いい写真伝導師の三脚ワンポイントアドバイス

その24

「水平がでない!」のではなく、出すのだ!!

 「三動作分離雲台」とか「スリーウェイ雲台」と呼ばれる雲台についてのことだ。カメラを 載せるカメラ台は 起こしたり、ねかしたりできる。パンはパン、ティルトはティルトと、動かす止めるをそれ ぞれ別々にできるから、 こう呼ぶ。画面の曲がりを修正しやすい。どこを動かせば、この曲がりを直せるかわかりや すい。雲台を見て、 わかる。どこをゆるめると、どう動くか、見当がつけやすい。使いやすそうに思える。だか ら人気がある。 一番数多く生産販売されていると思われる雲台だ。
 さて、このスリーウェイ雲台だが、
「カメラ台が垂直にたたない」
「カメラ台が水平にならない」
と指摘を受けることがある。
 カメラ台の作動範囲が、正確に90°ではなく、それ以上動くというわけだ。
 メーカーは三脚が使われる場面をいろいろ想定する。
 作動範囲が真直角におさえたら、使いにくいことが少なからずあると予想するので、 90°+αにカメラ台の作動を 設定している。当然、ある状況では、水平にも垂直にもならないだろう。水平や垂直 に対するゆきすぎや不足は 雲台の、あるいは、脚のそして、双方の調節で行うのが正しい。雲台だけで、それも一 発必中で行おうとする ところにムリがあるのである。
 たとえば、「エクセラスポーツ」の雲台をみてみよう。この雲台、カメラ台の作動範囲は 、90°より少し おおめに動かせるようにつくってある。だから、横長から縦長に画面をかえても、垂直位置 を通りこして 縦長になることがある。縦長から横長にしても、水平の手前で止まることもあれば、水平を ゆきすぎて止まることも ある。
 雲台のカメラ台の動きだけを注目するから、水平がでる、でないという話になる。三脚が まっすぐ立っているか どうか、確認してみるがいい。
「エクセラスポーツ」用、「スプリント66デラックス」用雲台などでは、カメラ台の作動範 囲を調整する装置を そなえている。装置というともっともらしいが、なんのことはない、ビスを一本植え込んで あるだけだ。 このビス、六角レンチで反時計方向に廻すと、頭が出てくる。その結果、カメラ台の作動範 囲は狭くなる理屈で ある。このビスを締めこむと、ビスの頭は沈む。作動範囲は広くなる。狭く、あるいは広 くなるというものの 、ビスの頭の出具合をわずかに調節するだけだ。調節の範囲も微量と心得てほしい。

 水平や垂直を、わずかに調整したいときは、脚の長さを調節したほうが、おもいどおり になる。
 例によって一般撮影状態で説明しよう。すなわち、三脚の据え方はレンズの下に、脚を 一本、撮影者の左右の手 で、残る2本を把める向きとしよう。傾きの調節の話だから、あまり関係はないが、クラン ク付三脚なら、それ は、右手操作の向きに、三脚を据えている。
 右手の脚を縮めれば、画面は右下がりに、左手の脚を縮めれば、画面の左肩を下げること ができる。左右の脚を 縮めれば、レンズは上を向き、ローアングル(仰角)にできる。脚を縮める量(長さ)は、 ユビのハラをパイプに 当てがって、ごくごく微量にも対応できる。しかも、ファインダーの目を当てて、被写体を みすえながら調節 できる。脚の長さ調節による傾きの調節は、雲台操作によるそれよりも、微妙な調整ができ る。
 画面を構成してゆくにあたって、脚の長さ調節は、こんなに便利で正確な方法、なのに、 なぜ雲台操作だけが アングルを変更する唯一絶対の方法と思いこんでしまうのだろう。三脚がわかってないなあと 、つくづく 思ってしまう。
 三脚全体の傾きをかえるのに、脚の開き角度をかえるひとがいる。これは感心できない。 三脚を据えている 底面積が狭くなる。開脚角度の変更により、重心が移動して、三脚全体が動きやすくなる。 だから倒れやすくもある。不安定かつ危険きわまりない。三脚は、きちんと使えば、倒れる 心配はまずない。 脚のひらきが不充分だったり、脚ロックをしたつもりだったのに、止まっていなかったり、傾 きを直さず、 かしいだまま使ったりするから、事故が起きる。原因は使い方にあるといわなければならない。
 三脚は、3本の長さと、ひらき角度を3本とも同じにして、まったくたいらなところに立て たときに、まっ すぐ立つ。実際に三脚を使うときにこんな願ったり叶ったリのところはまずない。三脚が真直 ぐ立ったとして、 雲台をまったいらにあるいは、垂直にすることも難しい。まして現実の撮影では、被写体とカ メラとの 相互関係で、まっすぐだとか、かしいでいる、曲がっていると感じるのである。とすれば、被 写体に合わせて 、傾きをつけたり、とったりすることが肝心だろう。すなわち、雲台を自由に操り、脚の長さ 調節をおもい のままに行って、フレームの中に被写体を捕らえられるよう、三脚を駆使すべきである。雲台 の作動範囲 が90°キッチリか否かのように、狭い範囲に感心を絞りこまないで、三脚を自由に使いこなす 術を身に つけよう。撮影現場・条件・目的に合わせて、三脚を自在に使いこなせる術をである。

概念図
雲台の作動範囲を90°に限ると、三脚を据える場所により、 傾きを矯正できず、対応できない。 雲台の作動範囲を大きくすると、三脚を据える場所が傾斜地でも、 対応して矯正しやすい。
もちろん、脚の長さを調節して、三脚そのものの傾きをなおす作業も怠ってはいけない。

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