クラヴィコード製作日記 − 98.7




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98.7.1

一つ一つのキーの先端に,キーが横にずれないようにするためのguide tongue(98.7.12の写真aの先端部分)を取り付け,整形する作業を始める。このguide tongueがrackにあらかじめ加工されているスリットに沿って上下に動くことによって(写真a),横ずれせずにtangentが弦を打つことができる。guide tongeはポリエチレンの板を小さな長方形に刻んだもので,これを適切な厚さ,形状にナイフで加工して,キーを押したり離したりしたときにスムーズに動くようにする。最初はなかなか時間がかかった。

a

98.7.5

週末に,かなりの数のguide tongueをこなした。あと1オクターブくらい残して終わった。いくつかのキーでは,guide tongeを取り付けるスリット状の切れ込みの幅が大きすぎて,ポリエチレンの板が固定できないものがあった。説明書には「そういう場合はお湯をつけてふやかせばぴったりする」とかいてあるが,全然ダメだった。そういうところには新聞紙を刻んだものを添えて挟んで,ほぼかっちりと固定できた。

98.7.8

ほとんど全てのguide tongueができたが,ちょっと考え直すことにした。というのは,キーを押すと,rackのスリットとguide tongueがすれる音がどうしても少ししてしまうが,これをなるべく抑えるため,今までguide tongeをかなり薄くしていた。しかし,そのためにキーが少し横にぶれる(0.3〜0.5mm程度)結果となっていた。クラヴィコードの発音原理からして,当然これは音程に影響してしまう。計算してみると,特に高音では,このぶれは音律がでたらめになってしまうレベルに達することが判明してしまった。せっかくここまでやったが,全部guide tongueをやり直すことに決めた。ほとんどの材料は既に使ってしまったので,別な材料を購入してくる必要があった。週末に東急ハンズかどこかで買ってくるまで,これは中断せざるを得ない。
EMSから,足りなかったbalance pinが送られてきた。

98.7.11

guide tongueの材料を買ってきた。キットで使われていたポリエチレンを使うのがよいかも知れないが,加工性や,時代を考えれば木材を使うことも考えてよいかと思い,ポリエチレンの板(2mm)の他に,ヒノキとチークの角材(2mm*5mm)も購入した。さっそく使ってみたが,ヒノキが最も扱いやすいことがわかったので,全てヒノキで作ることにした(写真a)。木材にすることによって,湿度等に対する影響は受けやすくなるかも知れないが,その時はその時で考えることにする。

a

98.7.12

全部のguide tongueを仕上げた。横ぶれは,大きいものでもせいぜい0.2mm程度に抑えられたと思う。

98.7.19

クラヴィコードでは,キーの材料のタンジェントの手前の部分が露出して見えるようになっているが,この部分に装飾的なカービングを施す。その作業を開始した。これは単なる装飾だが,かえってそれだけにきれいに仕上げる必要があり,キットにはその練習用の木材まで用意されている(写真aはさんざん練習した後の木材)。まっすぐな木材を斜めの平面に削る部分と,貝殻の内側のように扇形に削る部分があり,斜めの平面に削る部分についてはすぐに要領を得たが,扇形の部分がなかなかうまく行かなかった。刃先の丸まっている小刀を購入し(写真aの中央付近),これを使ってうまく削れるようになってきた。この日は最低音のキーから開始し,数本を削った(写真b)。かなり時間がかかりそうである。しばらくはこの作業が続くであろう。

a

b

98.7.20

この日も数本削ったが,節のある部分は相当苦労した。その内の一本はノミを使ったのではどうしてもえぐれてしまい,ヤスリで削って平面にするしかなさそうである。これが作業途中の状態で終わってしまった。

98.7.26

途中から方針を変えて,まず全部のキーの斜めの平面に削る作業をやってしまうことにした。キーが左右に曲がっているところ(中音域)では,素直な向きにノミを使ったのでは木目に反してしまってえぐれてしまうところが多く,そのようなところでは普通の場所とは反対の方向に削って面を出しておき,最後にどうしても削れずに残ってしまう部分をヤスリで仕上げるという手順で削っていった。この日までに全てのキーの平面部分を削った。今度は,扇形に削る部分をやり始めた。


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