水道水って危ないのか What makes you feel tap water risky?!
作成者  BON
更新日  2008/10/25

 水道水が危ないとかいう風説が猛威を振るっております。では実のところどうなのか。怪しげなセールストークは氾濫しているのに,この点についてしっかりと反論しているページがなかなかないのが気になりますので,暴走や誤解を覚悟の上で,ちょっと数字をひねってみました。

水道水は危ないのか
 水道水って危ないのか?
おいしい水
 おいしい水ってどんな水?

【参考】


水道水は危ないのか

1)危ないかどうかは,なかなか証明できない

 「水道水が危ない!」という話は良く聞きます。塩素消毒によって妊婦の流産率がどうとか,トリハロメタンが発ガン性があるとか,もっともらしいことを書いてあります。

 でも,専門家に聞いても,「大丈夫」というだけで,あんまり詳しく教えてくれません。なぜかというと,実は,「まず大丈夫」であることは経験的に知っていても,「どの程度大丈夫なのか」「完全に大丈夫か」については,証明が大変難しいからなのです。歴史で最も難しいのは,「存在しなかったことを証明すること」ですが,これと同じです。

 まじめな学者や技術者は,この点をよく知っています。自分が分からない部分は「わからない」といい,よく分かっている部分は専門用語や数字を駆使して教えるものの,その話の内容や意味が聞いている方には理解できない。よって,どうしても,安全性に関する情報というのは,あんまり巧く伝わらないのです。

 ちなみに,食品などではよく「安全宣言」が出ますが,宣言を出しているのは政治家や商売人が多いように思います。「存在しないことを証明すること」の難しさを知っている専門家にとっては,安全宣言はおいそれとは出せないものなのです。

 とはいえ,工学的には,おおよそ1/1,000,000の確率以下で発生する事象は無視していいことになっています。この基準で照らすのであれば,まず大概のケースで,「水道水は安全である」と言ってしまって問題ないでしょう。(大概のケースとつけないと不安なあたり,私もエンジ二屋でありますが)

 以前,「水について書くと本が売れる」という話を某出版社の企画の人から聞いたことがありますが,この辺も背景にあるのかもしれませんね。ま,これはたぶんに憶測なので省略。

2)ではどうするか

 危険性について考えるとき,例えば他のリスク要因と比較してみるというのがやりやすい方法です。他のリスク要因についても,前提条件等不安を抱えているわけですから,「絶対的評価」を「相対的評価」に換えることで,評価の基本レベルが揃おうというものです。

 ここでは,このような例として,水道水の急性毒性について,最もリスキーと考えられる成分を取り出し,その比較をしてみることにします。急性毒性と慢性毒性の違いやマウス試験と人間を対象にした毒性の違いなど,単純化しすぎの嫌いはありますが,数字で比較してみないとなかなか分かってもらえないでしょうから。

1 まず,タバコ,お茶,水道水の最も代表的なリスク物質の毒性をLD50で示します。LD50とは,簡単に言うと,「ラットが半分が死ぬ摂取量」です。

 数字が小さいということは少量で死ぬということ。つまり,ニコチンやカフェインの方がクロロホルムよりもずっと強力な急性毒であることが分かります。水道水でガンになった人ってのは...動物実験でも寡聞にして知りませんけど。

2 次に摂取量を見てみましょう。

3 では,体重70kgの成人に上の比率を乗じて,致死量と摂取量の比をとってみましょう。

 いかがですか。水道に含まれる毒性物質のリスクは,タバコやお茶などと比べても,ずっと低いレベルであることは理解していただけると思います。

 もちろん,この数字は,あくまでも一つの目安の数字をつなぎ合わせたもので,その正確性や適用範囲などを考えれば,これほど単純ではありません。他にも様々な要因が複合しますし,なにしろ人体実験をするわけにいかないので,動物実験や統計的な調査を通じて様々な推計や分析をしながら,これらのノウハウを構築する努力が日々行われているのです。

3)健康食品の方が...

 個人的には,安全性についてはむしろ「健康食品」に関する情報の方が胡散臭く感じますね。若干事例を示しましょうか。

4)意見

 前述のように,技術者や科学者は商売人と違って,正確でない数字についてはアナウンスしたくないので,「トリハロメタンに毒性がある」ことを否定しませんし,例え微細なリスクであっても,それを低減するために,高い目標を設定しています。毒性がないわけではないのですし。

 が,リスクレベルの話を全くしなければ,現在流布されているような誤解が水道水不信のネタになることは必定。今回の記事は,このような現状に対する一つの疑義投げかけと思っていただければ幸いです。

 飲み屋でオネィちゃん相手に,タバコ片手に「水道水が如何に危ないか」を力説しているオィチャンを見たことがありますが,どう考えても,あんたが持ってるタバコや,アンタが飲んでるアルコールの方が,発がん性だけをとってみても,リスクが大きい物質です。これに比べたら,石田光成の逸話(関が原の合戦後に捕らわれ処刑される前に「柿は胆の毒だから食べない」といって断った...創作との説もありますが)の方がまだましのように思えますな。

【備考】
 とりあえずメモ作成から。


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