【海外SF問題相談室アーカイブについて】95年4月13日新設

 いまや知っている人はほとんどいないだろうが(と思うとたくさんいたりするんだな、これが。新陳代謝のない業界っていやかも(笑))、そのむかし奇想天外という雑誌があった。すばる書房盛光社から出てたやつが第一期で、その後、奇想天外社から復刊され、座談会やコラムをばかばか載せるナンパな編集方針で、SFマガジンに対する野党勢力をかたちづくっていた。これがかなりたくさん出たあとしばらく休刊時代がつづいていただが、大陸書房に移籍した編集長の曽根さんが不死鳥のごとく甦らせたのが小説奇想天外という雑誌。SF雑誌とは呼びがたく、日本ミステリおたくのあいだではむしろ、竹本健治の『ウロボロスの偽書』が連載されていた雑誌として有名かもしれない。まあしかし、SFに関してかなりのページを割いていたのは事実で、なにを隠そう、この大森が生まれてはじめて単独の雑誌連載を持ったのが小説奇想天外なのであった。
 というわけで、その連載、海外SF問題相談室は、大森望初期の代表作といっても過言ではない(笑)エッセイなんだけど、まあ内容ははっきりいってめちゃくちゃである。SFマガジンに対する野党勢力としての立場を積極的に採用したこともあり、連載中、その不規則発言の嵐は数々の筆禍を巻き起こした(ような気がするが気のせいかもしれない)。分量も適当で、おおむね毎号6ページ、400字で20枚も書いていたんだから翻訳SF書評としては空前絶後の連載かも(笑)
「海外SFおたくによる海外SFおたくの海外SFおたくのための連載」を標榜していたため、業界内幕情報が乱れ飛んでいて、こんなものが商業誌に載っていたとはほとんど信じがたいのだが、いま読み返してみるとなにもかもみな懐かしいからまあいいや。  どういうわけか一部行方不明のファイルもあるので、そちらはおいおい発掘していくとして、とりあえず今回は、最初の3回分を収録する。小説奇想天外は当初隔月、のちに季刊、最後はほとんど不定期刊となったが、この3回が掲載された第二号から第四号まではきちんと隔月で発行されていた。執筆時期は88年の1月から5月ごろ。内容は、

第一回:『スキズマトリックス』を中心に、サイバーパンク再考。まだちょっと、書きっぷりがふらついてる感じがしますが、書評は『スキズマトリックス』、『エンダーのゲーム』、『バービーはなぜ殺される』
第二回:ドラクエIII話を枕に、ギブスン来日記念パーティをレポート。ShortFormに載ったスー・デニムのエッセイを紹介したりしている。書評は『ノヴァ』、『彗星の核へ』、『ポストマン』、『緑の瞳』というところ。この号から、100点万点方式による採点がはじまっている。
第三回:このへんで喧嘩売りのパターンが確立、SFマガジンの高橋良平、中村融の原稿を絨緞爆撃している。SFマガジンに対する対抗戦略上、当時の大森はサイバーパンク排撃派の看板を挙げていたようである。書評は『ミラー・シェード』、イアン・バンクス『蜂工場』、クリストファー・ローリイ『運命の星フェンリル』(なんてだれも覚えてないよな、しかし)。

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