三脚のたてかけは、やめよう。
カメラをつけて、脚は伸ばしたままの三脚。脚はすぼめてある。脚をひろげて使っていたものを、ただ閉じて、
かかえて、移動したりする。そのとき、何かの都合で、三脚を手離すひとがいる。もちろん、ただ手を離せば、
三脚は倒れる。だから、壁にたてかける、大樹にもたせかける。持主が手を離した瞬間は、倒れない。いい写真伝導師の三脚ワンポイントアドバイス
その23
持主は、カメラ付の三脚から、手だけでなく、目も離す。バッグから、新しいフィルムを取り出そうとしたり
している。注意は完全に三脚から離れる。
「アアーッ!」
私は叫んでいる。そこまで行けない、手は届かない。持主よ、近くのひとよ、押さえてよ早く!三脚を!倒れる、
カメラがこわれようとしている、という「アアー!」である。
ひとびとは、大声を発した私のほうを、まず見る。何が起こっているか、どうして叫び声をあげているのか
瞬時にはわからない様子だ。
「なに?」
「どうしたの?」
という表情である。
私の視線や、指の先を追う。
そしてはじめて、倒れ始めている、そして倒れきっていないカメラ付の三脚をみつける。私の脳裡には、スロ
ーモーションのように、倒れてゆく様子が映る。そこでまたひとびとも、ときには持主も含めて、次に起こる
であろうことを予知する。ことの重大さを実感するのだ。確実に、結果を想像する。でもたいていの場合、
それは、予想される結果を防ぐには遅すぎるし、離れすぎているのだ。手のほどこしようがない。万事休す。
倒れつく先が地面でも、コンクリートでも、なんとも形容しがたい衝撃音とともに、カメラ付の三脚は倒れおわる。
持主は当然だが、まわりのひとも、なんともいいあらわし難い反応を示す。持主は、ことの重大さとは裏腹に、照
れ笑いをしたりさえする。後の祭りなのだ。
三脚は、絶対たてかけてはいけない。
脚がひらきとまるところまで、ひろげきって据える。それも傾かないよう、脚の長さを調節してまっすぐたて
る。
床や地面 に置くならば、まずカメラ、レンズを雲台からはずし、三脚は、すっかり寝かすこと。「カメラを
はずしてあるのだから、たてかけてもよかろう」ではない。何もついていなくても、脚をひろげてたてて置くか、
脚をすっかり閉じて、完全に寝かしてしまうこと。たてかけると、倒れて、脇のカメラにぶつかるとか、
脇に置いた荷物に当る、足の上に倒れるなど、いいことは何ひとつない。もたせかけは、いけない。
ズボラは禁物なのである。
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