タイトル |
著者名 |
投票得点 |
『永遠の仔』 |
天童荒太著 |
+4点 |
ミステリの形式を使って「家庭の悲劇」を描いたといえばロス・マクドナルドだが、彼に通じるものがある作品だと思う。というのもこの作品、事件の構造が異様なまでに手堅く図式化されているからだ。ただし、事件の全貌が明るみになった瞬間の虚無感は、マクドナルドのそれとはやや異質。これはきっと、「当事者」だった3人と、事件の観察者であるリュウ・アーチャーとの違いだろう。
それはさておき、ミステリを出版することに関して、版元はかなり無神経だと思う。少なくとも後半にならないと判明しない主人公らの過去を上巻見返しに書いてしまうのはどうかと思う。あれを伏せていれば、読者への「引き」もかなり強くなっていただろうに。というわけで、未読の方はあの余計な見返しを見ないようにしましょう。 |
『象と耳鳴り』 |
恩田陸著 |
+3点 |
謎解きそのものよりも、謎を解いた後の虚無感ないしは居心地の悪さといったものが中心になっているような気がする。 |
『柔らかな頬』 |
桐野夏生著 |
+3点 |
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『T.R.Y.』 |
井上尚登著 |
+3点 |
舞台設定その他、描き方が巧みではある。その巧みさに溺れている部分もなくはないが。 |
『バトル・ロワイアル』 |
高見広春著 |
+5点 |
林真理子が技術的な理由以外の点である小説を批判した場合、その小説にはとりあえず目を通したほうがよい、ということを明らかにした作品。「これはホラーではない」とする意見はうなずけないこともないが、背景となる異様な「もう一つの日本」が、実は「この日本」とたいして変わらない、という事実にはちょっと恐怖を感じた。 |
『クリムゾンの迷宮』 |
貴志祐介著 |
+4点 |
表面的な展開は『バトル・ロワイアル』とかぶっているけど、それぞれの場面の迫力という点で、やはりこの人は巧い。不条理なシチュエーションもかなり楽しめたが、結末はやや強引に感じた。無理に解決をつけようとする癖は何とかならないのだろうか... |
『青の炎』 |
貴志祐介著 |
+3点 |
けっこう哀切な話ではある。いままでの作品にあったような強引な謎解きもなかったし。とはいえ、伏線の張りかたはあいかわらずぎくしゃくしている |
『quarter mo@n』 |
中井拓志著 |
+5点 |
怪物よりも役所が恐い怪作『レフトハンド』の印象が強かっただけに、ずいぶんマトモな話を書くなあ、というのが最初の印象。中学生を異質な生き物として描ききってしまうという方法論を、ネットワークという素材を軸にして、読者に受け入れさせることに成功している。
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