キノコ狩り1 キノコ狩り2 山釣りの世界TOP

 カモシカの死体がナメコの在り処を教えてくれたのだろうか。何とも見事なナメコだった。またまた撮影会開始、これでは遅々として先に進めない。嬉しい悲鳴だった。
 ヌメリ、色艶が何とも言えないナメコは、どこから切り撮っても絵になるキノコだ。
 自然の美と恵みに狂喜しながら採取する幸せの一コマ。秋田から西目屋村の車止めまで2時間半、さらに沢を1時間余り歩き続けてやっとキノコの森にやってきた。それだけに感激もひとしおだった。  ブナハリタケは、残念だが全て腐っていた。同じ時期に顔を出すサワモタシも一面山なりになって生えていたが、全て腐っていた。その度にモッタイナイ、モッタイナイと呟くしかなかった。
 天然物は、写真のように傘が開いた方が美味い。こうした大きめのナメコは、煮つけも美味いらしい。ナメコの美は、背後のブナの黄葉、ブナの倒木を埋め尽くす緑の苔に映えて、さらに輝きを増している。
 見た瞬間、姿形でクリタケだと分かる。しかし、図鑑で調べるまでは不安だった。特徴は傘が茶褐色で綿くず状の片鱗がある。あちこちに生えていたので、今度はぜひ採取して食べてみたいキノコだった。茎は歯切れが良く、けんちん汁、フライなどが美味いらしい。似た種に死亡例もあるニガクリタケがあるので注意。傘は硫黄色で、直径1〜4cmと小さいので簡単に見分けられそうだ。毒キノコは、生でかじると苦味があるので食用キノコと判別できる。
 谷を埋め尽くす、黄葉。落ち葉が水面に落ちる浅瀬では、ペアの岩魚たちがあちこちに散見できた。明るい望遠レンズがあれば、素晴らしい産卵風景を撮ることができただろうが、10万円前後のデジカメにそれを望むのは、まだまだ先だろう。ブナの森に囲まれた谷で、ナメコやムキタケを探すのは至って簡単。沢筋、両岸の斜面に点在する倒木を探すだけ。ただし、近場はキノコよりも人が多いと言われるご時世。沢を縦横無尽に歩ける人でないと、満足のゆくキノコ狩りは無理だろう。
 分厚い苔の間から顔を出したナメコ。まだ傘を開かないナメコと苔の瑞々しさ、豊潤な空気感が伝わってくるようだ。こんな光景に出くわすと、「撮ってください」「食べてください」と一斉に言っているようにも見えた。
 どこまで沢を辿ってもナメコ、ナメコの連続。ただし、どれ一つとして同じものがない。それぞれに個性があり、自然の造形の妙を感じさせてくれる。何百回シャッターを押しても尽きることはない。
 屹立する岸壁から湧き水が一面噴出し、苔に覆われた岩場を一斉に滴り落ちる光景に出くわす。背中から又も三脚を出してスローシャッターで撮影。大量に降り積もったブナの落ち葉が、ブナの森の贈り物であることを物語っている。帰路は、この名水で渇いた喉を潤した。
 渓沿いの倒木に生えたムキタケ。斜面の倒木に生えたムキタケの表面は乾いているが、こうした場所のムキタケは、露にしっとり濡れたような感じで瑞々しさが違う。
 これは何だろう。おばあさんのオッパイを連想させるような不思議なキノコだ。小玉氏が一言・・・「ババァみてぇだな」
 穏やかな谷も次第に落差を増してきた。錦秋の谷は、行けども行けどもキノコの山だった。次第に背中の荷も重くなる。
 苔生すブナの倒木とムキタケ。飽きるほど撮影した光景だが・・・ついついシャッターを押してしまう。でも、長い一日を瞬時に思い出させてくれる記録として、デジカメは何とも凄い武器だ。メモ魔の私にとって、デジカメとパソコンは今や手放せない強力な武器だ。
 黄葉した谷、巨岩が累積した幾筋もの隙間から清冽な水が飛沫をあげて落下している。ときおり、落ち葉がヒラヒラと天空から舞い落ちる。遡上した岩魚たちは、流れの緩やかな浅場に集まり産卵が始まった。
 岩魚が群れる谷に顔を出したナメコ。飛沫にしっとり濡れたナメコの表面が分かるだろうか。実は、角度を変えて流れる水面に目を向けると、ナメコの群れが水面に映っていた。光の捉え方が難しく、未熟なデジカメマンには撮れなかった。
 秋の谷の日暮れは早い。キノコの核心部に入ったが、そろそろ帰らないと危ない。午後二時半、ナメコとムキタケで重くなったザックに満足感を抱きながら谷を下った。
 左は沢登り用のズボンにスパイク付き地下足袋、膝下をスパッツで身を固めた釣友・小玉氏、右は私(ズボンは、秀山荘のライトアルファタイツ、膝下はウォータースパッツスーパープロ、靴は磯釣り用として売っている安物・スパイク付きシューズ、腰には熊鈴とすぐ取り出せる漁師用のナイフを下げている)。朝も昼も採ったばかりの旬の材料を使い、ナメコ汁に舌鼓をうった。

 帰路、車止めに辿り着く寸前、久々に見るサルの巨大な群れに出会った。立ち止まると、大きな集団だけにサルたちは大きな声で何度も私たちを威嚇してきた。突然の訪問者を威嚇したくなる気持ちも分からないわけではないが、「相手を間違えてるんじゃない、相手を・・・喉が疲れるだけだよ」と言ってお互いに顔を見合わせ笑った。すっかり暗くなった帰宅途中の林道で、久しく見ることがなくなったウサギの赤ちゃんも目撃した。

 カモシカの死骸、サルの大群、ウサギ、産卵で遡上した岩魚の群れ、西の横綱・ナメコとムキタケの山・・・家では、早速ナメコと大根のおろし合えを自ら作り、今日一日撮影した画像のスライドショウを鑑賞しながら、熱燗を飲んだ。竿を持たずに谷を歩けば、より深く谷を立体的に遊ぶことができる。そのことを、黄葉に染まった白神の谷に教えられたとシミジミ感じながら又一杯飲む。嬉しそうな私の顔を見て、我が家の猫二匹が私の傍らに擦り寄ってきて横になる。幸せとは、何ともたわいのないものだ。
私のお気に入りのキノコ満載のページ
 ギュウギュウきのこ http://babu.com/~gyu_suke/

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