JMAI2001

インターネットで選ぶ日本ミステリー大賞 2001
Japan Mystery Award on Internet 2001

東風
(実行委員のはしくれ)
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『タイトル』
著者名 投票得点
西暦535年の大噴火
デイヴィッド・キーズ著 +4点

「今年は絶対JMAIを開催してもらわなきゃ!」と思わせた一作。
ノンフィクションで、世界中に残る西暦535年前後の異変の伝承に注目し、そのときいったい何が起きたのかを探ったものです。
古代史にも地学にも関連したなかなか興味深い著作です。

これ、じつは邦題が思いっきりネタバレしています。原題は"Catastrophe"、直訳すれば「大災害」。この本は、世界各地について535年前後がどうだったか、その土地が、その後どのような歴史を歩むことになったかという事実を積み重ね、535年にその後の世界の歴史を変える大災害があったのだという結論に至ります。
そして、それは何か……と特定していくのですが、本全体の過程は正攻法な謎解き、ミステリそのもの。だからJMAIの投票対象でもある、と確信しています。

とはいえ、推理の結果は、邦題にしっかり書かれていたりして。
もっともこのタイトルでなきゃ、じぶんが読む気になったかどうかわからないし(古代史に関心があるので読んだのです)、営業的には難しい判断だったのだろうなぁとも思いますが……うーーん。

内容的にも興味深いことはいろいろあるのですが、それはまあ、ミステリとはちょっと外れるので略。日本も登場します。
古代史にちょこっとでも興味のある方、地学に関心のある方はぜひ手にとってみてください。古代日本というと中国と比べてしまって「文化の遅れた国」というイメージだったのですが、文字があって自国でも文献を作っていた点で、世界的にはかなり進んだ国だったのだ、と改めて思いました。道理で、いまでは何千万という人がミステリを読み楽しんでいるわけです。納得。

ベウラの頂
レジナルド・ヒル著 +4点

ご存じダルジール&パスコー・シリーズの新刊です。前年は『幻の森』と『完璧な絵画』という2作品が刊行されましたが、前者は、ミステリとしてはいささかパスコーの内面に重点が置かれすぎた感があり、後者はミステリとしては完成度が高いものの内容が番外編的、とそれぞれちょっぴり物足りない部分があったのですが、この作品は、本流(本筋)にして完成度の高いミステリ。
ファンには納得の一作です。

ダム建設のため水没する村。水没間近の村で、何件かの少女失踪事件が起きる。何年も経っていま、また少女の失踪が……あの悪夢の再来なのか、と事件が展開していくのですが、村の人々を活写しつつ、ダルジール、パスコー、ウィールドらレギュラー陣を絡めていく手法は堂にいったもの。作品に貫禄が出てくるとミステリ的な仕掛けが流されがちになるものですが、そんなことがないのがこのシリーズです。安心してお読みください。

そしてパスコーファン的にも! この作品は見逃せません。
いろいろ……最後の最後まで。ある意味、胸キュンものでした。

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