本稿は，IWAの機関紙であるWATER21の掲載記事のうち興味深いものを要約したもので，原文の著作権等は当然IWAに所属します。訳の間違い等についての責任は負いかねます。WATER21は購読なさることをお勧めするに値すると考えております。

　Publisher ：　 Water21 magazine of the international water association (IWA). IWA Editorial Address Alliance House, 12 Caxton St, London SW1H 0QS, UK. Web: www.IWAhq.org.uk

（１）定番記事　Regulars

１）ニュース　News

Ammonia spill exposes Israeli shortcomings

　アンモニアによる汚染によってイスラエルの水供給システムの弱点がさらけ出された−７月，約３トンのアンモニアが浄水場に混入，テルアビブの200万人に飲用禁止の勧告が出される事態となった。新聞によると，農業用化学肥料の漏出が原因らしいとのこと。対策が講じられたのは１週間が経過してからであった。管の分離や監視体制などが必要である。

Fluoride recommendation for US

　米国におけるフッ素添加の推奨−米国フッ素推奨委員会のワーキンググループは，フッ素使用を推奨する報告書を発表した。

Boost for New York's UV prospects

　ニューヨークにおける紫外線処理の見とおし−ニューヨーク市は大規模な紫外線処理の建設に向けた取組みを行っている。ニューヨークは，カットスキル／デラウェア水源の処理として早急にろ過処理施設を導入するよう要求されているが，ろ過施設の設計には１億３−４千万ドル，建設には４０億ドルが必要と見られていた。これに対し，紫外線処理設備であれば１−２億ドルで済む見とおしとのこと。

Report reviews Grenoble failings

　グレノーブルの事件に関する報告−英国の大学による新たな報告では，フランスのグレノーブルにおける悲劇的な水道の民営化の経緯と，その結果としての再自治体営化に関する記録や批評を掲載している。フランスの大企業であるSuez-Lyonnaise（現在はOndeo）とGenerale des Eaux（現在はVivendi）の両社がかかわっており，Suez社の２名の重役とグレノーブルの市長が，1989年の契約に関する汚職のかどで糾弾されている。

Rains linked to disease outbreaks

　降雨が疫病発生に関係している−米国における過去50年間の水系伝染病の発生に，大雨が関連しているとの報告がなされた。大雨とこれに伴う奔流が，しばしば病原性のある微細有機物の移動に重要な役割を果たしているというものである。

Study reveals Mesopotamian marshland demise

　メソポタミアの湿地帯の消滅が研究の結果明らかに−国連環境計画（UNEP）によると，中東で最も大きな湿地帯で，かつ世界で最も健著な淡水環境の一つであるメソポタミア湿地帯のおおよそ85％が，干拓とダムの建設の結果ほとんど消滅してしまったとのこと。

US arsenic debate continues

　米国におけるヒ素の議論今だ収束せず−ヒ素除去システムの導入に関するコスト的影響の分析を待って，ヒ素基準の公表が遅れている。

China urged to change strategy

　中国は成長戦略を明確に変更すべきである−このほどの世界銀行の報告では，国家的開発戦略を明確に軌道修正し，持続的環境開発を進めることなくしては真の前進はないとしている。ここ20年の顕著な発展によって，しかし，環境は破壊的なダメージを受けているが，中国政府は大気や水質の汚染など環境問題への取組みに対して干渉する傾向がある。

２）小記事　In Brief

自然災害の発生頻度が上昇しており，発展途上国に壊滅的打撃を与えているという報告が国連経済社会委員会で行われた。

世界最大の逆浸透膜脱塩プラント（処理能力５千万m³）の建設維持管理契約がVivendi他イスラエルの２社との間で１億千百万ドルで締結された。

インドの首都ニューデリーで，新しく建設される100m²以上の敷地をもつビルで雨水利用を義務づけることになった。また，日10m³以上の汚水を排出するビルは汚水再生利用を義務付けられるであろうとのことである。

世界保健機構（WHO）は，自然災害による水の過不足が人類に影響を与えていることを指摘した。ほぼ人類の１／３に相当する２０億人が20世紀最後の20年の間に自然災害の影響をうけたが，その86％は洪水や旱魃であり，特に旱魃はその後の飢饉を引き起こす点で最も大量の死者を出すとされている。

米国設計施工研究所（The Design-Build Institute of America）は，シアトルのトルト浄水場／下水処理場のDBOプロジェクトにおいて，過去最高の契約額（７千６百万ドル）を勝ち取った。

ヨーロッパ開発銀行は，モロッコの中規模の70ほどの地方水道局に水を供給する事業に５千万ユーロ（４千６百万ドル）の供給を決定した。

３）水道事業体　Water Utility 21

Consumers pretend to pay and utilities pretend to supply good service: breaking the poor performance syndrome

　需要者は支払った振りをするから事業体はサービスを提供した振りをする？非効率を打破しよう− 上下水道サービスの提供のためには，資本家予備軍への信頼の醸成，合法的な消費者，効率的なインフラ整備と運営のもと，きちんとした法律が決定的に重要であることが認識されつつある。

Performance progress in Western Australia

　西オーストラリアにおける効率の向上−西オーストラリアの取締人が水道事業会社の効率を向上させることを目的としたはじめての目安となる報告書を完成した。

【備考】

（２）特集記事　Features

１）水資源　Water Resources

Water reforms and integrated urban water planning

　水システムの見なおしと統合的都市水管理計画−オーストラリアでは，1978-1983の東部，特にニューサウスウェールズでここ100年で最もひどい旱魃に襲われている。このため，一部の水道システムは完全に機能しなくなっている。また，このとき，藻類の大発生がおき，水源が使用できなくなった。このような経緯によって，水計画の全面更新が図られることになった。
　このような状況から，ニューサウスウェールズ政府は，３つの基本声明−経済成長，公正な社会，環境保護を1995年に発表，これを足がかりに，1997年には水システムの改訂を発表した。その主要な点は以下のとおりである。
　●水需要，環境，河川維持，地下水，などに適正に資源を配分
　●水需要関係に曖昧さを排除し信頼を醸成
　●政府，自治体，業界の間の速やかな問題発見と解決
また，2000年12月には新しい水資源管理法の制定に動いている。
　もう１点の重要な見なおしは，統合的都市水管理（上水，下水，雨水）計画の改良である。目的は，水の有効利用，雨水排出水や処理汚水による環境負荷の低減，コスト縮減などで，これに向けた実験研究などにより様々な成果を得ている。

Opening the oceans as a supply source

　大海原が水資源になりはじめている−「水嚢」によって海を越えて水を運ぶ方法が現実化しつつある。同時に，10年にわたる研究の結果，表層と深層の海水の温度差でエネルギーを得て最終的に淡水を得る技術が実用段階に入りつつある。世界で最も水の不足している地域の水源としてこの２つの技術を結びつける研究の最新の成果を報告する。

Integrating resource management in South East Asia

　東南アジアにおける統合的水資源管理（IWRM）−統合的水資源管理が水需要の問題の解決に威力を発揮しつつある。モデリング手法としてのIWRMの有効性を解説する。

	【Global Water Partnership】 　水資源に関する情報の提供。
	【CE 09.98N INTEGRATED WATER RESOURCES MANAGEMENT】 　IWRMの成果の例。AITだからアジア工科大学（タイ）ですか。

２）ドイツ特集　Germany

Germany's ripples of reform

　ドイツの変革の波紋−広域統合化や民営化などの影響で，小規模なものが中心だったドイツの水道界がじょじょに変化してきている。

【備考】
　この号はＩWAのベルリン総会やメルボルン委員会などIWA関連の記事が多数掲載されました。その分，水道関連情報は少なめです。

HOME＞

TOP＞