古佛の穴

大日如来
日如来は密教の根本仏です。密教とは仏教とインド土着の呪術的しきたりが混ざりあったものです。その系統には大日経と金剛頂経の二つの経典に示されるように二種類あり、インドから来たこれら二つの流れを合体させたのが中国・長安の青竜寺にいた恵果でした。更にそれを完成させたのが、この恵果からすべてを受取り、日本に持ち帰った空海です。
密教では曼陀羅という図を描きますが、この曼陀羅も、この二つの経典に合わせて二種類の図が描かれます。大日如来の印相も同様に二種類あります。 大日経の思想を現したのが胎蔵界曼陀羅で、金剛頂経の思想を現したのが金剛界曼陀羅です。
胎蔵界曼陀羅は、母親の胎内に眠る胎児のように人間が本来もっている仏性の種子が、仏の慈悲によって目覚め、育ち、花を咲かせ、悟りという実を結ぶという過程を描いたものとされています。仏性とは仏になる性質のことです。誰もが悟りを得る資格があるということであり、その過程を示したものということです。
胎蔵界曼陀羅の中心には中台八葉院と呼ばれる八葉の蓮華をかたどった図が描かれています。その中台八葉院の中心には、大日如来が描かれ、各八葉の花びらには四仏、四菩薩が配置されています。中台八葉院の中心は、胎蔵界曼陀羅の中心のことであり、すなわち、大日如来がすべての中心となっています。
図の上が東、下が西、右が南、左が北を表します。 中台八葉院の回りには更にさまざまな仏が配され、合計409尊が描かれています。仏教創始者の釈迦如来は大日如来のいる中台八葉院の上(東)に配されています。あくまで大日如来が中心であり、釈迦如来はその外側にあるという点が密教の特徴をよく現していると思います。

胎蔵界曼陀羅が仏の大悲の心が人間世界に開いていく過程を見せるのに対して、金剛界曼陀羅は、人間のこころの働きが、仏へと届く過程を表現しているとされます。 金剛界曼陀羅は、9つの正方形にわかれているので、九会曼陀羅とも呼ばれます。
中心の正方形が成身会(じょうしんえ)と呼ばれ、正方形の中に大円が描かれ、更にその内部が縦横5つに区切られて正方形となり、その正方形の内部に内接するように中円が描かれその円の中に5つの小円が配置されます。中心の小円に大日如来が描かれ、その回りの小円の4如来が大日如来を囲みます。更にその外側の中円にも五体の仏が描かれ、4つの中円がこの小円を囲む形となっています。さらに、その外側の大円にもそれぞれ同じような構成が繰り返されます。これは、現代科学がもつ宇宙観にも通じるものがあります。

大日如来 大日如来の印相にもこれら2つの考え方に相応して2種類あります。胎蔵界大日は左右の手を組み合わせ組んだ足の上に載せる法界定印を結び、金剛界大日は左手の人指し指を右手の手で覆う智拳印を結んでいます。

 

必見の大日如来
京都・教王護国寺(東寺)

仏像の配置によって曼陀羅を表現した立体曼陀羅が東寺の講堂にあります。
講堂内に3つの基壇があり、そのうちの真ん中の基壇は、如来部でその中心に大日如来が座っています。そして、その真ん中の基壇の四隅を宝生、阿弥陀、不空成就、阿閃(あしゅく)(しゅくの字は本当は門構えの中に人が3つ)如来の四体が大日如来を囲んでいます。
また、正面から見て右側が菩薩部で、中心が金剛波羅密多で同じように四体の菩薩が取り囲んでいます。左側は明王部で中心が不動明王です。こちらも同じように四体の明王が取り囲んでいます。
更に講堂内の四隅には持国天、増長天、広目天、多聞天の四天王が配され、講堂の左右の端には帝釈天、梵天が置かれています。
合計すると21体あり、その数の多さときらびやかさと、各仏像の動きのあるポーズは、講堂に入った者を圧倒します。

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