災害の水道への影響 Disaster Damage 
作成者  BON
更新日  2001/04/29

 水道の考慮しなければならない災害の分類と災害やその対策の現状について,総括的にまとめました。

災害の分類
 さまざまに発生しうる災害を,対応方法別に整理しました。
リスクの想定
 リスクマネジメントの考え方について。

【参考】
2001/04/29 水源関係の情報を整理したのを機に,渇水関係情報からサイトの項目を再整理しました。


災害の分類

 ある契約書にあった不可避条項を示します。

 「暴風,豪雨,洪水,高潮,地震,地すべり,落盤,火災,騒乱,暴動その他の自然的又は人為的な事象であって,甲乙双方の責に帰すべからざるもの(以下「天災その他の不可抗力」という。) により,仮設物,現場搬入済みの工事材料又は建設機械器具に損害を生じたときは,乙は,その事実の発生後遅滞なくその状況を書面により甲に通知しなければならない。」

 この例に分かるように,水道施設に被害を与える可能性のある災害は,以下のように多岐にわたります。各災害の概要と対策をとりまめると以下のようになります。

種別 重要度/罹災例 概要 対策
地震 ※被害 大−小
※頻度 小
※対応 困難
 水道施設の破壊や職員への人的被害。
 需要者に対する影響,水道事業全体に対する被害規模がともに非常に大きい。 被害予測は非常に困難。
1)事前対策
 施設の耐震化,教育訓練,広報
2)災害時対策
 応急給水,復旧
3)恒久対策
渇水 ※被害 大−小
※頻度 中−小
※対応 困難
 需要者に対する影響が大きく,予測,対策が困難。予防対策に限界がある。 1)事前対策
 都市化の制限,水の融通,訓練,広報
2)災害時対策
 需要調整,配水制御
噴火 ※被害 大−小
※頻度 小
※対応 困難
 水道施設の破壊や需要者に対する影響が大きくなる場合があるが,対象範囲は限定的で避難できる。ただし渇水以上に長期化しやすい。 1)事前対策
 施設の分散
2)災害時対策
 応急給水,移動
3)恒久対策
風水害
 
※被害 大−小
※頻度 小
※対応 やや困難
 台風や河川の氾濫などによる施設の浸水,崖崩れによる配水池などの損害。 1)事前対策
 施設設計時に考慮
雷害 ※被害 中−小
※頻度 中
※対応 やや容易
 被雷による計装設備の故障と制御の停止。予防が重要。 1)事前対策
 避雷設備
 計装の2重化
雪害/凍害 ※被害 中−小
※頻度 小
※対応 やや容易
 配管の凍結,雪荷重による送電線の障害,施設への進入路の使用不能など。 1)事前対策
 設計時に防凍を考慮
2)災害時対策
 点検と復旧体制の整備
動物
災害
※被害 小
※頻度 中
※対応 容易
 動物の進入や営巣などにより水道施設への衛生上の問題を生ずる。被害は通常一過的。 1)維持対策
 防虫網の設置や点検
事故 ※被害 中−小
※頻度 中
※対応 容易
 水道もしくはその他事業主体の工事による水道施設への被害,もしくは水道水の汚染など。 1)災害時対策
 工事管理の徹底
水源
汚染
※被害 中−小
※頻度 小
※対応 やや困難
 表流水では上流部での事故などにより,急性の水源汚染が発生しうる。井戸水は急激に汚染されにくい反面,除染も困難である。 1)事前対策
 水の融通
 教育訓練,広報
2)災害時対策
 需要調整,配水制御
火災 ※被害 中−小
※頻度 小
※対応 容易
 発動機過熱や放火など。無人施設が多いため,発生の抑止に注意する。 1)事前対策
 消防上の条件の満足
犯罪/戦災 ※被害 小−大
※頻度 小−中
※対応 やや困難
 犯罪や戦争による水源や水道施設の不全。今後の課題として研究が必要。 1)事前対策
 監視体制の確立
2)災害時対策
 警察等との連携

 これらの災害について,対応策別に整理すると以下のようになります。

種別 災害
 需要者への被害が甚大であり,対策が困難な自然災害  地震,渇水,噴火
 施設設計施工時に考慮することである程度回避可能な自然災害  風水害,雷害,雪害・凍害
 通常の維持管理の範囲で対応すべき自然災害・人災  動物災害,事故,火災
 人災の要素が強く水道事業上の対策では防げない災害  水源汚染,犯罪・戦災

 このように,計画策定時点で特に重視するリスク項目として,地震渇水が挙げられます。これは,これらの災害への対策については,計画時点での対処が最も重要であり,なおかつ事後の対策で防ぐことができないためです。(噴火は地域が限定されるのでここでは除外しました。

 なお,このような災害時には,都市間の相互協力が重要な役割を担うものと考えられます。このような対応について規定した覚書がセンターのHPに掲載されています。

12大都市水道局災害相互応援に関する覚書【(財)水道技術研究センター】
 政令指定都市の相互応援の協定書。

 災害対策の立案方法を研究した経験から言うと,災害対策を考える場合は,自治体やその他団体との強力かつ有効な連携が重要です。水道だけで対策を講じて安心していてはいけません。また,計画の実効性を確保するためには訓練などの地道な活動が欠かせません。

【参考】


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