2003年
六本木カオス
タマちゃんとイラク戦争

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六本木カオス

六本木ヒルズにオープンした森美術館に行ってみた。 ビルが建っているだけなのかと思っていたのだが、ほとんど新しい街が出来ているような感じだ。54階建ての森タワーを中心として周囲にいくつかの建物が建っている。街のように感じるのは居住区域がいくつかの建物に分かれて建っているからだろう。

ハイテクの駐車場に驚嘆させられながら車を置き、ビル内を探検する。駐車場で受け取った六本木ヒルズの地図を見るが複雑でよくわからない。建物が分散していることもあって、結構複雑だ。まさしく探検するという感じ。そのためか、案内のための係員が多い。建築費もかかっているだろうけど、維持費も相当な金額になっていそうだ。日本の失業率の改善に六本木ヒルズは一役買っていることは間違いない。

森美術館は森タワーの52、53階にある。ようやく、ここに登るエレベータを見つけ、一気に登る。
六本木という場所柄か、美術館も普通ではない。
ここでは「ハピネス」と題した展示をやっていたが、これは「アルカディア」「ニルヴァーナ」「デザイア」「ハーモニー」の4つのテーマに分け、それぞれのテーマに沿った作品が日本、アジア、西洋、現代アートなど区別されること無く展示されている。水墨画のとなりには、油絵があり、仏像があると思えば、ただの真っ白な絵にしか見えない現代アートもある。春画まであったのにはびっくりだ。
それに、映画を上映できるブースが途中いくつもあって、そこで芸術家の撮った映画が上映されていた。全部見ていたら、それこそ1日かかっても見終わらないかもしれない。
この美術展の状態を芸術のカオスなどと呼んでみても良いのだが、イスラム圏の人の作品がなかったのが物足りない。これを除外しては世界のハピネスには繋がらない。

中でも一番見たかった伊藤若冲の鳥獣花木図屏風は一番最後のテーマ「ハーモニー」にあった。六曲一隻の屏風に白い象、虎、ロバ、鹿、ゴリラ、らくだなど様々な動物が描かれている。その描き方に特徴があってタイル画を直接屏風に描いたような感じだ。写真で見ていたときはただ縦横に細かい線を引き、できた升目の中を塗り潰したモザイクの表現なのかと思っていた。やはり実物を見なければわからないもので、ただのモザイクではなく明らかにタイル画を意識している。それに描かれているのが亜熱帯の動物ばかりという点も面白い。
展示の最後は禅画の円相でしめくくられていた。
美術館を出て下に降りてみるとすっかり日が暮れていた。見上げると、森タワーはまったくSFチックで最上階はかすんで見えない。思わずケータイのカメラで撮ったのが上の写真。

(2003/12/1)

タマちゃんとイラク戦争

先日、帷子川に住むあごひげあざらしのタマちゃんを北に帰そうと捕獲を強行しようとしたグループがいた。本来の生息地ではないから自分達で帰してやるのだというのがその理由なのだそうだ。この話を聞いたときに非常な違和感を感じた。人間はそんなに偉い存在なのだろうかと。Asahi.comで行った調査では75%近くが自然のまま見守った方が良いと回答した。共感できる日本人が少数であることを示している。
もともと日本人は自然の中に住み、自然と共生してきた。そして八百万の神々に感謝しながら生きてきた。八百万の神々とは山であったり石であったり川であったり動物であったり植物であったりする。それはつまり自然そのもののことである。
自然が一番だと口走る日本人は今も多い。 宗教を持たなくても家を立てるときも土地の神に祈り、正月には神にお願い事をし、また神への感謝という意味合いは忘れられているかも知れないが祭礼も行う。それは日本の神が宗教というよりは自然そのものであったためではないだろうか。
それに日本人は昔から漂泊する旅人にあこがれた。古くは西行しかり、中世では松尾芭蕉しかりだ。現代では(ちょっと古いが)とらさんということになろう。タマちゃんも漂泊する旅人としてうらやましく思った人も多かったのではないだろうか。
ところで、記者会見で彼らは欧米ではこのようにするのだと答えていた。本当に欧米でそうなのかは知らないが、確かに欧米の論理であるという感じがする。 世界中に植民地を作り、もともと住んでいた人々は自分達よりも程度の低い人間だとみなし、殺戮し支配した。江戸時代だった日本も欧米の植民地主義によって太平の眠りを覚させられた。特にイギリスが当時の中国である清にしかけたアヘン戦争の様子を見て、非常な恐怖を感じ、これが明治維新の原動力となった。
今のイラク戦争の論理も、イラク国民を独裁者から解放できるのは自分達だけなのだという論理で攻撃を行っているようだ。だから、イラクの人々はフセインにも反発するが、進駐してきたアメリカとイギリスの軍隊にも不快感を表しているのだと思う。
里や山で自然とともに生活していた日本人は、人間よりも自然の方が偉いのだということを知っていた。現代社会を生きる上で昔の日本人のように長いものに巻かれるのが良いとは思わないが、欧米流のなんでも力で解決するのが良いとも思わない。
せめて皆が一歩ずつ引いたら不幸な人が減るのではないかと思うのだが。

(2003/3/31)

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