ウインタースポーツのファンにとっては心躍る季節です。北海道で生まれ育ち、学生時
代、スキーに打ち込んだ私もその一人。「スキーがうまければ女性にもてる」という神話
がウソなのは私が身をもって証明していますが、「パウダースノーをけたてて、さっそう
とシュプールを描けたら」との夢はだれもが抱くはずです。そこで、白馬・岩岳スキース
クールの元指導員で、全日本スキー連盟基礎スキー技能テストで最高位のクラウン・プラ
イズの資格をもつ私が、上級者にも意外と知られていない上達のための五つの必勝ポイン
トを近畿新聞読者だけにお教えします。
(1)基本はやっぱりプルークボーゲン
最初に覚えた「八の字」姿勢は今も万全ですか? 「イエス」と答えた人は、きっとウ
ソつきです。私は今もマスター出来たとは思っていません。プルークの姿勢がうまく出来
ていたら、ちょっと体重をかけるだけで自然にターンできます。大切なのは、両足と左右
のスキーがそれぞれ、きれいな二等辺三角形になっていることです。うまくターンできな
い人は三角の形がいびつになっていませんか。
(2)両腕は“曙のまわし”を抱えるつもりで
基本姿勢としてイメージしてほしいのは、やじろべえ。バランスよく、手を大きく広げ
ています。初級者はひじを曲げたり、肩がガチガチになりがちです。大きなおなかの関取
と四つに組むように、ゆったりと構えると、上体が安定します。さらに両方のストックの
先がいつも雪面に触れていれば言うことはありません。
(3)下半身はひざよりも足首を曲げよう

(4)スキーを閉じられないなら閉じなくてもいい
スクールの講習生から一番多く質問されたのは「パラレルターンを覚えたいんですが、
どうしたら足をくっつけて滑ることができますか」ということでした。「くっつけないの
が一番いい」というと、みんなポカンとした様子でしたが、ものは考えようです。どんな
状況でも上手なプルークボーゲンで滑れるようになることが先決です。
プルークにしたスキーの幅を、最初は広くても段々と狭くしていけばいいのです。「パ
ラレル」とは「平行」という意味で、無理をして「くっつける」ことではありません。乱
暴な言い方ですが、限りなくパラレルターンに近いプルークボーゲンをすれば、百メート
ル下にいる人にはだれもプルークとは気づかないはずです。やがては本物のパラレルター
ンにも近づくでしょう。
足を広げ、ゆったりとしたスタンスで滑る「ブライト」(英語ではブロード)は現在の
日本のスキー界でも主流です。「足を開く方が安定する」というのが私の実感でもありま
す。
(5)易しいことから始めよう
緩い斜面から急斜面▽短い距離から長い距離▽粉雪からザラメやアイスバーン▽整地斜
面からコブ斜面や新雪・深雪――という具合にステップを踏み、無理せずやってみてくだ
さい。一方、斜面などの条件をいろいろと変え、できる範囲で幅広い技能の練習をするこ
とも効果的で、反復練習だけよりも早く上達します。
× × ×
このほか、長距離ドライブなどで疲れているのに滑ったり、準備体操もせずにゲレンデ
に出たり、酒に酔っての滑走は問題外です。岩岳スキー場では、東京から徹夜でドライブ
して到着後、すぐにリフトで山の一番上まで登って滑走し、三十秒後に転倒して大けがを
したという初心者のスキー客もいました。最低限の心得を甘くみると、ひどい目に遭いま
す。