2001/10/17

鞍馬寺

   朝から雨。車で鞍馬山へと向かう。門前の駐車場に車をとめ、駐車料金を払ったところ、おつりと一緒に佃煮を差し出された。サービスなのかあるいは、一種のお接待なのかもしれない。どちらにしてもありがたくいただく。
 以前、ここを訪れたときは貴船神社から鞍馬山を上り、木の根道を通って鞍馬口駅のあるこちら側に降りてきた。今回は、こちらから登る。まず、ケーブルカーに乗り込む。ケーブルカーは山の急斜面を這いつくばるようにして登っていく。平日でしかも雨の朝。鞍馬山に登る人はほとんどいない。
 ケーブルカーを降り、朱の灯籠が立ち並ぶ山肌に沿った細い道を歩いていく。湿った冷い空気が心地よく肌を撫でていく。本では紹介できなかったが、途中に天法輪堂というお堂がある。ここには阿弥陀如来が安置される。大きな像なのだが、畳に座って見上げると胴体から下は祭壇に隠され、顔だけが見える。あたかも山越え阿弥陀が出現したかのようだ。
 金堂には現在の鞍馬寺の本尊である鞍馬山尊天が祀られる。尊天とは千手観音、毘沙門天、魔王尊を合わせ、三身一体となった存在のことを言う。寺で貰うパンフレットなどに宇宙エネルギーなど仏教では聞かない用語が使われているのは、昭和22年に作られた鞍馬弘教が現在の鞍馬寺を管理しているためだ。
 その隣の建物の光明心殿には天狗のような像が祀られている。背中には翼があり、右手を腰に当てて、杖を左手に持つ。ただし、普通の天狗ほどには鼻は高くない。
 その奥に目的の霊宝殿がある。ここの3階に毘沙門天や聖観音が安置される。この3階の畳敷きの部屋は結構好きなのだ。ほとんど人がこないので、座ったり、ねっころがったりしながら心ゆくまで仏像を拝むことができるのだ。もちろん監視カメラはあるようなので、あまり変な格好はできないが。

奉納された虎の絵。
明治40年の日付が入っている。

  東寺

 
   鞍馬寺から一気に東寺へ向かう。朝から降っていた雨は東寺に到着した頃はやんだ。雨に濡れた境内のしっとりした感じがいい。いつものように講堂と金堂を拝観する。このお堂の中の香とほこりの混ざったようなにおいが好きなのだ。この臭いを嗅ぐたびに、この寺や仏像たちの長い歴史に思いを馳せてしまう。秋の特別公開で開いていた宝物館にも行ってみる。2階には以前と変わらず巨大な千手観音と兜跋毘沙門天が立っていた。今回始めてみるものに、蓮華蒔絵常香盤というものがあった。蒔絵の付いた香箱で、中にはじぐざぐに溝が付けられている。この溝に香木の粉を入れ、板で押し込んでいく。これに火をつけることで一定の時間の間、香が焚けるという仕組みだ。おそらく時計代わりにもしていたのではないだろうか。この香木の粉を板で押し込む作業をお寺の人がちょうどやっていた。最後に火を付けて、お香を焚いてくれるのかと思ったが、作業を終えるといなくなってしまった。もう閉館時間なので、明日のためにやっていたらしい。
 宝物館を退出して宿に戻る。

東寺の食堂(じきどう)。

  古川商店街

 
   宿の近くに、古川町商店街というレトロな商店街を発見した。八百屋、魚屋、総菜屋など、全部で10数軒ほどの小さな商店街だ。昔はどこにでもあったような商店街で、タイムスリップでもしたような感覚におそわれる。一軒ずつの店を覗いて見るだけでも楽しい。6時から7時の間にどの店も閉まってしまうようで、歩いているとあちらこちらでシャッターを閉める音が聞こえてくる。あわてて晩ご飯用の総菜を購入。

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