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餌釣り
 今回、餌釣りは、とかくルアーに隠れて地味な存在だったが、我が会では最も伝統的な釣法。釣れないわけがない、というわけで餌釣り編をご紹介しよう。シュンベツ川クラスになれば、6.1m以上の長い竿に長い仕掛け、そして大物釣りの究極の餌・ドバミミズならば、バンバン釣れる。まして雨で濁ろうものならば、50センチ以上の大物でも夢ではないだろう。ただし、増水は半端じゃないから命がいくらあっても足りないだろうが・・・。

 上の写真は、長谷川副会長のドバミミズに食らいついた一尾。メスで顔は小さいが、36.5cmあった。
 餌は四季を問わず、どんな条件でも必ず釣れる。ルアーやFFが苦手な小沢や藪だらけの沢でも簡単に釣れる。例え濁流になっても、はたまた夜でも釣れる。餌を忘れても、川虫やトンボ、クモ、バッタ、サンショウウオ、川に落ちている虫、果てはガやチョウなど現地採集可能なものは何でも餌として使える。山で死なないためにも、最低限これだけは覚えておいて損はないと思う。ただし、いくら釣れるからと言っても、無用な殺生はしないことが肝心だ。

 ルアーフィッシングの世界では、釣りは「ゲーム」と称する言葉がやたら目に付く。私はこの考え方に大いなる疑問を持っている。そもそも渓流の宝石をゲームの道具と考えることじたい、私には理解できない。キャッチ&リリースという奇麗事を免罪符に、ただネイテイブな渓魚たちをいたぶっているだけ、といった誤解を生みやすい。さらに言うならば、自然との共生どころか、人間も自然の子であることをすっかり忘れた愚かな生物、それは文明崩壊の兆しではないか、といった漠然とした不安を感じる。神が宿る自然界では、下界から食べ物を全て背負ってきたとしても計画通りに帰れるとは限らない。名誉も金も飽食も・・・全く無縁な世界だ。そんな神聖な場所に分け入り、草木一本折らず、魚一匹も殺さない釣りなど存在するはずがない、と思うのだが・・・。泥臭い人生を歩んできた者は、こうした奇麗事を聞くと常に疑う習性が抜けないからだろうか・・・。

大淵でドバミミズにヒット
 岩陰に隠れ、狙ったポイントへ静かに餌を振り込む。針と糸だけの原始的な仕掛けだが、大きなドバミミズに食い付き、自分の穴に引き釣り込もうとする一部始終が手にとるように竿に伝わってくる。そしてアワセるとご覧の通り、竿は弓なりになり、釣り師の心は水面下で踊るイワナ一点に集中する。テンカラやルアーは一瞬の勝負だが、餌は本物だから、イワナと戯れる時間が圧倒的に長い。大きいドバミミズの端だけを咥えて、なかなか針まで食い付かないイワナならば、竿を上下にあおって「早く食え!」とイワナを挑発することだってできる。これは、本物の餌じゃないとできない技だ。それだけイワナとの駆け引きを楽しむ時間も長いと言えるだろう。ルアーに魅入られた私でさえ、餌釣りの誘惑がいまだつきまとう。それは、ルアーにない魅力が餌釣りにあるからだろう。

 ルアーは、偽者だから場荒れが早い。餌は、ルアーと違っていきなり本命のポイントには振り込めない。下流から順次釣り、本命へと進む。だから小物にいたずらされる確率も高いが、粘れば大物を釣るチャンスもある。ただし、雨後の笹濁りなど自然の力が必要なことは言うまでもない。シュンベツ川では、右の写真のように釣堀感覚でもイワナは釣れた。
 イワナを流芯の岩陰から釣り上げ、童心に帰ったように喜ぶ中村会長。仕掛けは、瀬畑翁からいただいた5.5mのテーパーラインにハリスを結んだだけのちょっと変わった仕掛けだ。
天然釣り堀、管理人はヒグマ・・
 大きなポイントでは、釣堀のように並んで竿を入れても全てに釣れてくる。これはスレていない釣り場ならではの光景だが・・・。底まで透き通るような流れに餌をそっと振り込む。岩陰に隠れていたイワナが、餌に向かって走る。その一部始終を眺めながら、ゆっくりアワセル。釣り人の足元に寄せられたイワナが、フラットな水面を切り裂く瞬間が上の写真だ。苦労したものだけが味わうことの出来る「無垢なる渓魚の世界」、それは忘れかけていた自然への回帰とでも形容できるだろう。
 ルアーで36cmのイワナが釣れたばかりのポイントで、ドバミミズに食い付いたニジマス35cmが左の写真。イワナとニジマスが同じポイントにいたという事実も驚きだが、ルアーで乱された同じポイントでこんなサイズが釣れること事態驚きだった。このニジマスは、なかなかのファイトを見せてくれた。傍で見ていた私は、たまらず腰に下げたタモですくい上げた一尾だ。
 チャワンナイ沢が近くなると、一転人間臭い匂いが漂う。見上げれば林道で剥き出しになった法面、右の写真は3年前吊り橋が架かっていた場所だが、真新しい索道に変身していた。当然釣れてくるサイズも格段に落ちた。もしかして林道を閉鎖しても、誰かがこっそり車を走らせ、釣りをしているのだろうかと疑った。ところが・・・。

 チャワンナイ沢を過ぎて、河原の砂地を見ると、またまたどでかいヒグマの足跡がやたら目に付いた。もちろん人間の足跡は皆無だった。それを見た副会長は、その淵でトップに掲載した36.5cmのイワナを釣り上げた。ここで、あえなく時間切れとなってしまったが、源流への想いが募る瞬間だった。

 36.5cmのイワナを釣り上げた最後の釣りの瞬間だ。水面がイワナで乱れているのが見えるかな。コントラストが高く、オートでは暗くなってしまったのが残念だが。  シュンベツ川の渓魚たちと遊び尽くしたが、まだまだ満足はしていない。本命の源流部探索の夢は、実現できなかったからだ。いつかきっと未知の源流部へ行ってみたい、そんな気にさせる凄い川だ。未練を残しつつ、最後の釣り場で記念撮影をし、足早に渓を下った。
山釣りのクライマックス、最後の源流酒場・・・
 最後の夜。昨日まで、エキノコックスを警戒する余り、イワナの刺身を食べるのは控えていた。けれども、これを山で食べなきゃ山釣りなどと呼べないじゃないか、と勝手な理屈をつけて美味しく食べた。清冽なシュンベツ川のイワナ、さすがに美味かった。焚き火の回りには、塩をふった尺クラスのイワナが6本。山釣りのクライマックス・源流酒場を、藪の中に潜むヒグマはどんなおもいで見つめていたのだろうか。酔うほどに、山の神様に最も近いヒグマに感謝・・・4日間無事に遊ばせてもらってありがとう・・・

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