モニタリング機器 Monitoring Sensor
作成者  BON
更新日  2004/10/03

 ここでは,水道で使用する計装設備について取り上げます。流量計や水位計,水圧系,残塩計,その他のセンサー類がこれに該当します。

 ここでまとめる計装設備とは,水道施設を適切に運用するためのセンサー類のうち,基本的なものです。電気・計装設備工事は全工程の最後に行うので,土木付帯設備と比べて修正を行う余裕がないことが多く,設置時点でのミスのフォローが効かないことが往々にしてあります。電気設備に絡んだ計画を立てるときは,電気屋さんの意見をかならず聞きましょう。

 ちなみに,電気・計装設備は水道施設の維持管理の最前線であり,そして水道施設のなかで最も脆弱な部位でもあります。電気。計装設備の計画の適否が,維持管理の適否を大きく左右することに,十分な注意を払わなければなりません。

プロセス管理計器
 流量計,水位計,残塩計など,どんな水道でも必ず設置する設備について。
水質測定センサー
 水質測定機器について。メーカー品の紹介を含みます。

【参考】
 2001年に作成してから初めての見直し...この分野については決して明るくはないんです。


プロセス管理計器

(1)流量計・流速計

1)流量計とは

 名前のとおり,流量(口径が分かれば流速も計算できる)を測定します。配水水量の計測は,水道の会計において非常に重要ですし,また維持管理に有用なデータとなりますので,必要なところに必要なものを設置しましょう。水道用で使用される流量計には,電磁流量計,超音波流量計,翼車式(ウォルトマン)流量計などが主です。

2)流量計の種類

 水道用でよく使用されるのは電磁流量計です。ファラデーの電磁誘導の法則を利用してほとんど損失なく,精度のよい流量データが得られます。

 超音波流量計は,流体が導電体でない場合にはよく使用されます。パイプ本体に後からとりつけることができるため,大口径の管に後付けで設置する場合に使用されます。ただ,水流の乱れの影響を受けやすいので,直管部は長めにとります。初期投資で考えると,小口径の場合,コストは一般に電磁流量計よりも高めです。

 翼車式のメリットはコストが低く,電気なしで可動できる,水に漬かっても問題を生じない点などです。家庭用などで多用されます。機械式なので水圧のロスが発生すること,機械部分の損耗やロスにより交換や更新が必要になる(他の方式の場合は調整ですむ場合が多い)こと,遠方監視可能なセンサーをつけるとコストの利点がなくなること,などが弱点でしょう。

 ちなみに,電磁積算式流量計という機材もあります。これは,瞬間流量の精密な計測はできないものの,単価が電磁流量計の半額程度と安いもので,個人的にはお気に入りでした。でも最近見ないような気が...

 このほか,実験時などでは,流速の計測が容易にできる,フローメーターなども使用されます。

3)流量計設置上の注意

  電磁流量計には水道としての規格がないので,面間や拘束長(流量を計測するための整流に必要な長さ)などは様々ありますが,上流側に5D,下流側に2Dとるのが普通です。取り外し用のルーズフランジを含めて弁体の面間で10D程度とっておき,付属の短管込みで設計すると,メーカーの違いを吸収できます。この場合,代替管としてこの10Dの長さの短管を用意しておきましょう。

 超音波流量計の場合は検出器が管に外付けできるのですが,整流の重要性が電磁流量計よりも大きいので,10Dは「最低確保しなければならない」延長になります。

 もう一点,流量計の設置の際に重要なのが,流量計内の流速です。最適流速は概ね 2−3m/secと,一般の配水管路内の流速の1m/secよりもかなり早めです。このため,流量計の前後で管の口径を1〜2ランク絞るのが普通です。計算上は3段落ちになることもありますが,3段はちょっといやですねぇ...

【備考】
少しあやふやなところもありましたが指針などで調整。


(2)水位計

 投げ込み式,差圧式,電極式などの方式があります。配水池など池状の構造物の管理には,水位の情報が欠かせません。(高水位ではあふれますし,低水位では空になります)水面のゆれの影響を受けるので防波管を忘れないように。また,水位計の設置用の穴を空けておくことを忘れないようにしましょう。結構大きなスペース(大きなものでは600mmの防波管が必要)が必要になりますし,雨水が入らないよう,穴の周囲を突起にしておく必要があります。

 投げ込み式は,池の上からセンサー部をぶら下げるように設置し,水圧を感知して水位データとします。差圧式は,流出管やドレーンなどに圧力センサーを設置することで,水位計の役割を果たします。

 電極式は,池の上から電極棒をスイッチの数だけぶら下げる形で,水との接触による抵抗の変化をスイッチにします。井戸の中など狭いところでも配置でき,安価で単純なため落雷に強いですが,スイッチとしての使用しかできません。通常,下限(LWL),上限(HWL),警報(HHWL)の3点,もしくは運転水位に設定します。

 水位に関する情報は維持管理のうえで最も重要なので,かならず,投げ込み式や差圧式をメインに,電極式をサブにして,バックアップをとります。

【備考】


(3)水圧計

 水圧計として設置する場合,ポンプなど動力装置の吐き出し側に設置する場合が多いです。また,管網の末端付近に設置して維持管理に役立てる場合があります。大概,ポンプなどの装置に付属しており,値段も安いので,形式について比較検討が必要になることはほとんどないようです。

【備考】
2001/04/09 あまりに長い間放っておいたので,とりあえず常識程度の情報を記入しました。


水質測定センサー

 水質センサーの開発は,水道の水質管理上,非常に大きなネックになっています。特に,生物関連項目の自動化が今後も重要なテーマとなるでしょう。自動的に水質の測定ができるセンサー類の開発はさまざますすめられており,複数の項目をパッケージ化した商品も発表されています。

【環境計測】
 日本電気計測器工業会のインデックス。「ことば」から会員企業のサイトへジャンプできるリンク集が充実。
【環境システム計測制御学会】
 センサー技術の研究を行う学会の会報など。
【東亜ディーケーケー株式会社】
 上下水用水質センサー類が多種類載っているので取り上げてみました。

 測定装置屋さんは日々ユニークなセンサーを開発しており,こちらに目を向けるのもいいかもしれません。においセンサーの記事などは結構面白いです。

 最も,検査用の道具を地域住民に配ったり,シルバー人材派遣センターに委託したりして毎日検査してもらうのが一番安いケースもあります...この辺は痛し痒しか...(-_-)ゞ

1)粒子濁度計

計装システム・計測機器【株式会社日立製作所】
 高感度水道用濁時計(レーザー散乱光計測方式)の説明。

2)総括表

 このほかにもいろいろあります。まずは表を。

設備 方式 備考
残留塩素計 固定電極法  有試薬のものと無試薬のものがあります。
濁度計 表面散乱光測定法  一般の濁度計です。
粒子カウンター法  測定方式により低濁度の場合の精度が異なるので注意。クリプト対策としての導入例が増加しつつあります。
pH計 ガラス電極法  学生の時はよくこわしました...
アルカリ度計 硫酸滴定法  凝集の管理にアルカリ度の把握が必要です。
電導度計 電極法  測定が容易で比較的安価。直接的には基準値はありませんが,水源の汚染状態を推定するのに役立ちます。
その他,特定項目測定装置類 隔膜電極法 アンモニア分析計等。
酸化・吸光光度法 全窒素分析計,窒素三態質量分析計等。
酸化法 全りん分析計等。
バイオセンサー 蛍光標識法 大腸菌群等の検出を迅速に行うための装置は各社こぞって開発中です。
油センサー 光学法 基本的な検出方法。装置が比較的安価。
  TOC計の原理を応用し,溶存する油分を検出する方式も一部企業より発表。
有毒物生物検査 魚類生態監視法 魚センサー。魚を飼うだけのものから,行動を監視するものまで。魚にタグを取り付けるなんてのも研究されてるそうで...うーん,サイバー...

 調べたメーカーは以下のとおりです。

 富士電機,東亜電波工業,フジテコム,桜エンドレスなど。

【備考】
各種企業の資料をもとに作成しました。この分野はメーカー色が非常に強いので,各社各様の提案がなされています。


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