キノコ狩り1 キノコ狩り2 山釣りの世界TOP

 錦秋の森・白神山地・・・急斜面の倒木にビッシリ生えたムキタケの美は圧巻だった。

 キノコの本場と言えば、ブナ・ミズナラの原生林が広がる森だ。その森に生えるキノコの中でも、東横綱と言えば誰しもマイタケと答えるだろう。それでは、西の横綱は?と問えば、答えはナメコとムキタケだろう。キノコの造形美に魅了された私は、西の横綱、ナメコとムキタケの写真を思う存分撮ってみたいと念願していた。森吉山のキノコ狩りから一週間、西の横綱を撮るチャンスは今しかないだろうと思い立ち、10月19日(土)、釣友・小玉氏とともに、白神山地西目屋村に向かった。
 苔生すブナの倒木に、西の横綱・ナメコを次々に発見、小躍りしながら採る小玉氏。イワナ釣りや山菜採りも楽しいが、こんな素晴らしい自然の恵みに出会えば、童心に帰ったように心が躍った。
 車止めから沢に降り、ものの10分も経たないうちに見つけたナメコ。幸先のいいスタートだった。キノコ狩りの難しさは、狙ったキノコの旬がその年の天候によって当たり外れが大きいことだ。地上に姿を見せても、わずか数日で腐ってしまう。休日を利用するしかないサラリーマンにとって、狙ったキノコの大当たりは難しい。それだけに、採集のタイミングが的中すれば、感激の絶頂に達すること間違いなしだ。
 ブナの原生林を流れる水は冷たく美味い。その名水を汲み、早速ナメコ汁で朝食。美味い、美味いの連呼が続く。次いで色付き始めた四囲の森を眺めながら、熱いコーヒーを飲む。  フェルト足袋からスパイク付きのシューズに履き替え、いよいよキノコ狩りがスタート。最初は、走る岩魚の姿に目を奪われたが、次第に風倒木とキノコを探す目に変わった。
 ありました。旬のナメコ。スーパーで売っている栽培物と違い、天然のナメコは、このぐらいがボリューム、味ともに申し分なし。キノコの香りが森の中を漂う。
 一つ一つナイフで綺麗に切り取る。無造作に採ると帰宅してから処理が大変だ。さらに他のキノコと一緒に袋に入れると、家に帰ってから選別に泣かされる。ということで、種類ごとにキチンと分けて買い物袋に入れた。
 キノコと産卵のために遡上したイワナが群れていた小沢。黄色く色付き始めたブナ、ブナ、苔に覆われた岩と流木、落走する清冽な流れ、大量に降り積もった落ち葉・・・ちょっとした壷を覗けば、尺岩魚のペアが瀬尻に悠然と泳ぐ姿が見えた。カメラを構えると、私の気配をすかさずサッチ、岩魚は猛然と落ち口の岩に隠れた。ちょっと大きな壷では、かなりの数の岩魚を目撃。産卵で群れる岩魚たちの姿に誘われるように小沢の奥に入っていくと、キノコの山に出くわした。
 沢の急斜面に倒れた巨木にムキタケがビッシリ。見事なキノコの造形美に、背中から三脚を取り出し、何度もシャッターを切った。ナメコとムキタケの採取は、岩魚の産卵と黄葉が重なる時期だけに楽しさも100倍だ。
 ムキタケ・・・虫がついているものも多いので、一枚一枚ナイフで切り落とし、美味しく食べられるかどうか確認しながら採取。虫がわずかしかついていない場合は、虫食いの部分を切り取り採取した。この時期は、間違えやすいツキヨタケも姿を消しているので安心だ。
 斜面の上部から採取する小玉氏。写真ではちょっと判りづらいが、急な斜面と、倒木の空間が大き過ぎて採取は難しかった。両手が届かない中間部は、ナイフで切り落とし、後で一つ一つ拾いながらに買い物袋に入れた。
 ムキタケが生えていた倒木のさらに斜面を上ると、旬のナメコを発見。色艶、ヌメリとも抜群・・・見ているだけで、その美しさに魅了されてしまう。このぐらいのサイズなら、虫はもちろんゼロ、味も最高だ。
 ナメコのアップ。ナメコ特有のヌメリ、色艶が伝わるだろうか。ブナ林のキノコ狩りは、ひたすら倒木や枯れた立木を丹念に探すことに尽きる。
 傘が開いたナメコ・・・開くと傘の裏側に細かいひだが見えるようになる。
 大きな株となって顔を出したナメコ。なかなか見事だ。採る人も撮る人も嬉しさを隠し切れない。早くも美味しいナメコ汁や大根、長芋とのおろし合え、卵とじ、野菜との煮つけ、すき焼きなどのナメコ料理が頭に浮かぶ。
 小沢を下り本流に出ると、左岸の急斜面に苔生した倒木が沢に突き刺さるように倒れていた。見上げると、何とムキタケが山なりに生えているではないか。急いで斜面を這い上がろうとしたが、スパイクでも滑るようなきつい斜面だった。写真を撮ろうと、三脚を据えるも、なかなか満足する位置に固定できなかった。それでも被写体が申し分ないだけにキノコの迫力は撮れたと思うが・・・トップの写真もこの場所でシャッターを押した一枚だ。
 この一箇所だけで、とても食べ切れないだけの量を採取。こうなれば、保存をどうするかだ。キノコの保存法は、缶詰、瓶詰め、乾燥、塩漬け、冷凍保存が考えられる。缶詰は個人では無理、瓶詰、乾燥は面倒、となれば一人でも簡単にできる塩漬けが一番だ。

 塩漬け保存法・・・キノコをさっとゆでてさます。ザルに入れて水を切る。ボールに塩とキノコを交互に入れながら掻き混ぜる。最後に多めに塩を入れ掻き混ぜる。密閉できる瓶に隙間がないようびっしり入れる。(最後にゆで汁を瓶の中に入れるといいらしい)

 塩抜き・・・キノコをザルに入れたままボールの中などで半日ほど流水にさらす。大きなキノコは細かく裂いておけば、それだけ早く塩が抜ける。

 冷凍保存・・・少なめの湯でさっとゆでる。さめたところで少しづつ分け、ゆで汁ごとフリーザーパックに入れ、板状にして冷凍する。こうすれば解凍に時間が掛からないだけでなく、ゆで汁をそのままだし汁として利用できる。
 ムキタケの山を撮影している間、小玉氏はさらに斜面の上にキノコを探しに行った。写真は、その際見つけたカモシカの死体だ。春先、雪崩にやられたカモシカは何度も見掛けたことがあるが、秋に見たのは初めてのこと。さらに、その奥に見事なナメコを見つけた。

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