョイスした豪華な朝食を満喫した。ちなみにこの超豪華朝食の代金は一人25カナダドルだった。
■部屋に戻り出発の準備を整えてフロントに向う。チェックアウトの際、気がかりだったカルガリーへのバスのアクセス方法を尋ねる。館内図面の2階のとある場所を示して、こちらで尋ねるようにという回答。どうやらそこが高級ホテルによくあるコンシェルジュ(宿泊者用サポートデスク?)のようだ。行って見ると日本人らしき女性を含めた2名の担当者が先客と応対している。運良く先に日本人女性の手が空いた。日本語で声をかけると期待通りの日本語が返された。用件を述べると、ホテル前のバス停からカルガリーの予約ホテル「フェアモント・パリサー」前にも停車するエアポーターが12時に出ているとのこと。バス停までのかなりの距離を、重いスーツケースを引っ張って行く覚悟をしていた身には、これ以上の回答は望むべくもない。
 フロントでスーツケースを預け、バス出発までの時間をバンフの街の周辺の自然を求めて散策することにした。
バンフ郊外・・・降り注ぐ大自然
■8時30分、ホテルを出発。バンフのダウンタウンに向う道を少し歩いて右に折れる。突き当たりをホテルに戻る方向にしばらく行くと、水の流れ落ちる音が伝わってくる。ボウ滝だ。ボウ滝を右に見ながら川岸沿いの階段を登る。ちょっとした展望台があり、左手の小高い丘の上にはフェアモント・スプリングス・ホテルがたたずんでいる。ここはガイドブックでもホテル展望の最高のビューポイントとして紹介されていた場所だ。ヨーロッパ中世のお城を思わせるたたずまいは、おりしも昇ったばかりの朝日に照らされてその雄姿を輝かせていた。
■ボウ川沿いの遊歩道をダウンタウン方向に進む。澄み切った川のせせらぎ、鮮やかな緑に包まれた針葉樹の森林、鋭い岩肌に覆われたロッキーの山並み、張りつめたような真っ青な空・・・。感動的で素晴らしい景観が目前にある。朝の肌寒さを覚える透明な空気の感触、小鳥の鳴き声と川のせせらぎ音、樹木がかもし出す心地よい自然の香り。目に肌に耳に鼻に、人体のあらゆるセンサーに大自然が降り注ぐ。「土砂降りの大自然」という言葉がふと浮かぶ。
■遊歩道を上がり、カスケード・ガーデンを訪ねる。ダウンタウンからボウ川を跨ぐボウ・ブリッジの正面にある。色とりどりの花の間をリスが戯れている。ガーデン正門越しのボウ・ブリッジの向こうにカスケード山の威容が展望できる。バンフ紹介のパンフレットや絵葉書にしばしば登場するスポットだ。
■ボウ・ブリッジを渡り、再びボウ川沿いの遊歩道を北に進む。進むにつれボウ川は流れを止め、静止した水面には周囲の森と山を鏡のように映し出している。ダウンタウンが控える右手には、市民が憩う広々とした公園が広がっている。
 遊歩道突き当たりを上がり、VIA鉄道の線路を越えた所にフェンランド・トレイルの入口がある。湿原の中のループ状の散歩道で、ガイドブックには、ビバーなどの野生動物に出合えるチャンスがあると紹介されている。疲れ加減で難色を示す同伴者たちを叱咤し、ループ内に突入。残念ながら野生動物とのご対面はなかった。
■来た道を折り返し、ホテルに戻ったのは11時過ぎで、2時間30分の散策だった。俄かに元気を取り戻した同伴者二人はホテル内のショッピングゾーンを見てくると言って姿を消した。ロビーのコーナーにテイクアウト用のサンドイッチ、サラダ、スープ、コーヒーを販売している「キャッスル・パントリー」があった。バス車内での昼食用にサンドイッチを調達。
■12時前にホテル玄関前のバス停で待機。12時5分、ブリュ−スターバスが到着。バスはバンフのダウンタウンの停留所を経由して鉄道駅のそばにあるバスディーポ(ターミナル)に到着。ここでカルガリー行き一人44ドルのチケットを購入する。バンフを出発したバスは一路カルガリーにひた走る。果てしない広原が延々と続く道中の終わり近くで、カルガリー冬季オリンピックのスキージャンプ台を目にした。15時過ぎ、予約したホテル「フェアモント・パリサー」に到着した。
目撃!白昼の捕り物・・・
■ホテルのチェックインを済ませ、早速カルガリーの市内観光に出かける。まずはホテル隣接の高さ190m余りのカルガリー・タワーに登ってみる(カナダにはどうしてこうもタワーが多いのだろうか)。一人11カナダドルと高目の料金だ。
 展望デッキからの360度の眺めはさすが。とりわけ間近に眺めてきた直後のカナディアン・ロッキーの遠望は、感慨深いものがある。はるか下の眼下にフェアモント・パリサーの屋上が見える。
 デッキの床の一角がシースルーになっている。真下に高層ビル群が建ち並ぶダウンタウンが広がっている。絶叫マシン好きの私は、早速シースルー床体験に挑む。安全なのは頭で分っているものの足の震えは如何ともし難い。それでも寝そべったポーズを無事撮影。
■タワーを降り、ダウンタウンを散策する。突然、後ろで叫び声がした。その直後に目の前の通りを白人の若い男が、必死の形相で走り去った。続いて私たちの横を、3人の警察官が若い男を追って走り抜けた。白昼の捕り物だった。手にしていたデジカメが警察官の後姿を捉えていた。 
カナダの地方都市の美しさ 
■白昼の捕り物にもかかわらず、東西5km、南北3kmほどのカルガリーのダウンタウンは静かで美しい街だった。ダウンタウンを北に進み、ボウ川を渡るとプリンス島公園がある。日光浴を楽しむお年寄りや周囲の遊歩道をジョギングする若い女性たち。公園内のあちこちをリスが走り回っている。島を取り巻く川の水面には、鴨をはじめとした野鳥の群れが集っている。自然と溶け込んだ穏やかで美しいカナダの典型的な地方都市の姿なのだろうか。トロント在住の娘が「こんな街に住んでみたかったな〜」と呟いていた。
■18時、いったんホテルに戻る。1時間ほど寛いだ後、夕食に出かける。「地球の歩き方」情報を頼りに結局、ホテルから500mほどの日本料理店「Zen on8」を選択。天婦羅やにぎりなど久々の日本料理を味わった。ネタ自体はまずまずだが、シャリのパサパサ感は如何ともし難い。
■20時30分、ホテルに戻る。ホテルの「フェアモント・パリサー」は、海外ホテル予約ネットの「旅ウェブ」で予約した。カルガリーの最高級ホテルながらトリプル料金が22千円と格安だった。
 大理石の壁に囲まれ、シャンデリアに照らされたロビーは気品と格調に溢れたスペースをうみだしている。
 22時、いつもより早めの就寝。本日の万歩計は29,927歩だった。

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