磐座(いわくら)を祀る古社・日吉大社

  比叡山を降り、日吉大社へ向かう。到着したのは夕方、4時半頃だった。鳥居の上が三角に結ばれる山王鳥居をくぐると、受付があって入場料を払った。境内に入るのにお金を払う神社はいままでここ以外には談山神社でしか経験したことがない。
日吉大社は東本宮と西本宮に分かれている。東本宮がもともとこの地にあった神社で、すぐ裏手にある八王子山を神体山とする。一方、西本宮は天智天皇が大津京遷都にあたって、奈良の三輪山から大己貴神を勧請し祀ったとされている。
その後の神仏習合で比叡山の護法神となり、山王権現と称されるようになり、延暦寺の僧侶が朝廷に強訴するときには、日吉大社の神輿が担ぎ出されるなど、比叡山と密接な関係となっていく。

始めに、西本宮へ参った。途中、境内に磐座がいくつも祀られていた。西本宮から東本宮へ向かう途中、沢蟹が歩いているのを見つけた。境内を流れる清流から出てきたのだろう。
東本宮に参拝する。東本宮本殿に祀られるのは、大山咋神(おおやまくいのかみ)。その手前には東本宮本殿とは90度右を向いた樹下宮がある。祀られるのは鴨玉依姫神(かもたまよりひめのかみ)。神体山の八王子山の方向を向いているのは樹下宮の方である。東本宮はどこを向いて鎮座しているのかよくわからない。樹下宮には下殿と呼ばれる床下があり、御神座の下に霊泉があって水をたたえているという。樹下宮の神は明らかに水の神である。
八王子山には、三宮宮と牛尾宮が建ち、巨大な磐座がある。三宮宮に祀られるのは、鴨玉依姫神荒魂であり、樹下宮の神と別の性格を持つ同一神である。牛尾宮の方は大山咋神荒魂で、東本宮本殿の神と同一神である。東本宮本殿はあらぬ方向を向いているが、やはりこの八王子山の神を祀っている考えて良いようである。
東本宮本殿に参ると正面にアマガエルが山の神のもとで安心しきったようにして貼り付いていた。

日吉大社を出て京都に向けて車を走らせる。途中、穴太(あのう)の集落を通った。穴太は石積みの技術者集団が住んでいた。大小取り混ぜての石を巧みに積み上げるのを得意とした。このあたりの城や神社仏閣では穴太の衆による穴太積みと呼ばれる石積みが多く残されている。 山科を経由して京都の宿に戻った。
宿のすぐそばには古川商店街という古くからある下町情緒の残る商店街がある。この宿に泊まるときによく利用させてもらっている。今日の夕食はそこの惣菜にすることにして、出かけてみた。うれしいことに、以前と変わらず商店街は残っていた。入り口の八百屋、ミニスーパー、パン屋、総菜屋、魚屋などいろいろな店がある。阪神優勝の余波でここでも阪神タイガースの歌がエンドレスで流されていた。惣菜を探していろいろな店を見るが、目移りする。6時を過ぎると店じまいする店が出始める商店街なので、急いで総菜を選び、宿に戻った。


日吉大社の山王鳥居

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