いい写真伝導師の三脚ワンポイントアドバイス

その21

三脚座を活かそう

 撮影会でのこと。指導の先生が声をあげる。
「こりゃダメだァ、三脚の使い方を基礎から勉強しなおさなきゃァ。」三脚屋さんが 傍らにいることを知って、である。
「え、どおしてェ?なんでェ」と、ご当人。周囲が注目する。「ちょっと、教えてあげて」と 先生。
近づいてみる。雲台は、いわゆる3動作分離方式、カメラ台を起こしたり、寝かしたりできるタ イプだ。645判のカメラが載っている。カメラには、三脚座つきの望遠レンズがつけてある。 それなのに、である。なんと、雲台のカメラ台を起こして、タテ長画面にしている。しかも、 撮影者の左側に起こしている。
「三脚座」とは、 レンズ鏡筒に設けてある三脚への取付部 をいう。レンズを、雲台に締結するために使う。三脚座つきのレンズを使うときは、レンズを 三脚につける。ボディではない。三脚座を使うときは、レンズにボディをつけている。ボディに レンズをつけているのではない。三脚座つきのレンズを使うとき、三脚への締結は、カメラ ボディでなく、レンズで行う。ひとつはバランスをよくするためだ。焦点距離の長いレンズつ きカメラを、かりにボディ側の三脚ネジ穴を使って、雲台に固定したとする。35ミリ版のように、 長方形画面、タテ長画面で撮影するとしよう。カメラ台は垂直になる。カメラボディを装着 したレンズは、その重さによって、カメラ操作中にノーズダウン現象を起こしやすい。折角締め つけたカメラネジが、撮影中に緩んでしまう。レンズがだんだん下を向いてしまうのだ。 「レンズがおじぎする」「カメラが動く」といわれる現象がこれだ。カメラネジが締まる方向に 目方がかかるようにすれば、ある程度ノーズダウンは防げる。
 三脚座には、座の内径に沿って、レンズ鏡筒が回転できるカラクリが含まれている。三脚座に ついているネジをゆるめると、カメラは、タテ・ヨコ・ナナメに角度を変えられる。三脚座の 役割は、バランスをよくすることと、ふたつに画面のタテ・ヨコ切替を簡単にすることである。
 したがって、645はカメラ台を寝かしたまま、つけるべきである。こうすると機材の重量は、 素直に三脚全体にかかる。目方の片利きが起こらない。画面の傾きを少し変更する場合でも、 三脚座のネジ操作で対応でき、大変便利である。すなわち、タテヨコ画面への切替は、三脚座で 行い、雲台を起こしたり寝かしたりしない。
 著名な、80〜200ミリズームレンズも、最近、三脚座がつけられ、使い勝手を著しく向上させ た。三脚座の効用に着目し、便利に駆使して欲しいものである。

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