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二日目晴れ・・・マンダノ沢遡行編
 二日目の朝、ブナの森に光のシャワーが降り注いだ。ハードなマンダノ沢の遡行が待っていただけに、願ってもない天気・・・しばし、オイノ沢周辺に広がるブナの森を歩いた。
 お助け小屋の下を流れるオイノ沢
お助け小屋周辺のブナ原生林
 オイノ沢右岸に広がるブナの原生林。緩斜面の森の中に入ると、ブナとブナの間隔が意外に広く、野生動物たちの遊び場としては一級品の印象を受けた。老木が倒れた空間を見上げると、深緑にポッカリ穴が開いたように青空が見えた。
 同上のアップ
 比較的緩い斜面に鎮座したブナの巨木。根元から5mぐらい上の幹は3本に枝分かれしている。推定樹齢300年は越えているだろう。この森を歩いた限りでは最も太いブナだ。その太い幹は、全身、緑と黒褐色の苔に覆われ、思わず拝みたくなるような風格を感じた。
 ブナの森から羽後朝日岳の山頂が見えた。ここから標高差約1000mもあり、私にとっては近くて遠い、遠い山である。それだけにハードな遡行を余儀なくされるだろう。
 お助け小屋の前で記念撮影。中には、山神様を祀っている。中村会長を先頭に、一晩お世話になったお礼と山旅の安全を祈願した。
ゴーロと滝が連続するマンダノ沢遡行
 。二又周辺には、この下流と上流、併せて三ヶ所のテン場がある。羽後朝日岳に突き上げるマンダノ沢は、和賀山塊の水系で最も長く険しい沢だ。マンダノ沢と八滝沢の急峻な分水尾根の稜線は「治作峠」と呼ばれている。仙北マタギによると、かつては岩手県沢内村との交易路になっていたという。一度は歩いてみたいルートだ。
二条10m滝とゴーロ連瀑帯
 木漏れ日を浴びながらゴーロの階段を登っていくと、やがて二条10mの滝に出会う。滝の左に鎮座する巨岩と滝左岸の分厚い苔は見事だ。ここで中村会長が竿を出す。
 滝壺で釣れた岩魚。ここで2尾釣れたが、先が長いので撮影した後、全てリリース。
 滝下流の瀬尻・清冽な流れを切り撮る。
 二条の滝は右岸を大きく高巻く。高巻きを終えると、眼下にマンダノ沢最大のゴーロ連瀑帯が連なっている。
 ゴーロ連瀑帯の上部から撮影。下流の二条の滝と連続するゴーロ滝は、総落差100mもあるのではないか。この右岸の斜面に踏み跡がある。
 ゴーロ連瀑帯の終点に懸かる美しい二条の滝。
 ゴーロ連瀑帯の撮影会を終え、二条の滝右岸を越える。
 マンダノ沢の巨岩が連なるゴーロ連瀑帯は、両岸の深い渓畔林に覆われ暗い。巨岩の階段を一歩一歩登りながら高度を稼ぐと、一転渓は開け美しい渓谷となる。岩場を登りながら振り返ると、左岸に屹立する岸壁が見える。
 夏の暑い陽射しを吹き飛ばすように流れ下る清冽なシャワー。見ているだけで涼感満天だ。
 赤いザックを背負った会長が見ている滝は、落差15mほどの滝。狭い流れを落走する滝は、最下部でラッパのように末広がりに落下し、近づけばその爆風は物凄い。ここは右の薮を小さく巻く。
 クガイソウ(別名トラノオ)・・・漢字で「九蓋草」と書き、4〜6枚の葉が9段に重なっている。紫の小花を穂状につけ、まるで虎の尾のようにも見える。
 ミニ三角錐の岩峰
岩穴から噴出すマンダノ沢の名水
 マンダノ沢の名所の一つ、二つの岩穴から小便小僧のように噴出す名水。噴出す汗を沈め、乾いた喉を潤すには最高の名水だ。
 先はまだまだ長い。しかし、大きな岩魚の姿を見れば竿を出し1時間、美しい渓谷美や山野草を見つければ、デジカメで撮影会30分、名水に出会えば背中からコップを出して喉を潤す・・・ひたすら遡行図を書き、頂上を目指す沢登りの人たちから見れば、亀のようにノロイ遡行が続く。しかしウサギではなく、亀だからこそ見える風景も多い。その立体的風景は、スローであればあるほど無限に広がりを見せてくれる。
長く険しいマンダノ沢の別天地・蛇体淵
 数キロに及ぶゴーロ連瀑帯を過ぎると別天地のような蛇体淵に辿り着く。デジカメ、デジタルビデオを出し、しばし撮影会。お助け小屋からここまで高度差約400m。巻き道は左右どちらにもある。今回は左を巻く。
 蛇体淵上部の滝。ここでテンカラを振ったがアタリなし。
 蛇体淵上流も下流と同様、巨岩のゴーロが続く。空身で歩いた時は、さほど困難さを感じなかったが、重い荷を背負っての遡行は思いのほかきつかった。
 岩盤の水溜りに無数のオタマジャクシ(山地に生息するアズマヒキガエル)が泳いでいた。
 滑り台のような岩場はフェルト足袋でも滑りやすい。三点確保で慎重に進む。
 巨岩の頭に小さな森が・・・独立した小宇宙を見ているようで、いつも心惹かれる景観だ。
 まるでトトロのような形をした丸い巨岩を見上げる。
 岩場に生えていたハナニガナ
 センジュガンピ・・・清楚な白花が印象的。花弁は5個で先端が浅く数個に裂ける。中部地方以北の山地帯〜亜高山帯の林内に生える。
マンダノ沢の名前の由来
 シナノキ・・・マンダノ沢の由来は、この樹木から名付けられたらしい。マンダとはシナノキのことで、樹皮から繊維をとることで有名な樹木だ。マンダノ沢には、確かにマンダの木が多い。かつては、このマンダの皮を剥ぐために、山人たちはこの沢に入ったに違いない。
 流れが穏やかになると、まもなく天狗の沢出合いも近い。重い足取りもやっと軽くなる。
標高850m・天狗の沢出合い
 天狗の沢出合い二又・標高850m付近。正面の沢が天狗の沢で奥に7mの滝が見える。この左岸にテン場を構える。空身なら3時間ほどの距離だが、その倍の6時間もかかってしまった。まさに亀のようなノロイ遡行で、時計は既に午後4時を過ぎていた。湯を沸かし、コーヒーを飲んだ後、薮を刈り払い、いつ雨が降っても快適に過ごせるようにブルーシートとテントを張る。テン場のセットが終わると、ノコギリとナタを持って流木・風倒木を採取。
マンダノ沢源流の岩魚たち
 今晩のオカズを釣る時間はほとんどなし。焚き火や採取した山菜を料理するなど、やることは山ほどある。午後6時に中村会長が代表で釣りに出掛ける。上の岩魚は、天狗の沢7mの深い滝壺で釣れた真っ黒な岩魚。
 龍又の沢で釣れた尺岩魚。8寸から31cmの岩魚5尾が今晩のメイン。早速、皮を剥ぎ、三枚におろして刺身を作る。釣れたばかりの岩魚だけに、コリコリした歯ざわりは抜群だった。疲れた体に酒は超特急で駆け巡り、ドンデングーだった。

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