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Hidaka mountain chain mountain fishing travel 4
 8月14日、くもりのち晴れ。

 やっと雨が上がったようだが、濁りも消えず、水位もほとんど下がらなかった。あいも変わらずルアーにとっては最悪のコンデションだった。

今日も川を渡ることは無理だが、できるだけ上流を目指すことにした。
 昨日釣り終えた区間まで一気に歩き、竿を出す。流れが強く、まして岩穴に入れるには難渋する。上流から下流に投げて引いても、軽いルアーは簡単に浮かされアタリは遠かった。追ってくるのは総じて小物ばかりだった。大物が潜んでいるのは分かっているのだが・・・。
対岸渡渉不能の渓を釣り上る
 増水した渓を際どくヘツル私。岩場は、雨でツルツル状態、ちょっと油断すれば太い流れにドボンと落ちるのは明白。慎重に上流に釣り上がった。
 危険な箇所は、布テープで突破。厳しい遡行が続く。
 流れの緩いトロ場は、腰まで入って上流へ。
防水対策やヤツメウナギ泳法で使用するスカイフック、
ピッケルなどを準備してきたが、
とても泳げるような水圧、水量ではなかった。

岩穴の点釣りで釣り上げたイワナをかざし、
満面の笑みが込み上げてきた。

今までやったこともない意外な釣り方で、
暗く深い岩穴からイワナを釣り上げると、
何故か一際心が踊った。

平水なら、このぐらいのサイズを釣り上げるには、簡単なのだが・・・。
 シュンベツの美魚を記録すべく、釣り上げたらデジカメで必ず接写した。この岩魚は31センチ。
ニッコウイワナ系のエゾイワナに驚嘆
 釣り上げた尺上の岩魚をレンズごしに覗いて驚いた。何と側線より下に薄い橙色の斑点があるではないか。注意して見ないと見失うような個体だが、日高では見たこともない着色斑点をもつエゾイワナであった。ブナ=ニッコウイワナと思っていたが、そんな思い込みは簡単に崩れてしまった。
銀色のスプーンに食らいついたイワナ。
もちろん、釣れるイワナは、全て無着色斑点のイワナだった。

着色斑点のイワナは三日間でたったの一尾のみ。
どれだけの確率で生息しているのか、
悪条件では不明としかいいようがない。
これは次回の大きなテーマになりそうだ。

キープした岩魚は、旬を保つために網袋に入れて生かしたままデポした。もちろん一人2〜3尾確保した時点で全てリリース、無用な殺生をしないのが山釣りの鉄則だ。
 健ちゃんは、様々なミノーで大物狙い一点で攻めている。しかし、線で釣る釣法はなかなかヒットしない。水位が下がり、流れが澄めば入れ食いになるはずだが・・・条件が違えば天国と地獄の差ほど落差が大きかった。
 健ちゃんは、線で釣る常識的なルアーに悪戦苦闘した末、やっと釣り上げたイワナだ。腹部が橙色に染まり、陸封型のエゾイワナであることは一目瞭然だ。ニジマスも完全に自然繁殖しているが、シュンベツの大河では、優勢個体にはなっていないようだ。釣れる数は、まだまだエゾイワナが圧倒していた。
屹立する岸壁、逆巻く流れ・・・大高巻きに悪戦苦闘
 川を左岸に渡渉できないだけに、右岸だけを遡行していたが、とうとう屹立する岸壁に突き当たってしまった。上の写真は、数時間に及ぶ大高巻きを終えて休憩している場面だ。

 高巻きは小さく巻くのが鉄則だが、最初はそれで成功した。しかし渓に下りると壁が連続していた。岩壁の小さな小段を見つけて小さく巻こうとしたが、すぐに直立の壁が行く手を阻んだ。

 登りはいいが下りほど危ないものはない。その度にザイルを出して下降、戻るしかなかった。落差50mほど登ると岩と岩の僅かな隙間があった。そこを通り上流に出たが、今度は雨で緩んだ地盤はすぐに崩れて危険極まりなかった。立木にザイルを巻き、安全を確保した上で何とか横にトラバース、下降に成功した。
 左の写真は、今にもヒグマが飛び出してきそうな森だ。右の写真は、大物狙いを諦め、毛の付いたスピナーで点釣りをしているところ。
 点釣りならイワナは何とか釣れるがサイズに不満が残った。前ビレ、腹部、尾ヒレまで鮮やかな橙色に染まっている。
 大岩が渓に点在、白い泡を波立たせて流れるシュンベツ川。至る所に大物の気配が充満していたが、どんな条件下でも擬似餌を自在に操る技術がなければ、なかなか相手をしてもらえなかった。スレていない渓魚と言えども、この時ほど、擬似餌で釣る難しさを痛感したことはない。
テン場から2キロ・・・ヒグマの密度が最も高い熊の沢合流地点
釣り人を圧倒する水量、
白く濁った太い流れ、
無数の岩穴・・・

さすが日高一の原生林が残る大渓流だ。
もうすぐ熊の沢出合いだが、ここまで来れば満足、満足だった。
増水で河原の砂地はすっかり洗い流され、ヒグマの痕跡は消えていた。
流れがこれだけ太ければ、ヒグマも危険で川には近づいていないようだ。
 熊の沢・・・沢の入り口に入ると冷風を浴び、気味が悪いほど暗い。もともと無名の沢だが、勝手に「熊の沢」と命名したのには訳がある。シュンベツ川沿いで熊の沢周辺が最もヒグマの痕跡密度が高いこと。ちなみに、この下流右岸の巻き道ルートには、驚くほど踏み固められたクマ道がある。周辺の笹薮には、大きな丸い笹薮トンネルもあった。

 地図を見れば、この沢の右岸に大きな沼があり、等高線もなだらかで、ヒグマの生息密度が高い地形を示している。この周辺にテントを張るのは極めて危険であり、遡行中も常に複数で行動するなど慎重な対応が必要だ。
 熊の沢出合い上流部、ニジマスを釣り上げた瞬間。
 自然繁殖したシュンベツ川のニジマス。日本には、1877年に移入され、養殖魚としてはもちろん、釣りの対象魚として日本各地の川や湖に放流されている。しかし、日本の環境には合わず、北海道以外ではごく限られた水域でしか自然繁殖できないという大きな欠点を持っている。ちなみに秋田では、自然繁殖が確認されているのは湧水池一箇所のみ。ここシュンベツ川では確かに自然繁殖しているものの、一釣り人の感として言わせてもらえば、エゾイワナを駆逐するほどの勢いは全く感じられない。餌が最も捕食しやすいポイントは、ほとんどエゾイワナが占拠し、数も圧倒しているからである。
熊の沢出合いで記念撮影。
濁りが消えないシュンベツ川本流を右岸だけ歩きながら、
わずか2キロとは言え、ここまで来れば満足だった。

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