■7月初め、ミニコミ紙「産経リビング」の「京鴨川・川床料理の旅」広告記事が目にとまる。お値段ナント!お1人ブッコミ9,850円のビックリ価格。行ってみたいなと思っていた矢先の川床料理。主催の旅行会社「トラベル日本」はよく知らない。念のためホームページ検索(この辺がインターネットの有難さ)。結構幅広く事業展開している会社で問題なさそう。妻の分も含めて予約を入れる。
■そして迎えた旅行当日。集合先の阪急宝塚駅池田銀行前に9時前に到着。9時5分の予定時間を過ぎてもバスは来ない。どうやら同行のメンバーらしきオバサン御一行やお仲間同士の二組のご夫婦も、時間が過ぎても現れないバスに不安と苛立ちの態。駅の反対側に停車中のそれらしきバスを見つけ、ようやく合流。旅行社内部の集合地点の連絡ミスの模様。
■45人乗りの定員一杯の観光客を乗せたバスは、予定よりやや遅れて宝塚を出発し、一路京都へ。京都南インター出口は、いつもの渋滞が嘘のよう。10時過ぎ、まずはパックツアーお決まりの「紅がら」なる土産物店に直行。2階の団体席で「京ぜんざいとお漬物」を賞味。
■11時過ぎには今回のツアーの観光ハイライト「芳春院」に到着。放映中のNHK大河ドラマ「利家とまつ」の「芳春院・まつ」建立の前田家の菩提寺である。正式名称は「臨済宗大徳寺派塔頭・芳春院」という。期間限定の特別拝観とのこと。純和風の風格のある参道を歩む。本堂ではボランティアらしき年配の男性のガイダンス。観光地周辺に住んでいる人たちの老後の生きがいを垣間見る。本堂の廊下伝いに裏手に回ると京都四閣の一つといわれる呑湖閣の威容が飛び込む。間近に迫る禅寺特有の風格が、参拝者を圧倒する。
■約1時間の芳春院参拝を済ませバスに戻る。車内はまだ生暖かい。バスガイドのアナウンス。「京都市内の駐車場はほとんどがアイドリングストップの区域で、出発間際にならないとエアコンも入れられません」「ナルホド」
発車したバスは、お土産物店パック第二弾に向う。平安神宮の裏手にの「アミタ本店」とのこと。例によって団体席に案内され、京風とろろ蕎麦を賞味。いかにも京都という味をチョッピリ提供することで、お土産物屋巡り無粋さをくるんでいる。旅行社の心憎い営業努力ではある。というわけで引き続いてのショッピングタイム。みえみえの商魂に内心反発しながらも、好物の京のお漬物をもにすると結局手が出てしまう。
■土産物店からバスで数分の所に、哲学の道の南の入口に近いバス亭「宮前町」があった。ここでバスを降ろされたツアー客たちは、約2時間の「哲学の道散策」に向う。
琵琶湖疎水の分流といわれるせせらぎを挟んで桜並木に覆われた約1.5kmの小径である。哲学者・西田幾多郎が好んで散策した所からの命名ということだ。閑静な住宅地を左右に配し、時折、お洒落なお店が顔を出す。近辺には銀閣寺・法然院・安楽寺・永観堂等の名所が点在する。
■限られた時間である。法然院、銀閣寺、白沙村荘庭園を観光。添乗員さんお薦めのスポットが白沙村荘庭園だった。日本画家・橋本関雪(小生は寡聞にしてこの画家の高名を承知していなかった)の広大な邸宅が、記念館として保存、公開されている。
■哲学の道の北端を東に折れた参道の突当たりに銀閣寺がある。土産物店が軒を並べる参道の行き着いたところに山門がある。小学校の修学旅行以来の銀閣寺だ。当時の記憶は既ににない。見るもの全てが初めての印象でありながら、全体の雰囲気には、なぜか懐かしさと安らぎを感じてしまう。いかにも日本人の心の襞に沁み込むようなその風情は、さすがに日本を代表する仏閣の荘厳さの故か。
■15時過ぎ、哲学の道の北の端にあるバスプールに集合。バスは、本日のメインイベントである川床料理に向う。着いた所は、木屋町四条の「鳥彌三という鴨川沿いの料亭だった。鴨川に向けて張り出された床の周囲を、夜のとばりとともに点灯される赤いぼんぼりが取り巻いている。いかにも京の料亭といった風情の玄関口のノレンをくぐる。床から橋を隔てた先に、南座のひときわ目につく建物が望まれる。4月の大阪さくら会例会で歌舞伎鑑賞をしたばかりの記憶に新しい建物である。
■参加者の各グループが、めいめいにテーブルに陣取る。15時40分、いよいよ川床での宴席が始まる。ここで添乗員からのアナウンス。「この川床での時間は、バスの時間もありますので16時40分までとさせて頂きます」。これを聞いた参加者の中から「エ〜ッ、それじゃ肝心の夜景は見られない!」と思わず漏らされるブーイング。とはいえ、冷静に考えれば川床料理を含む日帰り観光が1万円を切るお値段で成立しているにはそれだけのわけがある筈。お手軽な川床昼食と本格的夕食の合間を縫った夕暮れ前の早すぎる川床夕食にそのネタがある。土産物屋をパッケージする事とともに老舗の川床料理屋の二毛作、三毛作の需要を創造している。ブーイングは見当違いという他はない。
気を取り直し、ひとしきり床料理に舌鼓をうった頃、若い男性に伴われた舞妓さんの華やかな着物姿が登場(ナント舞妓さんの陪席までセットしてあるのだ)。
くだんの若者は、さしずめ置屋の専属マネージャーといった役どころか、舞妓さんを主役としたエンターテインメントを巧みに演出する。以下は彼の解説。
京都全体でも舞妓ちゃん(彼らの特有の呼称なのか舞妓さんでなく舞妓ちゃんなのだ)の人数は50人位。15歳から20歳までという厳しい年齢制限があり、21歳以上は芸妓となる。本日登場の舞妓ちゃんは、御年17歳のチカフミちゃんです。
ふと「日光猿軍団」の口上を思い浮かべてしまい、慌てて舞子ちゃん失礼極まりない妄想を打ち消した。
参加者と舞子ちゃんとの質疑応答の後、舞子ちゃんとの記念写真タイムが設けられ、至れり尽せりのサービスである。当然ながら、夫婦共々ミーハーな我々もマネージャー氏のシャッターで無事チカフミちゃんとのスリーショットに納まった。
■予定時間を僅かにオーバーしたが、16時50分に川床を後にし、川向こうに待つバスに乗車。一路、宝塚に。
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