特殊配管 Special pipeline
作成者  BON
更新日  2005/12/25

 通常,管路は地中に埋設されるものですが,川や海を越えたいときなどには,相応の方法が必要になります。このような特殊な配管について整理します。

水管橋
 水道管が川を越える場合に橋を掛ける方法。
橋梁添架
 水道管を橋にくっつけて渡す方法です。
海底配管
 海の底に配置する配管。
仮設配管
 給水管の工事時に仮に配管をすることです。
大深度地下配管
 地主の権利調整を必要としない地下に設置。

【参考】
 まずは場所のみ。


水管橋

鳥たち憩いの水管橋(^o^)

 一番高いところに空気弁がついているのが圧力水管の水管橋の特徴。よって,多分水道用水管橋でしょう。

 水管橋とは,川を渡すために,水道管の橋を掛ける工法です。軽さと強度の条件から鋼管を利用したものが多く使用されますが,小規模なものでは鋳鉄管を組み合わせたものもあります。

 水管橋は添架の10倍ほどのコストがかかり,また河川当局との交渉に非常な困難を覚悟しなければなりません。また,距離あたりの重量と強度の比の大きい鋼管を露出して利用することが多いため,維持管理(主として錆止め塗装)が継続的に必要(概ね3年に1度なれど周囲の状況によって変化)です。

水管橋【栗本鐵工所(株)】
 水管橋のタイプ別の説明と写真もあります。
水管橋【JFEエンジニアリング(株)】
 水管橋の写真,工法の解説があります。

水管橋コレクション

 水管橋ってのは外にありますから目立つんですね。いくつか写真をとってみました。

【参考】


橋梁添架

 名前のとおり,橋にくっつけて水道管を通すことです。強度の必要な場合には鋼管や複合管(鋼帯がい装ポリエチレン管など)が,簡易な場合にはポリエチレン管などがよく使用されます。

 目安ですが,既存の橋に添架する場合は,概ねφ150が上限です。これは,道路の設計時に想定していない過重であるためです。これ以上の口径場合は,橋の上部工の補強を要求されるものと想定してください。

 新設の橋の場合は,もちろん道路当局,河川当局との慎重が必要ですが,初めから過重を見こんでもらえますので口径の制限がほぼなくなります(もちろん応分の負担がかかります)。配管自体も道路内に布設するので,位置的な合理性もあり,お勧めの方法です。ちなみに瀬戸大橋では大口径の送水管が添架されています。

【参考】


海底配管

 ここでいう海底配管とは名前の通り海底に配管するケースの他,湖や大規模な河川の底に配管することです。

 始まった当初は海底に転がす場合が多かったのですが,船が錨に引っ掛けてしまったり,流れや海底の変化などの影響で移動してしまったりして破損するケースが多かったので,現在ではポンツ−ンという錘で固定したり,海の底を2m程度掘削して布設したり,逆に海底に盛り土をしたりするようになりました。

 海底配管の布設の際にはある程度引張力をかけることが必要です。このため継ぎ手の必要な管種は使用しにくいといえます。従来は主として鋼管が使用されていましたが,最近ではこれに加えて鋼帯がい装ポリエチレン管などが使用されるケースもあります。

 各工法の施工現場を見学した際の印象及び説明です。

1)鋼管による海底配管の例

 現場:北九州市付近 φ150

 海底配管のルート選定時には,海図を十分調査することはもちろんのこと,電力ケーブルとルートが交錯しないよう,十分に配慮することが大切です。通常は電気管が先に布設されており,最適なルートが少ない場合などは先にルートを占用されている場合があるためです。このほか,航行について(海上保安庁や海難防止協会との協議,埋立計画,護岸計画の確認など),流速(遅く急変しないと有利),海底地形の調査(土中埋込み工事がやりやすいことから深層部では砂地が理想的。砂取場跡がある場合などは注意,浅瀬であればクラムシェルで掘削できるので多少地盤があってもOK。)などを行います。なお,最大曲げRは,φの1000倍が目安だそうです。

 鋼管の場合は特殊肉厚管に外面ポリエチレンコート内面塗装の長尺管(12mものを2本接合したもの)を使用,塗装管理やX線検査などを高度に管理された連続工程で行えるため,布設後の維持管理として電食対策を3年に1度程度行うことで十分性能は維持できるとのことでした。布設時のテンションに耐えられるよう,管の剛性が大きいために少々の地震ではビクともしないでしょう。

 船上では,接合,検査,前進,のサイクルで,連続的に施工します。1工程に70分が必要,工程あたりの布設延長は24mとのこと。作業は日の出とともに始まり,日の入とともに終わりますが,布設が終了するまで作業員は船上で生活するとのことでした。気になるお値段は,φ150で概ね1m当たり230〜250千円とのことです。

2)鋼帯がい装ポリエチレン管による海底配管の例

 現場:高松市付近

 工事は継ぎ手がないほうが有利であるため,なるべく大きなリールを使用し,接合無しで一気に布設します。工事を受注した段階で専用船の特製大型ドラムに管を巻き取り,そのまま現場へ向かうとのことでした。(ちなみに陸上布設の場合は,道交法の範囲内で可能な範囲で大きなリールをトレーラー移送するそうです)。

 施工はコンピュータ制御により,リール回転,引張力の調整,潜水夫によるフロートの取外し,などを制御し,リアルタイムで記録できるそうです。

 位置出しは,電波ビーコンによる3角測量などのほか,カーナビや広域測量などと同様GPS(グローバル・ポジショニング・システム)により行うとのことで,台船と高松市上の陸上にGPSアンテナ装置を設置し,互いにデータを補足しあうことにより,数十センチレベルの精度を実現しているとのことでした。

 現場代理人は毎日陸に上がるのですが,一部作業員は終日台船に泊り込んで警戒などの任に着くそうです。ちなみに,見学した現場では定期航路に近い,潮が早いなどの問題があったので,台船の他にタグボートが2隻と警戒船が2隻現場海域の警戒にあたってましたが,事故予防の観点からみた警戒体制としては,最も厳しい部類でこのレベルとのことでした。

 海底配管が沿岸に到達すると,鋳鉄管の鞘管を用いて護岸上を超えるか,護岸下を推進工事により抜きます。

3)海底配管と事故

 海底配管は、実は結構な頻度で破壊されております。ある程度の予測と対策をとっていても,このような事故の危険が常にあるのが海底配管です。

 前述の高松市の事例では、約4年の間に2回も被害を受け,4ヶ月もの断水となったことを重くみた市は,再発防止策として,赤外線監視カメラの設置,猟師への呼びかけ(海底に怒りを引っ掛けて網を張る漁法が疑われたため),砕石による防護工,海底管位置案内板に傾向塗料を塗る,などの対策をとった,とのことです。(平成14年5月の毎日新聞報道)

【参考】


仮設配管

 仮設配管とは,配水管の工事の際などに仮設で配水するときの管で,設計上はポリエチレン管φ50の5回使用程度を見込むことが多いようです。消火栓もしくは本管からサドル分水で取り出し,各家の給水栓までポリエチレン管のφ20程度の給水管によって供給します。

 最近ではREPICS(商品名)のように,繰り返し使用回数を増やすことで合理化を図ろうとする動きもありますので調べてみられるとよいでしょう。

【参考】


大深度配管

 「大深度地下」とは地主の権限の及ばない深い地下(地下50mくらい)に構造物を作ってしまおうというものです。道路や建物などの制限を回避できますが,当然金がかかります。

「大深度地下の公共的使用に関する基本方針の試案」に関する意見の募集【国土交通省】
 国土交通省のパブリックコメントへ。基本方針案を掲載。
大深度地下@【(財)先端建設技術センター】
 リンクさせてくれないとのことですので検索サイトなどからどうぞ。

【参考】


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