水資源の融通 Accommodation
作成者  BON
更新日  2001/03/27

 水資源の融通について。非常に取り扱いの難しい問題なんですが...まあ載せてみましょう。

水資源の融通
 水道水源の融通と応援について。

【参考】


水資源の融通

(1)複数の水源の連絡

 水源連絡路の構想は各地でおこなわれています。思川の事例などが有名です。

 ただ,コストは非常に大きいものですし,ちょっとやそっとで執り行える事業ではありません。水道屋がイニシアチブをとって進めるケースはまずないでしょう。

【備考】
 事例は多数ありますが,サイトで公開しているものは見つけ次第掲載します。


(2)水道同士の融通

 水道事業同士の水の融通は,連絡管を設けることで比較的容易に行えるように見えますが,実際にはほとんど機能しません。これは以下のような理由によるものと考えられます。

 また,恒久的に水を融通することを「分水」と呼びます。当該の事業体から送水するよりも,隣接する事業体から送水した方が,施設的に有利な場合などで採用されることがあります。実態としては多数存在しますが,事故時の責任分担などに難があるとして,行政的には推奨されません。特に認可などの際にかなり追及されることがあるようです。

 ただし,今後は別の展開はあるかも知れません。というのは,水道の技術上の業務の委託が水道法で明記されたからです。手続きの詳細はまだわかりませんが,分水契約を行っているところについて,調べてみられるとよろしいかと存じます。

【備考】
 私見と思ってもらってよいです。


(3)工業用水道との融通

 工業用水道事業では,上水道と異なり,コストを抑制するために,濁度など表流水性の処理レベルは抑制します。また消毒は行いません。しかし,同一の事業体が運営しているケースなどでは,その他の施設的な特徴には共通点がありますので,融通についても事例があります。

 1)は上水から工水への応援,2)は工水から上水への応援の事例です。3)は,恒久的対策の事例で,水利権の移転を検討している事例です。

1)O市の事例

 O市水道局では、市内に5カ所の上水道と工業用水道の連絡箇所を設けています。通常は連絡用の短管をはずしてあり応援給水の時に短管を取付けます。これは、上水と工業用水のクロスコネクションにならないようにするためです。これまでに上水から応援給水をしたことがありますが、水源が長期渇水で取水制限をするとき、工業用水の制限率が高いために行うものです。残留塩素が障害となる企業には次亜硫酸ナトリウムを加えて脱塩素をします。

 O市は上水道と工業用水道が同じ経営ですので協定は結んでおりません(特に必要ありません)。設置当初、配水管の維持管理が担当の配水課が単独の判断で連絡工事をしておりましたが、事故のおそれがあるため、工務課、配水課、水質試験所が協議し、技術管理者の決裁をとるようにしております。また、県レベルとは、原水、上水道水、工業用水道水それぞれについて連絡管を設けており、緊急応援の協定をそれぞれについて結んでいるそうですが,これまでに訓練以外で使用したことはないそうです。

2)松山市の事例

 松山市は,上水道のほかに工業用水を供給しており,水源能力は1日130,000m3です。平成6−7年の渇水の際には,生活用水優先という立場で節水を要請し,工場側の積極的な協力を得て,散水の全面中止,冷却水の循環利用,海水の利用などあらゆる節水措置を講じてもらったそうです。

 しかし,水源が回復する見通しが立たず,平成6年7月15日から平成7年5月2日までの長期間にわたり給水制限が実施されました。また,給水制限が長期化したことや,契約水量の90%カットという,過去に例のない厳しい状況を受けて,ついには,ほとんどの工場が操業短縮や一部生産ラインの停止に追い込まれるなど,生産面に大きな影響がでたということです。料金については,種々の論議を経た後,結論として料金の払戻しは行わないこととなったとのことです。

3)沖縄県の事例

 沖縄では,工水の需要が伸びないのに対して上水の伸びが著しかったため,2000年4月から,63,000m3/日の工水水利権のうち31,000m3/日を上水に振り向けたそうです。(日経新聞2000年1月15日記事)ただ,補助金で整備した施設の転用は国を説得するのが難しかったり,補助金の返還を求められたりするので,いつもうまくいくとは限りません。

【備考】
 1)については識者よりお伺いした話をほぼそのままのせました。ただし事業体名は伏字にしてあります。2)は文献より要約した情報としていただきましたので実名掲載。3)は記事がありますので実名掲載としました。
 2001/03/27 一部修正と記事へのリンク追加。


(4)渇水に陥ってからの水利権融通

 節水や農業用水の一時的な融通などで十分に対応できるのではないかと思われる方も(特に雑誌社などに多数)いるようです。実際,渇水に陥ってしまえば,節水に頼るしかないのが現状です。

 実際の渇水時の節水率の設定では,まず工場用水,生活用水(水道水),農業用水,の順で行われます。これは,農業用水の価値が水量や水質よりも「田んぼに水を引くための水位」であり,量的なコントロールが難しいため,ということのようです。

 また,工場用水は一般に契約事項に節水協力を盛り込んでありますが,農業用水の融通をするためには所得補償を想定しなければなりません。

 通常,工場用水は営利目的との理由から,真っ先に削減の対象にされます。先の松山市の事例のように,その結果,大きなダメージが発生する場合があります。他に,特に渇水がひどいケースにおいて,二次処理下水を工水の原水として緊急使用した例がありますが,汚染の進んだ原水を供給することは,施設内に汚泥等が蓄積するなどといった維持管理上の問題があり,あくまでも緊急避難措置になります。

【備考】


HOME> TOP>