医者と昔話しと迎え(前編)
「あ・・もしも・・し?・・・ウェザリーさ・・ん?・・・はぁっ・・・俺、依頼受けた・・・暗殺・・・千石です。
やりま・・した・・・・はい。じゃあ、今から言う口座に金お願いします・・・・・・・」
ガチャン ゴト
千石が使った公衆電話の受話器はあるべき場所に戻されず、
ぶら、ぶらと垂れ下がっている。
「痛っ・・・やば・・・。」
千石は体全体を使って電話ボックスのドアを開け
よたよたした足取りで裏路地に入っていった。
「っはぁ・・・はぁ・・・・」
赤いレンガの塀にもたれ掛り苦しそうに息を吐き出す。
「・・・ぁは・・やんなるよ・・・力はいんない・・・。」
そう言ってずるずる、とレンガに沿うようにして冷たい地面に座り込んだ。
ぽた ぽた
「血・・・?・・なんだ、雨か・・・・うわぁ・・・・最悪・・・っ・・・かも・・・」
傷付いた千石の上に、ぽたぽたと降る雨。
血と雨が混ざり千石の周りに赤い水溜りを作る。
ぱしゃ
千石の前にだれか、人が止まった。
「・・・?・・・・誰・・?」
あれ?目が霞んで良く見えないや
もしかして
「・・・み・・な・・・・・・・・・。」
パシャンッ
千石は意識を手放し、倒れた。
「う・・・ん・・・。」
千石が目を覚ますとそこは、消毒薬のような匂いが充満する部屋だった。
「こ・・・こは・・?」
状況が良くわからないので、とりあえず、起き上がろうとした。
が。
ズキッ
「っ・・・・。」
左腕に痛みが走った。
腕を見ると、そこには包帯がちゃんと巻かれていた。
そして、ほかも見てみると、怪我をした場所はすべて手当てされていた。
「目が覚めたか。」
奥の方から凛とした声が聞こえた。
「え・・・もしかして・・・手塚?」
「そうだ。」
そう言いながら、奥から白衣を着た手塚が現れた。
「ひさしぶりだな。千石。」
「うん・・・でも、なんで?」
「あぁ、たまたま出かけたらお前が倒れていたんでな。」
「・・・ありがとう。」
にこーっと笑ってお礼をした。
ぺタっ
「う?」
手塚は千石のオデコに手を当てた。
「熱は下がったな。」
「熱?」
「あぁ、昨日まで9度近くあった。たぶん、撃たれたところから、きたんだろう。」
「迷惑かけっちゃったね。」
しゅん、と下を向いた。
「気にするな。お前の迷惑は慣れているからな。」
「あ〜、それって嫌味と取っていいのかな?」
「その通りだ。」
「あははー、痛いなぁ。」
「さぁ、もう少し寝ていろ。」
「うん・・・。あ・・のさ」
少しごもごもと言い出しにくそうに言った。
「南か?」
「うん。」
「さっき連絡した。あと、2時間ほどで来るだろう。」
「そっか。また、怒られちゃうな。」
そう言いながらも千石の顔はとても嬉しそうだった。
「それまで、寝ていろ。」
「ねぇ、手塚。」
「なんだ?」
「昔話しよっか?」
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アトガキ
はい、次へ続きます。