ご存じダルジール&パスコー・シリーズの新刊です。前年は『幻の森』と『完璧な絵画』という2作品が刊行されましたが、前者は、ミステリとしてはいささかパスコーの内面に重点が置かれすぎた感があり、後者はミステリとしては完成度が高いものの内容が番外編的、とそれぞれちょっぴり物足りない部分があったのですが、この作品は、本流(本筋)にして完成度の高いミステリ。
ファンには納得の一作です。
ダム建設のため水没する村。水没間近の村で、何件かの少女失踪事件が起きる。何年も経っていま、また少女の失踪が……あの悪夢の再来なのか、と事件が展開していくのですが、村の人々を活写しつつ、ダルジール、パスコー、ウィールドらレギュラー陣を絡めていく手法は堂にいったもの。作品に貫禄が出てくるとミステリ的な仕掛けが流されがちになるものですが、そんなことがないのがこのシリーズです。安心してお読みください。
そしてパスコーファン的にも! この作品は見逃せません。
いろいろ……最後の最後まで。ある意味、胸キュンものでした。
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