水道政策目標 Guidelines
作成者  BON
更新日  2005/10/12

 水道に関連する政策目標等をまとめました。

水道基本問題検討会 
 水道法改正に関する基本的な考え方などを掲載。平成11年6月
水道ビジョン 
 水道の今後10年間の施策目標。
水道分野での調査研究
 今後の調査研究について。
以前あった施策
 計画年度のが迫っていたり,廃止された施策について。
行政戦略提言
 事例集より。水道をどう扱うべきかについての議論も時々出てきます。

【参考】


水道基本問題検討会

 平成13年度の水道法改正のバックボーンになった検討会の諮問結果。厚生労働省HPに掲載されてます。

水道基本問題検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」について
 水道法改正に関する基本的な考え方などを掲載。平成11年6月

 基本方針は3点(成熟した市民社会への対応(需要者の視点),自由な経済活動を基調とする経済社会への対応(自己責任原則),健全な水循環への対応),これを受けた基本的対応方法を,以下の5点に整理されています。

  1. 「シビル・ミニマム」の確立,
  2. 関係者の役割分担
  3. 水質
  4. 安定供給
  5. 料金

【備考】


水道ビジョン

 このほど「水道ビジョン」が公開されました。その長期的な政策目標は以下の5点とのこと。

  1. 安心:全ての国民が安心して美味しく飲める水道水の供給
  2. 安定:いつでもどこでも安定的に生活用水を確保
  3. 持続:地域特性にあった運営基盤の強化,水道文化・技術の継承と発展,需要者ニーズを踏まえた給水サービスの充実
  4. 環境:環境保全への貢献
  5. 国際:我が国の経験の海外移転による国際貢献

 厚労省のHPには,既に水道ビジョンの全文が掲載されています。水道関連情報を総括してあつかっているので非常に検索しやすいです。

水道ビジョン【厚生労働省水道課】
 水道ビジョンの全文発表。

 また,厚労省の山村水道課長は,各水道事業がそれぞれ自ら水道事業体としての方向性等を整理提唱することが重要だとし,この概念について「地域水道ビジョン」という言葉を用いて解説されています。環境分野でのローカルアジェンダ21を好例として,いわゆる,「Think globally act locally」の水道版を実施すべきとのことです。課題を洗い出して数値を示し,目標を明確化する手法は特に今日求められる社会的要求でもありますので,企画経営計画に係わる場合はこの視点が重要でしょう。

 ちなみに,水道ビジョンの達成状況等については,水コン協から,水道ビジョン基礎データ集が公表され,及びフォローアップ調査等が実施されていますので,現状把握にはこれらの資料を参考されるとよいでしょう。

 なお,平成15年1月に「水道ビジョン」の骨格が業界新聞各紙を通じて公表された当時の新聞記事からの引用は以下のようになっていました。完成版との比較もおもしろいかも...

<今後の水道施策の目指すべき方向>

<長期的な政策目標>

  1. 需要者が安心して飲める水道水の供給
     大事な飲料水を責任をむって給水できるよう、水道水源から給水栓に至るまで、一貫して水質管理を実施
  2. いつでもどこでも安定的に生活用水を確保
     未普及地域を早期に解消するとともに、災害・テロ・事故による需要者への影響を最小化するための被害の未然防止策、事後対策の充実
  3. 地域特性にあった経営と技術基盤の強化
     広域化の概念を広げ、我が国にふさわしい官民パートナーシップのもと、持続可能な水道システムを支える基盤を強化
  4. 水道技術の継承と発展
     水道技術に携わる人材の確保と育成を行うとともに、水道を取り巻く情勢の変化に対応した技術革新と新技術の普及促進
  5. 需要者二-スを踏まえた顧客ザービスの充実
     相互理解のための情報交換・情報共有を推進
  6. 環境保全への貢献
     エネルギー消費産業としての責任をもってエネルギー対策にむ貫献するなど環境にやさしい水道の構築
  7. 我が国の経験の海外移転による国際貢献
    国際的な動きに調和し水道分野の国際化を進めるとともに、我が国の成功例をむとに途上国の給水環境改善に責献

<目標達成のための総合的な水道政策の推進>

  1. 水道の経営・運営への多様な形態の提示と普及
  2. 安心・快適な給水確保
  3. 災害対策等の充実  
  4. 環境・エネルギー対策の強化
  5. 国際協力を通じた水道分野の国際貢献

【備考】
 水道産業新聞1月19日号より。


水道分野での調査研究

 検討会が中間報告をとりまとめたとの記事が水道産業新聞8/28等で掲載されました。今後の水道分野の研究開発の基本指針となるもので,座長は国包先生が担当されます。新聞記事の転載ですが,一覧しておくことにしましょう。

●水道の経営・運営形態の見直し等による水道事業の技術・経営基盤の強化

  1. 水道事業全般に関わる政策的研究
  2. 経済学的視点を取り入れた研究
  3. 新技術利用による管理運営の一層の合理化に関する研究

●水道水源の保全から給水栓に至る漢での各種対策を講じることによる水道水質の向上

  1. 水道水質の安全性確保に資する研究
  2. 水循環の健全性を考慮した水管理・流域管理に関する研究
  3. 水道水質基準に関する研究とリスクコミュニケーション

●災審対策讐の充実による安定的な水の供給

  1. 危機管理技術の先導的研究
  2. 小規模水道や末端施設等の施設・設備の整備,管理に関する研究
  3. 資機材の安全性に関する研究
  4. データベースの構築に関する研究

●水道分野における環境・省エネルギー対策の強化

  1. 水道分野における環境。省エネルギー等の斑策に関する研究
  2. 水道分野における新エネルギーの利用に関する研究べ水道施設における再生可能エネルギーの利用

●国民の水道に対する多様的かつ高度化した二ーズヘの適切な対応

  1. 利用者の視点からの水道サービスの評価方法(利用者二ーズの把握とその評価方法)
  2. 利用者の視点にたった情報提供のあり方(リスクコミュニケーションを合む構報提供)

●国際協力等を通じた水道分野の国際貢献〉

  1. 水道に関連する国際的な課題に関する研究(水供給にかかる多国間協力のあり方)
  2. 途上国における適正技術に関する研究

●技術開発や機構の解明に資する研究

  1. 浄水処理技術に関する研究

●健療科学や複数の分野にわたる先駆的研究

  1. 健康科学等の視点から水をとらえる研究
  2. 多分野と連携した先端的研究

【備考】


以前あった施策

 現在,水道整備に関する基本方針については審議中です。そろそろ目標年度に近づいてきましたが,ふれっしゅ水道計画とその根拠となった生活審議会答申について紹介します。

(1)生活環境審議会答申「今後の水道の質的向上のための方策について」

 厚生省は,大臣の諮問機関である生活環境審議会に平成2年9月に諮問を行い,同年11月に本答申を得ました。答申では,水道利用者の要求を的確に把握し,これに配慮した高水準の水道を目指すべきであるとし,今後の水道整備の基本的考え方としていつでもどこでも安全でおいしい水を供給できるよう,

  1. すべての国民が利用可能な水道
  2. 安定性の高い水道
  3. 安全な水道

という3つの面から施策の具体化を図ることが必要であるとされ,この3つの面の各々について次のような具体的方策が示されました。

1)すべての国民が利用可能な水道

2)安定性の高い水道

3)安全な水道

4)併せて講ずべき事項

【備考】
 今みると,やはり拡張と安全性の確保の視点に重きを置いているような印象があります。この審議会の後,バブルの崩壊から10年に及ぶ景気交替など,急速に世情が変化しましたので,次回の基本方針はこれとはずいぶんことなったものになるのではないかと思います。


(2)21世紀に向けた水道整備の長期目標(ふれっしゅ水道10カ年計画)

 生活環境審議会の答申では,今後の水道施設の整備は,長期的視点から十分な計画性をもって取り組むことが必要であり,国として,長期的な目標を明らかにすべきとされていました。これを受けて,厚生省(当時)は,「21世紀に向けた水道整備の長期目標」を定めました。これは,10年間の主要な水道施設整備の目標と事業量を定めたもので,下水道や廃棄物処理施設のような法律に基づく計画とは異なり,事業費は定められてませんでした。

 なお,この長期目標の内容を5つの言葉で要約し,親しみ易く表現するために,各頭文字をとってふれっしゅ水道という呼称が制定され,水道週間などのイベントでよく使われました。

【備考】
うら「ふれっしゅ」って知ってます?くすくす。


(3)指定工事店制度

 指定工事店制度とは,水道工事の指定代理店を設け,ある程度の独占を容認するかわりに,緊急時の協力や,夜間での交替の対応などを求めるシステムで,水道法に指定をしてよい旨の規定があります。

 しかし自由化の波のもとで新規参入を阻害するものだとの指摘を受け,指定工事店制度が修正されて給水工事主任技術者制度が創設されました。

指定工事店制度【首相官邸】
 規制緩和の推進に関する意見より。

 この対応に対して,行革委員会はこれを評価するとの最終意見を出しています。

【備考】
 廃止された,と書いていたのは不正確でした。ごめんなさい。


(4)MAC21/高度MAC21計画

 膜ろ過技術は,従来沈殿・ろ過で行ってきた固液分離をより確実に行える技術開発を目的にしたもので,医療や工業技術分野で実績がありました。

 日本における水道への膜処理技術の導入には水道技術研究センターの研究プロジェクトである,MAC21(H3〜),高度処理MAC21(H6〜)の,2つの官学民合同プロジェクトが大きな役割を果たしました。そこで,これらの計画の概要と成果について簡単にまとめます。

1)背景

2)体制

 厚生省化学技術研究費補助金を受け,旧水道浄水プロセス協会が核となり,平成3年からMAC21として3年間実施された。水道界における始めての本格的な官・学・産の大型プロジェクトとして研究開発が進められ,画期的な成果を得た。引続いて,平成6年度から3ヶ年にわたって,様々な水質的問題に対応できる技術に膜ろ過を発展させられる可能性を探るため,高度処理MACを推進した。

3)目的

4)成果

 厚生省としては十分な成果を得た,100年来の技術の突破(ブレークスルー)を果せる技術と判断している。水道の特性としては新技術の採用にあたって慎重にならざるを得ないが,このなかで,膜ろ過が従来のシステムに替って使用できる可能性を持っていることを証明したものとして評価できる。また,膜の性能や性状は,目的によって今後いろいろなものが開発される可能性がある。

5)留意点

 導入にあたって,原水の性状を十分に把握し,それに応じてどういう処理システムがよいかということを各事業体ごとに検討してゆくことが必要。特に,ナノろ過の場合は回収率の設定に十分な吟味が必要。実証実験を推奨。

【備考】
 水道公論のMAC21計画の総括記事をもとに内容を整理しました。現在の(財)水道技術研究センター事業です。膜のページから移動。


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