第23回京都大学衛生工学研究会 Environmental & Sanitary Engineering Symposium
作成者  BON
更新日  2001/07/17

 標記研究発表会の参加インプレッションです。水道,水源関係のみしか取り上げておりませんので,あらかじめご了承ください。

京都大学衛生工学研究会
 環境衛生工学に関する研究会。水道関係はそう多くはないのですが...

【参考】


第23回京都大学衛生工学研究会 

1)水道関連の論文発表の概要

琵琶湖の環境基準を満たすための水質保全対策の評価に関する研究(京大 金氏)

 環境基準などを用いて琵琶湖の物質収支を試算,琵琶湖への流入負荷量を上回っているという報告。浄化技術を導入した場合として7つのシナリオを設定,おのおのの効果を評価したが,すべての浄化処理を導入しても環境基準レベルに達しないことがわかったとのこと。生活サイクルの根本改善を含めた対応が必要ではないかとのこと。工業用水として地下水を利用する場合,そのカウントが十分でないケースがあるおで水源の捉え方を徹底すべき,という内容の質問があった。

土壌・地下水汚染−広がる重金属汚染

 農地の重金属土壌汚染のほとんどは鉱山・精錬所によるもので,鉱山の廃棄物(ズり)が鉱山近くに棄てられることにより,農業用水の混入することが原因とか。工場跡地の地下水汚染の調査事例も数例紹介。

2層分割法による市街地土壌金属汚染解析

 中部地方を中心として,公園土壌の表層(上2.5cm)と下層(2.5-5.0cm)の傾向を,フォールアウトの傾向を知る目的で調査。Mg,Cu,は太平洋側沿海部,Asは日本海側沿海部,Crは両沿海部の表層濃度が高く,Cd,Pb,Znは特定地点のデータが高く,Al,Vについては全体に特徴がなかったという報告であった。原水水質と是非比較してみたい結果である。

塩素処理に伴うエストロジェン

 これまで水道水における一般有機物はフミン質で捉えられることが多かったが,これ以外の微量化学物質が消毒によって生成する物質に対して把握しようとする研究。個別化学物質を捕まえる方法を開発する方向で研究中をはじめたとのこと。エストロゲン状作用問題についても,トリハロメタン生成能と同様,経時的に増加する作用がある。エストロゲン作用を示す中間態,生成能のような指標を定義できる可能性がある。

 琵琶湖原水のエストロゲン作用に注目すると,原水で検出されたものが,浄水処理,活性炭処理によってほとんどがなくなる。しかし,塩素を添加することによって,酵素活性が再上昇する。このことから,琵琶湖の原水においては,微量に残留する有機物質物質に塩素が反応することで,エストロジェン作用が増加することが推論された。

 しかし,塩素の影響によって,エスとロジェン作用が上がるとは限らず,むしろ下がるものもある。フミン質性のトリハロメタンと比較して,一般化学物質の影響でみれば,むしろ下がるものが多いようである。pH,水温などのようなアルカリ加水分解の影響により増大するが,単純に増加するわけではなく,水温条件などにおいては逆に減少するケースもある。

 この結果から,フミン質が主であるような正常な湖沼水と都市下水のようにさまざまな化学物質が溶存している原水では,エストロジェン作用の増減に違いがあることが予想される。変異原性についても同じ傾向がある。水源域のフミン質が優勢な原水であれば,塩素によるTHMの影響があるが,もともと変異原性物質の多く含まれる下流の汚染された原水では,むしろ塩素添加によって変異原性が下がる。が,エストロジェン作用についてはよりこの傾向は強いようである。

河川水の染色体異常発生,形質転換誘発性と塩素処理による変化

 ある地点における水道水の有害性を経時的に把握するため,バイオアッセイを利用した事例。染色体異常発生では,冬期の方が高い値となり塩素添加による増大は見られたが,形質転換誘発性では冬の方が高い値になったものの,逆に塩素処理による減少が見られた。

 水道原水の変異原性など,遺伝毒性の指標物質をスクリーニングしたところ,TOCと有害性との相関関係はあまりみられず,有害性の評価にはあまり役立たないものと考えられた。染色体異常誘発性の管理には今回調査した範囲ではクロロホルムとの類似性が高かった。有害性を判断するにあたって,河川水のように季節変動が大きい場合には,クロロホルムの採用が可能と考えられる。

化学的および分光学的手法による琵琶湖溶存有機物質(DOM)の特性解析

 湖沼などの環境では高分子であるフミン質の割合が比較的低い。このため,琵琶湖の有機物(DOM)の主成分がなにであるかを検討した研究。1K膜分画(1,000Da限外ろ過膜),RO分画(100Da,95%脱塩逆浸透膜)の2つの分画レベルでみたところ,前者が多糖質成分,後者では脂肪酸類が優位であったとのこと。

下水の凝集処理におけるフェノール類の挙動に関する研究

 下水における内分泌かく乱化学物質の除去特性を,オクチルフェノール,ノニルフェノール,ビスフェノールAの3物質について研究。純水ではいずれの物質も除去できないものの,前2種は凝集沈殿で除去でき,後者は除去できなかった。凝集剤はPAC,塩化第2鉄の2種類で確認。これらの物質は,フロック固形物に吸着されるものと判断される。ここでいう固形物の性状の影響(下水・上水の違い)については確認していないとのこと。

膨張床型GAC反応器によるテトラクロロエチレン含有廃水の嫌気性処理に関する研究

 嫌気性微生物を付着させた粒状活性炭を充填した反応器を利用し,テトラクロロエチレンなどの物質を吸着,生物処理しようとする研究。

2)企画セッション

 膜処理技術の基礎から現状,問題点などを非常にわかりやすく取りまとめた講義。ただしすべて英語なので,プロジェクタをにらみ,必死で聞いてなんとかわかる,といった感じでした。全体に,日米に膜技術の進捗状況に大きな差はなく,技術レベルもほぼ同等ではないか,という印象でした。

【備考】


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