「ウェザー通り・・・1-53。ここか。」









ばいばい、さよなら





カチ カチ


「ありゃ、チャイム壊れちゃってるよ。」


コン コン


「あっくーん、俺、キヨスミ。」


コン コン


「あっくーん。」


ドアを叩くのと交互に亜久津の名を呼んだ。


ガチャッ


「お、やっと来たか。」


千石は亜久津の足音とドアの開く音がしたので、少しドアから離れた。


チャキッ


「うわぁお。エライ歓迎。」


ドアを開けたと同時に亜久津は千石のオデコに銃を当てた。


「よぉ?何しに来やがった。」


と亜久津がドスを利かせた声で言った。


「んな野暮なこと聞かないでヨ〜。会いに来たに決まってんじゃん?」


と上目使いで言った。


亜久津はクッと喉で笑うと、横に引いて人の通れる道を作った。


「まぁ、入れよ。」


「おじゃましまーす。」






「わー、なんにもないねぇ。」


玄関を入って、突き当たりの部屋に通された、千石の


第一声だった。


確かに、その部屋には、テレビ、小型の冷蔵庫、ソファ、テーブルと言った必要最小限の物しかなかった。


「バーカ、シンプルなんだよ。」


「変わってないじゃん。」


「テメェもな。」


「ねー、飲み物とかでないのー?」


「出るわけねぇだろ。飲みたきゃ勝手に飲め。」


そう言って亜久津はさっきまで自分が飲んでいたんだろうと思われる


グラスに口を付けた。


「まったく、そー言うところも変わってないなぁ。」


と、ブツブツ文句を言いつつも、勝手にキッチンへ行きグラスをだして、水を注ぎ飲んだ。


「ねー、あっくん。」


「あ?」


「今日さぁ、行くとこないんだよね。」


「泊めろってか?」


「ピーンポーン。・・・・・だめ?」



だめなんて言うはずないじゃん


あいつは俺に嵌ってるからね


でも、いちよう聞いてみる。



「好きにしろ。」


「さんきゅーv」









空がオレンジから青紫に傾き始めた。


「ねぇー、あっくんは。まだ、殺し屋やってんの?」


「やらなきゃ喰えねぇだろ。」


と雑誌を読みながら答えた。


「だよねー。 ねー、腹減った。」


「適当に喰え。」


「へーい。」





「ねー、」


ご飯を喰べ終って、ソファに横になって千石が言った。


「あ?」


「しようよ。」


「ナニをだよ。」


「俺を抱きたくない?」


そう言いながら、手で亜久津を呼んだ。


亜久津はその呼びかけに答えて、千石の方に寄って来た。


「抱いてよ、亜久津。」


甘えた声でそう言うと、千石の上に覆い被さった亜久津の頬に


手を滑らせた。


「ねぇ。」


そして、その手を亜久津の頭に回し、ぐぃっと引き寄せ口付けをした。


「しよ。」





「へぇ、素直になったじゃねぇか。」


「っ・・・まぁね・・ぁっ・・人間歳を食えば・・・っそーなるもんよ?・・ぁん」


「口は可愛くないけどな。」


「んっ・・・はぁっ・・あ・・・!」


「まぁ、楽しもうや。」






「つかれたー、亜久津、シャワー貸してね。」


「あぁ。」







「亜久津?空いたよ。」


「ねみぃ。」


「あ、ホントだ。もう、3時なんだねぇ。」


「うるせぇよ、黙れ。」


「はいはい。じゃあ、俺も寝るわ。」


「・・・。」


「ばいばい、おやすみ。」


チャキ


ガゥン        バンッ



「っ・・・」


千石が亜久津の頭を目掛けて、撃ったとの同時に


亜久津は千石の腕を撃った。


千石の弾は、亜久津の頬を掠り


亜久津の弾は、千石の左腕にヒットした。


「狸寝入りかい?亜久津。ずるぃなぁ。」


「まじで寝てたに決まってんだろ。」


と、不機嫌そうに銃を構えた。


亜久津の銃ダークヘルは、かなり大きめでレーザーポインターがついている。


その赤く細い線が千石の頭に刺さる。


「俺が何しに来たか、しってたんだ。」


「当たりめぇだろ。」


「知らないふりしてたなんて、ずるいよ。あっくん。」


「寝込み襲ったテメェに言われたかねぇな。」


「あーあ、知ってたのに、俺を抱いたわけ?」


「もらうもんは、もらっとかねぇとな。」


「俺もナメなれたもんだねぇ。自分を殺しに来た奴抱いて、そのあと眠りこけるなんてさ。


傷付いちゃった。」


「あー、それは悪かったな。」


「償って貰わなきゃね・・・命で。」


ガゥン       バンッ


千石はソファに座っている亜久津の心臓あたりを撃った。


それをソファの後ろに隠れることで交わして、ソファの影から千石の足を撃った。


「っと・・・。」


千石はそれを交わすと、カウンターテーブルを飛び越え身を潜めた。


左腕からはドクドクと鮮血が流れてくる。


耳を澄まし、亜久津の出方を伺う。


亜久津は「守り」などしない、かならず「攻め」てくる。


タッ


走りだした音がした。


バンッバンッ


カウンターを跳び超え亜久津が仕掛けてきた。


ガゥン


千石の弾は亜久津の足を捕らえた。


「ぅ・・・。」


「へへーっ」


亜久津が怯んだすきにカウンターを飛び越えた。


タトンッ


「ナメるなって言っただろ?」


「あぁ、忘れてたぜ。」


バンッ バンッ


ガゥン ガゥン ガゥン


「いっ・・・」


今度は右足と、腹に一発づつ銃弾がヒットした。


ガクッ


足を撃たれた千石は、その場にしゃがみ込んだ。


「げほっ・・・っ・・・はぁ・・・はぁ」


亜久津がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら歩いてくる。


キッ


千石は涙目で下から睨んだ。


「迫力ねぇな。誘ってんのかよ。」


ゲシッ


そう言って、蹴りを入れた。



「ぐぁ・・・っ」


千石はそのまま、後ろへと倒れこんだ。


「さぁて、そろそろおしまいだ。」


倒れた千石に跨って亜久津が言った。


「ゲーム・・・はぁ・・・オーバーってやつ?・・はぁ・・っ」


二ッと笑って言った。


亜久津は千石の右手を踏みつけ、頭にダークヘルを当てた。


「その通りだ。」


「ねぇ、亜久津・・・・。っ・・・はぁっ・・俺はね・・・はぁっ・・・転んでもタダでは起きないよ。・・・はぁっ」


次の瞬間


千石は上がる限り足を蹴り上げた。


ドスッ


「ぐっ・・・。」


それは亜久津の背中に当たり、その隙に千石は亜久津の下から這い出た。


すぐに体制を整え、撃った。


ガゥンッッ


亜久津もダークヘルを構えたが、千石の方がコンマ1秒早かった。


千石の弾は亜久津の体を打ち抜いたのだ。


「ぐぁぁ」





ドサッ


苦痛な叫びとともに亜久津は前のめりに倒れた。


空気が止まったような感じだった。


カシャンッ


千石は何かから開放されたかのように、ブラストを落とした。


「っ・・・はぁっ・・・終わったぁ・・・。」


その後を追うかのように千石もその場に座り込んだ


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


荒い息が部屋に響いた。


15分ほど経っただろう、


千石は、ゆらっと立ち上がり、その場を後にした。




部屋には、無数の薬莢、硝煙、血液の海。




そして、その海の中に浮かぶ昔の仲間。




ばいばい、さよなら




亜久津。










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アトガキ

まず、あっくんファンの方ごめんなさいっっ

てか、殺しちゃうのはまずいかなーっと思ったんだけど、やっちゃいました(汗)

だんだん血なまぐさくなってきたぞ−なんて喜んでいるユウリです。


2002.8.7           ユウリ