1998年8月 |
8月30日(日) 近所のバアチャンのアンビリバボー
妻の大の仲良しが3軒となりに住んでいる。姑と同居しているという共通項が彼女たちを結びつけている。これは妻の友人の姑さんのアンビリバボー物語である。
雷雨の多い夏だった。くだんの近所のバアチャンは、大の雷嫌いだという。それもハンパなものじゃないらしい。
真夏の深夜、息子夫婦は二階の寝所でぐっすり眠り込んでいた。突然の雷雨が嫁の眠りを奪った。そして寝ぼけまなこの嫁に突然飛び込む信じがたい光景。なんと姑が枕元で鎮座している。雷の深夜の襲来に一人では到底耐えられないバアチャンにとっての唯一の自衛策なのだ。それにしても初めてそれを経験した時の嫁の驚愕は想像に難くない。
深夜はさておき、昼間の雷攻撃にはバアチャンはどんな自衛策を講じるのだろう。昼間、息子夫婦は仕事で不在がち。バアチャンは、雷予報に人一倍敏感である。空模様が雷の予感を告げた時、バアチャンはひたすら「コープこうべ北六甲店」を目指す。近辺で最大規模の人込みを収容する建物である。彼女の住いからは早足でも30分近くはかかるはず。それでも雷の恐怖と戦いながらひたすらバアチャンはコープを目指す。
8月15日(土) 春をひさぐ作家の狂気--直木賞作品『赤目四十八瀧心中未遂』考--
級友「車谷嘉彦(しゃたによしひこ)」君の直木賞受賞作品を読んだ。
前作『鹽壷の匙(しおつぼのさじ)』単行本の帯には”反時代的毒虫としての私小説”の副題?が記されている。同じく「あとがき」には、その心情が吐露されている。『私(わたくし)小説を鬻(ひさ)ぐことは、いわば女が春を鬻ぐに似たことであって・・・中略・・・。書くことはまた一つの狂気である。』
「赤目四十八瀧心中未遂」は、前作の「毒虫」のような私小説 から『物語』の世界に一歩踏み出したかに見える。(『わたくし小説』の故に彼に関わった多くの知人たちの間にバラまかれた毒はそれなりのインパクトをもっていたはずだが・・・。) それでもやはり彼自身の体験の延長線上の物語にちがいない。その限りでは依然として春を鬻いでいることに変わりはない。「薄暗いアパートの一室で、ひとりモツ肉の串を指し続けた」男の狂気は、自らの肉体に宿る原体験を言葉をもって切り刻む作者の狂気に重なる。
おどろおどろしい結末を予感させる「赤目四十八瀧心中未遂」のタイトルにも関わらず、読者は驚くほどあっけなく、腑抜けた結末を味あわされる。物語性にこだわれば作者は、もっと違ったエンディングも可能だった。にもかかわらず私小説作家は、物語でない日常生活の腑抜けた現実に最後の一点で踏みとどまった。エンタテナーに徹しきれない私小説作家の真骨頂か。
私小説にこだわる直木賞作家は、既に53才という星霜を重ねている。鬻ぐべき春は残り少ない。直木賞を転機に春を鬻ぐ手法からの脱皮をめざすのだろうか。それとも一層醜い「毒虫」となってあたりかまわず毒気を撒き散らすのだろうか。
直木賞作家「車谷長吉(くるまたにちょうきつ)」氏が、『私』を素材としない本物の直木賞作家として飛躍した時、ペンネームから「車谷」の字が消えるのだろう。
8月09日(日) ふるさと紀行(名古山霊園経由書写山行き)
2〜3日前、何気なく眺めていたテレビから見覚えのある大伽藍の映像が。『書写山・円教寺』の懐かしい風景だった。小学4年か5年の林間学校の思い出の舞台。初めて親元を離れた外泊経験だった。(今でもこんなシステムは残っているのだろうか。) ふるさと姫路の級友・車谷君の、直木賞受賞の出来事も姫路への郷愁を誘っていた。 よし!次の休日は墓参りを兼ねて書写山に行こう!テレビ番組「書写山・円教寺」終了後の結論であった。
というわけで本日の『ふるさと紀行』。父の眠る姫路・名古山霊園の墓参りと書写山・円教寺の旅である。例によって良き伴侶が同行。
10:15出発。明石海峡大橋の開通に合わせて整備されたバイパスの威力。11:20には名古山霊園に到着。久々の一足早い墓参り。
書写山は名古山霊園の北西5km。山麓からロープウェーが15分毎に発着している。アッというまの3分間のゴンドラからの眺め。山頂駅から約800mの参道が続く。
長い上り坂の参道に喘ぎながら、突然、伴侶が言う。「学生時代にお父さんと来た時もこんなしんどかったんやろか。」 小生にとって書写山の思い出はひたすら「林間学校」。ここが結婚前のヨメハンとの逢瀬のヒトコマの舞台であったとは! ヤバイ!不覚にも失念。伴侶は更に追い討ちをかけるかのように「小生がこの参道で不埒な振舞いに及んだ」とのたまう。(^^;)
そうこうするうちに懐かしい大伽藍が・・・。摩尼殿である。「西の延暦寺」とも称される円教寺の象徴的建造物である。大講堂、食堂、常行堂に向かう道すがら小学生軍団と遭遇。ナント林間学校のシステムは生き延びていた。40年前の記憶が鮮やかによみがえる。友人たちとの初めての大部屋での宿泊。消灯後の寝付けないままの枕投げ。本気で叱っていた先生の形相・・・。それでも・・・なぜか30年前の妻との記憶はよみがえらない。
8月02日(日) トム・ピーターズの挑発
”ビジネス論壇のアジテーター” (・・と、小生は勝手にきめつけている)トム・ピーターズ が、またまたファンたちを挑発する著作をものにした。 題して『起死回生』。(実はこの著作の発刊を知らなかった。職場の友人からのメールで知った。) 早速、読んでみた。 トム・ピーターズとの最初の出合いだった前々作『経営破壊』は、強烈なカウンターパンチを浴びせられた初めてのビジネス書だった。(『経営破壊』ダイジェスト版をアップ) さすがに『経営破壊』ほどの衝撃はなかったものの、最新のビジネス界の動向を独自の感性で切り取り、再構成して、読者に匕首を突きつける手口は、見事なものだ。ついつい『起死回生』ダイジェスト版を作成させられた。
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