いい写真伝導師の三脚ワンポイントアドバイス

その18

三脚を使う プロミニで昆虫を撮る

 残暑のきびしい8月の休日、庭でのこと。ポタッ!と落ちる様な感じで「アシナガバチ」がウドの葉に とまった。なにかをかかえている。シャクトリだ。シャクトリガの幼虫だ。体長30ミリ、胴体の最大径 1ミリ強の幼虫がホトトギスの葉先に小枝のような格好で止まっていた、あれだろう。
 アシナガバチは、シャクトリをかかえこみ、押さえこむのに懸命である。それを確認して、家に入る。 機材をしまってある棚の戸を開ける。55ミリマイクロつき、ASA400フィルム入りF3を出す。 肩にかける。「スリック プロミニ」も出す。部屋から外へ向かって歩きながら、 三脚のナットを緩める。脚を伸ばす。ナットを締める。脚をひろげる。2本目、3本目も同じことを 繰り返す。三脚の操作をしながら、ふたたび庭に出る。雲台のロックをする。エレベーターと雲台の 締結部がしっかり固定されているかどうかを確認する。雲台の動きを軽く止めて 、三脚を胸に当てがう。
 左手はマイクロレンズの鏡筒、右手は、シャッターに指をかけてカメラをもつ。(三脚には手をかけない。 手持ちの要領でカメラを構える。カメラボディーと自分の身体の間にプロミニがある。プロミニが つっかえ棒の働きをして、カメラの動きを軽減する。)
 アシナガはまだいるか?飛び去ってはいないか?いる、いる。シャクトリを咀嚼している。肉団子 にしはじめたのだ。部屋に入るまえには、シャクトリは長いままハチに押さえこまれていたのに、 そして、ほんのわずか、現場を離れただけだったのに、その短い留守の間に、獲物は、まるめこまれてしまったのだ。
 急いで、静かに、とりあえず50cmばかり寄ったところで、フレーミング、合焦。絞りf4を、ファインダーを 通して確認。ファインダー内表示でシャッターは1/125秒。「仕事中」を撮らしてもらう当方は、動き を極力押さえたい。邪魔にならないように。ファインダーに目をつけたまま。もっと寄りたい。アップに したい。でも、寄って飛び去られては、元も子もないから、ともかくまずワンショット。パシャ! すかさず巻き上げ、もひとつ、パシャ!
 アシナガは、咀嚼を続けている。胴が規則的に脹らみ、縮む。まるでハアハア息をしているよう にみえてくる。重労働。咀嚼も規則的だ。一秒に一回噛むかと思えるスピード。蜂の様子をみながら、 静かに寄る。当方、片ヒザをついて、身体を安定させる。息をつめて、フレーミング、合焦。複眼に ピントを合わせてみる。私は「深度が浅い」ことを強く意識している。牙のような口の部分に合わせ なおす。いや、餌食のシャクトリに合わすべきか。片ヒザついたといっても、姿勢が不自然なことに 変わりはない。私の呼気が、ハチの仕事場、ウドの葉にかからないように、注意する。ハチの止まって いるウドの、ほかの葉に身体がさわらないように、気を配る。
 ファーストショットよりはアップにして、複眼に合わせて、シャッター。ハチは、頭部を微妙に動か す。動きが止まるかと思う瞬間にシャッター。慎重に、手際よく、巻き上げ、次のチャンスに備える。 至近距離だし、絞ってないから、深度が浅い。手ブレはもちろん、被写体ブレもまずい。カメラと身体 をプロミニが固定しているので、手ブレの心配が極端に少ない感触・安心感が有難い。自分の身体に 三脚を当てがっているので、アングル・ポジションの選択変更の自由が、据えて三脚を使う場合よりも はるかに大きい。幸いなことに、ハチは葉の上で一心不乱に作業をしているから、狙い続けるのは楽 だが、15分も20分も、このままの格好では、こちらがお手上げになるだろう。
 ひと絞り絞りこんでf5.6にする。1/30秒。風がないので助かる。ハチが顔をこちらに向けた。 パシャ!巻上げ。団子の様子がみえる、パシャ!巻上げ。イヤ、ブレたかもしれない。もうひとつ、 パシャ!巻上げ。

 と、ファインダーからハチが消えた。舞い上がったのだ。ヘリが離陸するような塩梅だ。ウドの奥の、 モクセイの上のほうの葉にとまった。近寄れない。撮影終了。

シャクトリを肉団子にするアシナガバチ。

咀嚼し、団子状にシャクトリを扱うアシナガバチ。

ニコンF3、マイクロニッコール55ミリf3.5 AGFA XRG400 プロミニ併用・手持ち

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