広域化 Amalgation
作成者  BON
更新日  2007/04/15

 水道事業の広域化について。

広域化
 水道事業の広域化について。
水道の統合
 水道事業の合併や統合,組織融合についてのコメントです。

【参考】
 仮置き。


広域化

1)広域化とは

 水道の広域化とは,「水道事業が通常の面的な制限を超えて広域的に実施されるように改善を行うこと」と定義できます(公式なものではありませんが)

 水道事業は通常,施設的制約,法的制約から,

  1. 流域や地勢などの地形的制限
  2. 市町村など行政的制限
  3. 水源的制限
  4. 財政的制限

 の制約で範囲が決まることが多いのですが,これらの制約の範囲を超えた区域において事業の統合を行うことにより,規模のメリットを享受できると考えられ,現在に至るまで積極的に推進されています。また,最近では市町村合併により水道事業が統合される例もあり,事業面ではなく政治的な側面から広域化が促進される例もでてきました。

2)広域化のメリット

 広域化のメリットは,「水道行政(日本水道新聞社)」によると,以下の5つに整理されています。

  1. 水需給の均衡
  2. 重複投資回避
  3. 複数水源
  4. 維持管理能力向上
  5. 料金の均衡化

 しかし,広域化のメリットの第一は,やはり規模の拡大による効率追求と考えられます。(前出の中では2,4に近い)図は計画給水人口あたりで管延長を除したものですが,人口規模が大きいほど,一人あたりの管延長は収束し,短くなっている様子がわかります。管への投資は水道における投資のポイントですから,規模が大きい事業ほど投資効率がよいひとつの例といえるでしょう。

 また,管理面や経営面の工夫のためにはある程度の事業規模が必要です。特に小規模な事業においては,そのような工夫を行うために充分な職員数が獲得できない例もあり,合併などにより規模を拡大することでそのような工夫の余地を得ることもあるでしょう。

 事例で多いのは水源の獲得を目的にした広域化です。前出の5項目のうち1,3が挙げられているのもこれを反映しているといえそうです。特に需要が増大している場合でも水源は地理的制約から投資をすれば獲得できるというものではありませんから,水源を獲得できるエリアまで水源をもとめて施設整備をします。この際に,複数の事業体でコンソーシアムのような体制を組んでこれを行うのも広域化の類型といえるでしょう。

3)実際

 さて,広域化のメリットは先ほど述べたとおりです。ただし現実はどうでしょうか。実のところ,無理な広域化をした事業においては,決して効率が向上したとは言えない状況になっている事業もあり,広域化が手放しでうまくいっているとは評価できない状態であるのではないかと考えています。

 4つの制限(他にもあるかもしれませんが),すなわち地形,行政,水源,財政,のうち,行政の制限はあまり意味をなさないので,これは撤廃したほうがよいでしょう。しかし,地形や水源の制限は,水のような重い物質を輸送する水道においては軽視できません。特に水源の必要性から広域化した例については,その結果として他の制約...その多くは財政...に無理をした結果が跳ね返ってきているように思われます。財政の制約はある意味他の制約以上にシビアで,場合によっては事業の中止すら勧告されなければならない=逆に言えば,人が住んでいても水道を布設しないということ=も,これからは積極的に考えていかなければならないでしょう。

 ただし,抜本的な広域化を実施した例では明らかに効率の向上が見られます。八戸圏域広域水道企業団はその面的なハンデに対して効率的な事業経営がなされている例としてしばしば紹介されています。もっとも,用水供給のみの分離など,一部だけを切り出すような,事業効率の面から必ずしも最適な経営がなされていないことも多いようです。

 おりしも4月頭,国交省白書にて,「これまでの面的な整備からコンパクトシティ=すなわち分散した人口を集中化させることでインフラ整備の効率化を図る方針=が打ち出されたところです。水道分野でも,「地球環境時代の水道」にて,15年も前にそのような提言がなされています。広域化から集中化へ,これがこれからの時代のキーワードになる...かもしれないのではないかなぁと...

【参考】
 図は仕事で作ったけど没になった資料。水道統計H16より作成しました。


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