2001/10/19

平等院

   寺の担当者と名刺交換する。今回の取材を通して名刺を貰ったのはここだけだった。肩書きには学芸員とある。
 新しくなった宝物館に入るのは2度目だ。中にあった十一面観音はこれといって特徴がないのだが、なぜか気になった。その隣の地蔵菩薩は体が右に傾いている。どちらも一木造りの像だ。一木造りとは一本の木からそのまま像を作るもので、霊木信仰と関係がある。始めの十一面観音が気になったのも、この霊木の力が引き寄せたのかもしれない。
 庭に出てびっくりした。鳳凰堂と反対側の池の端に立つと、その向こうに大きなマンションが立っているのが目に入ってしまうのだ。以前はなかった。おそらくそのマンションは平等院が見えるマンションということを売りにしたに違いない。住む人にとってはいい景観を手に入れて喜んでいるだろうし、そんなところに住めたら自分もうれしいと思う。しかし、それによって大事な景観は確実に破壊される。
 嵯峨野でも同じようなことを感じた。さすがにマンションはみなかったが、もともと田んぼや林だった奥地にも新しい家が建っている。建て売りらしい建築中の家もあった。もともと地元に住んでいる人が自分の家を建て替えるのであれば、しかたがない。外部の人間がとやかく言うことはできない。しかし、新しく建つマンションや建て売りの家に住むのは、地元以外の人間だろう。こうした場所は日常とかけ離れているからこそ価値がある。だが家やマンションが建つことで、確実に景観は悪化する。それは訪れる人にとって不幸なことだ。同時にそれは、そこに住む人にとっても不幸なことだと思う。いい場所に住みたいと誰しも思う。だが、その欲求も無制限に果たしていいものではないということを宇治と嵯峨野にきて思ったのだった。

宇治上神社

   宇治川を渡り宇治上神社へ行く。「足をのばす」用の写真を撮影する。神社建築としては日本最古の本殿を持つ。境内には宇治七名水の一つが湧き出している。
 順調に予定をこなしているので、今日は早めに宿に帰る。

境内には湧き水が湧き出ている。

前へ | 6/16 | 次へ
始めに戻る