第4回 (2012年の秋分について)

 2月1日に国立天文台から来年(2012年)の暦要項が発表されました。来年は、日本で見られる金環日食や金星の日面経過といった大きな天文イベントが並びますが、それらとともに、秋分が9月22日になることが注目されています。これは実に116年ぶりということです。
 何故そうなるのかという”解説”も、新聞などにちらほら見られます。たとえば朝日新聞では
 1年は365日と6時間弱なので、秋分は毎年6時間ずつ遅れる。したがって4年で1日遅れることになるが、そこで閏年が入るので元に戻る。しかし閏年ではずれを完全に修正できない。・・
説明らしい説明はここで終わっています。これでは、何故百何年ぶりといった現象が起きるのか、さっぱりわかりませんよね。

 実は、上記の”解説”はこの現象の説明の前段でしかないのです。
 本当の理由は、4年に1度の閏年では1年が長過ぎることにあるのです。実際、4年に1度の閏年を続けて行くと、400年では3日も長くなります。100年では0.75日です。そして1901年以来ずっと4年に1度の閏年が続いているので、ここ100年ほどの間に暦が実際より0.75日ほど遅れた。つまり、今年(2011年)の暦は100年前(1911年)の暦より0,75日遅れているのです。暦の側(日付)を基準に考えるなら、秋分(春分、冬至、夏至なども)は逆に100年前より0.75日早くなった。これが百何年ぶりの現象が起きる理由なのです。

 4年に1度の閏年では400年では3日長過ぎる。実際このことが、かつて問題になりました。16世紀には聖書の時代と比べて春分が10日ほども早くなってしまったのです。その頃はローマ時代から続く『ユリウス暦』を使っていた。これが4年に1度の閏年だったからです。
 これじゃいかん、ということで、1582年に現在の『グレゴリオ暦』が制定された。これは閏年を400年に97回とした。具体的には西暦年を400で割った余りが100,200,300の年は閏年としないのです。これによって暦は季節(太陽の運行)に対して非常に正確になりました。
 しかしそれは、400年というかなり長い期間の「平均の1年」が正確になったということで、その400年の間には小さなバラツキがあります。そして現在は、1900年に閏が省かれてから100年以上、4年に1度の閏が続いている。つまりユリウス暦時代と同様に暦が実際より遅れていく途上にあるのです。この遅れは、2100年、2200年、2300年に閏が省かれることによって回復し、1900年とほぼ同じに戻ります。
 こちらもご覧下さい。

 なお、中国では2008年に既に秋分が22日になりました。「116年ぶり」というのは日本だけなのです。

 1923(大正12)年9月1日は関東大震災の起きた日です。これは「二百十日に起きた大災害」とされることが多いようですが、実は違います。この年の立春は2月5日だったので、大震災の日は「二百九日」だったのです。この時代には立春が2月5日ということが少なくなかった。それが近年は2月4日になっているというのも、やはり4年に1度の閏では1年が長過ぎるためです。そして今後は2月3日立春が増えます。
 もっとも二百十日や八十八夜などの『雑節』は、天文学的な意味はなくて、人々の暮しの中で生れてきた暦要素ですから、1日2日の違いに目クジラ立てる必要もないのでしょう。関東大震災は二百十日だったと言っても大きな間違いではない。ただ、それらの基準である立春については、こんなことも知っておいて良いのではないかと思うのです。

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Feb. 2011

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