ダクタイル鋳鉄管 Ductile Casted Iron Pipe
作成者  BON
更新日  2010/05/12

 ダクタイル鋳鉄管について記述するページです。いろんな人に教わった話や自分の経験を集めてありますが,間違いなどあるかもしれません。鉄管屋さんの反論ご意見大募集!

ダクタイル鋳鉄管とは
 ダクタイル鋳鉄管に関する基本情報。あんまり詳しくないですけど。
【日本ダクタイル鋳鉄管協会】
 ダクタイル鋳鉄管は主として75mm以上の中〜大口径用の管で,鎖状の耐震構造と強靱な管体強度を有します。弱点は継ぎ手といったところでしょうか。
【Ductile Iron Pipe Research Association】
 DIPRA has provided accurate, reliable engineering information about Cast Iron. For English Speaker!

【参考】
2000/07/03創設。もっとも古いページの一つ。


ダクタイル鋳鉄管とは

1)ダクタイル鋳鉄管の概要

 ダクタイル鋳鉄管のダクタイルとは球状のこと。鋳鉄管材料は鉄と炭素の混合物ですが,この炭素が球状になっているため,鉄と鉄との間に炭素が筋状,膜状に入り込みにくく,機械的弱点ができにくいのが特徴です。

 昔の鋳鉄管はこういう技術がなかったのでもろかったりしたのですが,鉄材料がダクタイル化されてからは,それ以前と比較して非常に強固な管材料になりました。現在の水道管の主力材料の一端を占めています。

2)ダクタイル鋳鉄管の種類

 ダクタイル鋳鉄管の分類についてまとめてみました。

(1)継ぎ手

 ダクタイル鋳鉄管の継ぎ手の種類について紹介。東京都の研修センターで実物の写真をとってきましたので,これを紹介してみたりしますね。なお,各受け口の詳しい情報は協会のページなどに掲載されていますのでそちらを参考のこと。

名称 写真 解説
印籠形継手
B形継ぎ手
 昔,管の継ぎ手に撓み性能が求められなかった時代に採用された継ぎ手方法。隙間に鉛などを流し込んで固めてしまいます。施工にかなり熟練が必要なうえ,なんせ鉛でつなぐので,現代ではもうやりません。ちなみに,B形継ぎ手とはこれのことらしいです。
A形継ぎ手  小口径用鋳鉄管受け口として広く使用されてきましたが,先ごろ廃止されました。規格の異形管の形状寸法は受け口を除いてK形と同じで,K形よりも若干受け口が簡略です。もともとのメカニカル受け口の規格で,Bが印籠,Cがカラーだったんだとか。
K形継ぎ手  全口径について設定されている,もっとも基本的な受け口形状です。メカニカル継ぎ手の基本的なシーリング思想,すなわち,「ゴム輪に対して押し輪で圧力をかけ,この圧力がゴムリングを通じて管の隙間をつめる」形を具現化しています。直管の管厚さについても各種が用意されていて,もっともベーシックな形状といえるでしょう。
T形継ぎ手  別名タイトン形。押し輪がありません。施工時に押し込んだら,それで接合終了。塩化ビニル管のRR継ぎ手と同じスタイルです。
 アメリカから入ってきたスタイルで若干工事費が安いですが,それほど主流ではありません。施工精度とか取り外しが難しいとかいろいろ言われますけど,本当のところどうなんだろ。
S形継ぎ手
SII形継ぎ手

 K形を基本に,受け口ののみくちを長くして抜け出しにくくし,さらにストッパを設けて機械的に抜けだないような機構をもたせたもの。最初,大口径用のS型が,ついで小口径用のSU形が開発されました。K形と同じような設計思想で設計できるので設計はしやすいですが,ストッパを設置するために切管を減らす必要があります。
NS形継ぎ手
 S形は抜出し防止機構を備えた管種として注目されたましたが,K形と同等の接合機構に加え,切り管での巻末加工を要求されるなど,施工手間に問題がありました。そこで,T形をモチーフにして接合を容易に,抜出し防止機構についても従来形を改め施工を容易にしたNS形が発表されたとのことです。NS形では,施工歩掛りの発表が早かったこともあり,比較的順調に普及している様子です。ただ,従来の鋳鉄管管材とは多少設計哲学が異なる点があります。

 現在耐震性能の高い管種としてはNS形が主流ですが,若干他の管種より設計時に注意すべき点があります。ただ,私は管路の設計を自分でやってたのは10年前まで,ちょっと設計思想が古いかもしれないので,間違いがあるかもしれません。乞うご指摘。

  1. NS形では切り管の末端に抜け出し防止加工をするため切り管調整による現場施工が行いにくい傾向があるので,切り管を減らすような配慮が望まれます。
  2. NSの継ぎ輪には抜け出し防止機構がなく,異形管から最低直管1本分程度は離さなければなりません。ただし,この点についてはメーカー側でも問題視しており,新型継ぎ輪を開発中との話を聞いたのは...もう5年前ですが。
  3. NS形では,直管部は呑み口を大きくとることで,異形管部では逆に固定することで抜け出し防止を図ります。このため,直管区間の末端部では,直管の受け口を異形管と同様に使用するための抜け出し防止リングを設置ことになります。

(2)ライニング

 ライニングとは,鉄でできた管と水が直接接触するのを防ぎ,錆びなどを防止するための塗装のようなものです。

 現在水道用で使用されるのは,モルタルライニングとエポキシ粉体ライニングの2種類です。モルタルライニングは直管の遠心力鋳造と近い工程が利用でき,鉄とモルタルとの相性がいいほか,価格も少し安いのが利点です。エポキシ粉体塗装では,粉体の吹き付け塗装なのでどのような形状でも施工できますから,異形管はこの方法を使用します。

 また,水の流れがほとんどないようなところでモルタルライニングを使用すると,モルタルの影響で中の水がアルカリ性になる場合がありますので,このようなケースでエポキシ粉体ライニング管を使用することもあります。このpHの上昇現象は新管でも一時的にみられ、原水にもよりますが、pH9程度、瞬間的にpH11程度まで上昇した例の相談を受けたことがあります。管の布設時の洗管作業はしっかりやりましょう。

 なお,昔はタールエポキシなどのライニングを使用された時代もありましたが,タールはちょっと口に入れるものに使うのはやなので,現在ではもう使いません。

(3)形状

 大きく分けて直管と異形管の2種類に分かれます。前者は遠心力を用いて鋳造するため精度が高いうえに延長あたりのコストが低く,後者は鋳型を使用するので自由な形状で製作できます。切管として使用するときなどは,基本的に直管をつかわないといけません。

 異形管には,使用頻度などに応じて1種,2種,3種,及び特殊異形管があります(この数字は肉厚とは別です)。それぞれに単価が異なり,口径とトンあたりのお値段で計算します。(建設物価調査会,「建設物価」より)

1種異形管 二受けT字管,曲管45度,曲管22.1/2度,曲管11.1/4度,曲管5.5/8度,継ぎ輪,短管(1号,2号)
2種異形管 三受け十字管,片落管,曲管90度,排水T字管,フランジ付T字管,人孔ふた,フランジふた,フランジ短管,ラッパ口
3種異形管 3フランジT字管,2フランジT字管,2フランジ片落管,フランジ曲管45度,フランジ曲管90度,仕切弁副管,フランジ短管(乱尺)
特殊異形管 上記にふくまれないもの。単価については通常3種異形管と同じ。

 異形管は,特殊な形状でなくとも,災害復旧のときなどに資材の調達に時間を要する可能性があるので注意しましょう。特に,2種や3種はその可能性が高くなります。さらに, 鋳鉄特殊管(必要に応じて鋳造する管)を使用することも可能で,値段は重量単価なのである意味リーズナブルですが,メーカーから約6ヶ月の製作期間を要求されますので注意が必要です。

 また,口径によっても調達の難易に差があります。φ200を超えると,50刻みのたとえばφ350mmなどの管は納品までの時間が長くなる傾向があるそうです。

(4)管厚

 管の強度は肉厚で決まります。もっとも分厚い強度の高い管を1種管といい,これから数字が大きくなるに従って,管厚が薄くなります。口径によっては1.5種,2種,2.5種...と0.5刻みで上がっていきますが,通常使用するのは1種,3種のいずれかでしょう。通常使用するような小口径管(φ150mm以下)であれば,機械的強度が十分ありますから,3種管で十分なケースがほとんどです。ちなみに,異形管には種類はありません。

【参考】
書き出せば何ぼでも書くことはあるんですが...


HOME> TOP>