私はわるーい女なのです。
十二、三で男を知り、十五の年にはカフェーへ出て、旦那がつき、情夫をこしらえ、
夜ごと紅灯の巷で酒と色と媚を売り、客を搾って朋輩を苛め、上等のお客は横取り
し、博打と役者買い、金につまると枕探しをして見つかったら出刃を振りかざす、そ
ういうわるーい女なのです。
そのつもりで、派手な銘仙に派手な半襟、真っ赤な腰巻き、そういうなりで上記の
わるーい女のつもりで歩いていると、「お着物ね、いいご趣味」なんぞと言われたり
してがっくり来る。それはちょうど歌舞伎座へ行くのに、「あらまーあ、お若いのに、
(そんな若くもない)歌舞伎を?偉いわ、立派ねえ」と言われるようなものだ。だい
たい役者が偉くなりすぎなんだ。
まあそれはおいといて、着物にまつわるそういった抱腹絶倒の誤解、はたまた決め
付け、エピソードなんかを初心者の着物行状記とともに記していくコーナーです。ど
うぞご愛顧のほどを宜しくお願い致します。
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大正、昭和初期の古い着物とその着こなし。及ばずながら日常に於て、
真似してみませう。着て出かけませう。