読書記録

1999(平成11)年1月〜6月



<凡例>
冊数タイトル出版社
読了日著者初版
評価 コメント

<ジャンル分け>
理工系 人文系 文学 社会・実用書 未分類

No. 30
1999/06/26
バシュラール 科学と詩 現代思想の冒険者たち 05 講談社
金森 修 1996/08/12

あらゆる意味での二面性を内包する人物。
数学・物理から出発し、科学哲学の世界に進み、最後は詩論に至る。
論理的・客観的思考と、直感的・主観的感性の、極めて自然で無理の無い(それ故、奇妙な)融合。
なんとなく、他人とは思えない。

 
No. 29
1999/06/11
童話物語 幻冬舎
向山 貴彦 1999/04/10

いかにも傑作という雰囲気を漂わせていたが、読んでみると大したことはなかった。
ただ、この分量にした勢いは買う。『日蝕』は、この分厚さを見習うべきである。

 
No. 28
1999/06/09
現代思想としてのギリシア哲学 講談社選書メチエ 127
古東 哲明 1998/04/10

「哲学者が何に開眼したか」という観点から捕らえられている点が面白い。

 
No. 27
1999/06/04
黒猫の三角 講談社ノベルス
森 博嗣 1999/05/05

新シリーズ。
瀬在丸紅子と香具山紫子はネタがかぶっている。二人いる必要もないし、ついでに云うなら二人とも必要ない。
小鳥遊練無は、芝姫 つばさ(このコメント、1年後には意味不明になっているものと思われる)。

 
No. 26
1999/05/29
QED 六歌仙の暗号 講談社ノベルス
高田 崇史 1999/05/01

こういうのが新説としてセンセーショナルに話題にならないということは、やはりフィクションなんだろうか。

 
No. 25
1999/05/28
Fragments d'une Poetique du Feu
火の詩学
せりか書房
Gaston Bachelard
ガストン・バシュラール
 

遺稿集。よくまとめたと思う。

 
No. 24
1999/05/21
正念場 ― 不易と流行の間で ― 岩波新書
中村 雄二郎 1999/04/20

そもそも中村雄二郎の著作を読むようになったのは、東京新聞のWebで、この連載を見つけたのがきっかけである。 この内容が気にいって、岩波新書の 『知の旅への誘い』 『術語集』 を読み始めた。

 
No. 23
1999/05/16
大航海 1999 6 No. 28 新書館
ダンスマガジン6月別冊 1999/06/05

久しぶりに人文系の本を読むと、語彙が戻ってくる感じがする。

「増頁特集 知の先端の18人」
収録メンバーは、

  • ポール・クルーグマン(Paul Krugman 1953 - )経済学の現在 〜 野口 旭
  • サミュエル・ハンチントン(Samuel P. Huntington 1927 - )文明の衝突 〜 猪口 孝
  • イマニュエル・ウォーラーステイン(Immanuel Wallerstein 1930 - )近代世界システム 〜 川北 稔
  • スーザン・ストレンジ(Susan Strange 1923 - 1998)国家と経済 〜 本山 美彦
  • カール・ポランニー(Karl Polanyi 1886 - 1964)互恵と再配分 〜 野口 建彦
  • ロベール・ボワイエ(Robert Boyer 1943 - )レギュラシオン理論 〜 山田 鋭夫
  • ベネディクト・アンダーソン(Benedict Anderson 1936 - )想像の共同体 〜 白石 隆
  • ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu 1930 - )文化資本 〜 石井 洋二郎
  • イリヤ・プリコジン(Ilya Prigogine 1917 - )複雑系 〜 安孫子 誠也
  • ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky 1928 - )生成文法 〜 福井 直樹
  • エドワード・サイード(Edward W. Said 1935 - )オリエンタリズム 〜 大橋 洋一
  • ステュアート・ホール(Stuart Hall 1932 - )カルチュラル・スタディーズ 〜 小笠原 博毅
  • ジョン・ロールズ(John Bordley Rawls 1921 - )正義論 〜 金子 勝
  • ソール・クリプキ(Saul A. Kripke 1940 - )可能世界 〜 三浦 俊彦
  • スラヴォイ・ジジェク(Slavoj Zizek 1949 - )ラカン以後 〜 鈴木 一策
  • ジャック・デリダ(Jacques Derrida 1930 - )脱構築 〜 石岡 良治
  • ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze 1925 - 1995)リゾーム 〜 宇野 邦一
  • ミシェル・フーコー(Michel Foucault 1926 - 1984)主体の系譜学 〜 内田 隆三
この中でクリプキが提示するビジョンはまさに「目から鱗」で、もっと著作を読んでみたい。

 
No. 22
1999/05/13
ヒエロニムス・ボス「悦楽の園」を追われて 小学館
中野 孝次 1999/05/10

何年か前、GW中にピーター・ワトソンの 『まやかしの風景画』 を読んだ。
読んだ場所は仙台近郊の田舎町だったが、イングランドを旅している気分になった。
今回、ボッシュの絵を眺めていて、やはり中世に旅した気になった。

「神は細部に宿る」。絵画はやはり細かく見たい。
だから、こういう古典はデジタル化されて、細部を好きなように拡大して見られるような状態になっていて欲しい。

 
No. 21
1999/05/09
エルガーノの歌 ハヤカワ文庫JA
井辻 朱美 1990/10/31

普通の小説が白米だとしたら、この人の小説は調味料のようである。
いろいろアイディアをためていて、書いている最中は楽しかっただろうと思う。

 
No. 20
1999/05/04
時の鳥籠 講談社ノベルス
浦賀 和宏 1998/09/05

前作の登場人物を再登場させて、更にタイム・パラドックスまで起こして、意図的に迷宮構造を創り出し、
かつ、前作以上に推理小説的道具立て(殺人、犯人は誰か、謎解き、探偵役)を無視していて、混乱を増強させている。
まさに、森博嗣が嫉妬しそうな才能。

 
No. 19
1999/04/30
ダブル・キャスト メディアワークス
高畑 京一郎 1999/04/20

いくつかの状態が交互に入れ替わるというアイディアを、前作の 『タイムリープ あしたはきのう』 と同様、ひじょうに上手く生かしている。 青春をやり直したような気になる。

なんとなくOVA化されるような気がする。

 
No. 18
1999/04/23
記憶の果て 講談社ノベルス
浦賀 和宏 1998/02/05

これはちょっと収穫。
reason why の形式にはなっているが、謎解きを主眼にしている訳ではない。
その、外し方が実に巧妙。

 
No. 17
1999/04/12
森博嗣のミステリィ工作室 メディアファクトリー
森 博嗣 1999/03/18

「森先生の作品が読めるのは『森博嗣のミステリィ工作室』だけ」

 
No. 16
1999/04/07
日蝕 新潮社
平野 啓一郎 1998/10/15

タイトルとか内容紹介等から漠然と抱いていたイメージは、やはり当たっていた。
『薔薇の名前』の換骨堕胎。あと5年ぐらい暖めてから出すべきだったと思う。
一応勉強しているようなので、好感は持てる。

芥川賞の選者は誰も指摘していなかったが、文章のリズムがひじょうに心地よい。
この一点はもっと評価していいと思う。

「三島由紀夫の再来」というのはちょっと云い過ぎ。
『巡礼たちが消えていく』と同レベルぐらい。

 
No. 15
1999/03/26
量子力学 放送大学
阿部 龍蔵/川村 清 1983/03/20

こちらはオーソドックスな教科書。
数式が整然と並んでいて、ひじょうに心地よい。
これを見てはじめて、大学教養部の数学が、物理のための前座に過ぎないことがよくわかった。

 
No. 14
1999/03/23
量子力学入門 岩波新書
並木 美喜雄 1992/01/21

観測問題という認識論テイストなテーマを、職人的な実測技術で検証していこうという態度は、
私にはほとんどついて行けない。というか、根本的に肌に合わない。

犀川・萌絵は、量子力学をどう理解しているのか?

 
No. 13
1999/03/18
オタクの迷い道 文藝春秋
岡田 斗司夫 1999/03/20

よく飲み屋なんかで、

―― 田中美佐子と一晩過ごせるなら、100万払ってもいい
―― だったら、俺は中山美穂だ
などと、酔っぱらったおやじが、喚いていたりするが、
一番最後のページの楽譜のデュエットの相手の名前を見て、
「結局彼女も、そういうレベルの存在なのだ」ということを思い知ってしまった。
(まさに、読まないと意味不明のコメント。読んでいても意味不明か?)

 
No. 12
1999/03/13
名棋士81傑 ちょっといい話 講談社+α文庫
原田 泰夫 編著 1998/12/16

まさに古き良き時代の、伝説のままの棋士像

 
No. 11
1999/03/05
念力密室! 講談社ノベルス
西澤 保彦 1999/01/08

トリックではなく、状況解読(動機とも少し違う)の面白さ。
『幻惑密室』 『実況中死』 より先にまずこれを読むべき(ちゃんと、順番どおりに出して欲しかった)。

 
No. 10
1999/03/04
地球儀のスライス 講談社ノベルス
森 博嗣 1999/01/08

『まどろみ消去』は、作者の趣味と読者の趣味の開きがあったが、今回はよい。
『小鳥の恩返し』『素敵な日記』『河童』『気さくなお人形、19歳』、どれもよい。
萌え萌えシリーズ2作は少し低調。

 
No. 9
1999/03/04
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 新潮文庫
村上 春樹 1988/10/05

SFとかミステリーという訳でもないが、純文学という程深くもない。アメリカンな小説。
誤解を恐れずに云うなら、ファンタジーだと思う。

「世界の終り」

「私には心がどういうものなのかがよくわからないの。
 それが正確に何を意味し、どんな風に使えばいいかということがね。
 ただことばとして覚えているだけよ」
「彼女」は「綾波」か?

 
No. 8
1999/02/22
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 新潮文庫
村上 春樹 1988/10/05
 
 
No. 7
1999/02/06
中国人郵便配達問題=コンピュータサイエンス最大の難関 講談社選書メチエ
西野 哲朗 1999/01/10

前作 『量子コンピュータ入門』 の入門書。
シミュレーションでかまわないので、実物が見たい。

 
No. 6
1999/01/29
BRAIN VALLEY 下 角川書店
瀬名 秀明 1997/12/05

紛れも無い傑作なのだが、残念なのは、よくも悪くも科学者によって書かれた小説である、ということ。無駄が無さ過ぎる。
伝えたいことを正確に伝えようとするあまり、無駄が無くなってしまう。それで正確に伝わる分はよいのだが、それ以上広がらない。それは、読む側の想像力の欠如、というよりも、やはり、読者の努力を、より内容を正確に読み取ろうとする方向に導いてしまう文体に原因がある。
凡百の小説など足元にも及ばないほどの傑作なだけに、その一点でレムになり損ねてしまったところが惜しい。

[上]186ページの、裏表のパジャマ、脇についた茶色のドロリとしたもの、 は、いったい何なのか?

 
No. 5
1999/01/22
BRAIN VALLEY 上 角川書店
瀬名 秀明 1997/12/05
 
 
No. 4
1999/01/17
電撃hp メディアワークス
創刊号 Volume 1 1999/01/15

「高畑京一郎 待望の新作」という惹句にひかれての衝動買いだったが、 そんな衝動を起こさなければよかった。

 
No. 3
1999/01/16
中世神話 岩波新書
山本 ひろ子 1998/12/21

「天地開闢」「国生み」「天孫降臨」等のキーワードに惹かれて買ったが、あまり期待していた内容ではなかった。
こういうのを元ネタにして、ああいう話を作り出す諸星大二郎は、つくづく偉いと思う。

 
No. 2
1999/01/11
プレゼント 中公文庫
若竹 七海 1998/12/18

『小説TRIPPER 1997冬季号』を読んだ時にも思ったのだが、 なんだか、すれたイヤなおばさんになってしまった。

 
No. 1
1999/01/08
QED 百人一首の呪 講談社ノベルス
高田 崇史 1998/12/05

百人一首の中に何かが隠されている、というのはこの人が初めてではない。
しかし、曼荼羅と重ね合わせる、という発想はこの人が初めではないかと思う。

別にミステリーでなくてもよかった。
百枚、百一枚の配列にどのようにして到達したのか、及び隣合う札の間にどのような関連があるのかを、 詳しく、かつ、ミステリーではない形式で書いて欲しい。



読書記録 1998
(平成10年)7月〜12月
『枕草子*砂の本』 読書記録 1999
(平成11年)7月〜12月

E-mail : kc2h-msm@asahi-net.or.jp
三島 久典