The Days of Multi 第2部 Days at Laboratory ☆第4章 マルチの危機 (マルチ2才) Part 1 of 2 研究所の外へ出て行ったメイドロボを探すよう命じられたふたりの調査員は、車に乗り込むと、研 究所の周囲を回り始めた。 …すぐに、それらしいメイドロボが見つかる。 手に鞄を持って、速くもなく遅くもなく、ごく普通の調子で歩いている。 車でゆっくり後ろから近づき、横を通り抜ける。 来栖川研究所のメイド服を着ている。間違いない。 追い抜いて少し先で止まる。 幸い全く人気はない。 「あれだな。」 「ああ。」 「しかし、急いで逃げ出した風でもないし…」 「やっぱり、普通の量産タイプだろうな。」 「たぶんな。 …しかし、一応言われたことはしておかないと。」 「そうだな。 さっさとすませて帰ろうか。」 ふたりは車を降りた。 メイドロボは、車の後端の当たりに差しかかっている。 「よう、お嬢ちゃん。」 「はい?」 メイドロボが感情のこもらない声で答える。 「お嬢ちゃんは、来栖川研究所のメイドロボだね?」 「はい。…そうですが?」 ちょっと警戒の色を見せる。 「いやね、おじちゃんたち、 今日、研究所のメイドロボを調べに来たんだけどね。 君だけ、外へ出ちゃったと聞いたもんだから、 こうして追いかけて来たんだよ。 悪いけど、すぐすむから、協力してくれないかな?」 「そうですか。 どうすればいいんですか?」 「うん。ちょっと服を脱いでくれないか?」 「え!?」 メイドロボが驚きの声をあげる。 男たちは、ちょっと考え直す。 やっぱり屋外で全裸はまずいか? 「あ… いや、そうじゃなくて。 服はそのままで、下着だけ脱いでくれれば、それでいい。 すぐすむから。」 人間の女の子相手にこんなことを言ったら、大変なことになる。 「…………」 メイドロボは俯いて考えている。 「協力してくれるかい?」 「…………」 「すぐすむってば。」 「…いやです。」 「えっ?」 「やっぱり、恥ずかしいです。」 「…でも、君の仲間は、今ごろ、 それよりもっと恥ずかしい格好になってるはずだよ。 素っ裸にされてさ。」 女の子を前に、何とデリカシーのない言葉。 メイドロボは男の言葉を聞くと、びくっと体を震わせ、警戒の色を強めながら、後ずさりし始めた。 (きっとこの人たちは…主任さんの言っていた、悪い人たち…) 「さあ、いい子だから…」 (悪い人につかまると、殺される…) 「こっちへおいで。 いい子にしていれば、すぐ終わるから。」 よく考えてみると結構意味深に取れそうな言葉を口にしながら、男たちが寄って来る。 「いや!」 メイドロボは身を翻すと逃げ出した。 「あ!? こら!」 「待て!」 男たちが全力で追う。 たちまち追いつかれる。 「待てったら!」 ひとりが、メイドロボの耳のセンサーをつかんで引き戻す。 「あ!?」 メイドロボがバランスを崩したところを捕まえて、抱きかかえようとする。 「いや! いや!」 メイドロボが暴れる。 「こいつ! おとなしくしろ!」 「おい、車に…」 ふたりは暴れるメイドロボを引きずるようにしながら、車の所まで戻る。 メイドロボをトランクの上に押し倒す。 「きゃっ!?」 はずみでスカートがめくれる。 男たちは、メイドロボの足を広げて「チェック」を強行ようとする。 「いやーーーーーーーーーーーっ!!」 メイドロボは、死にもの狂いの悲鳴をあげる。 「くそ! おい、こいつの口をふさげ!」 言われた男が、大きな手でメイドロボの小さな口を覆う。 「ん… ん…」 悲鳴を封じられたメイドロボは頭をよじり、手足をじたばたさせ、体をくねらせてもがく。 「ちっ! あんまり手こずらせるんじゃねえよ!」 抵抗はやまない。 そのうち、メイドロボが大きく頭を動かした拍子に、口を覆っていた手がはずれた。 「いやーーーーーーーーーーーっ!!」 再び、大きな悲鳴。 (それは、ご主人様だけの、大事な…。 …「ご主人様」? 「ご主人様」って何?) 「こいつ!」 たまりかねた男が、メイドロボの顔を思いきりぶつ。 「あうっ!?…」 一瞬ブレーカーを落としそうになったメイドロボ。 「お? おとなしくなったぜ。」 「よし、今のうちだ。」 メイドロボの意識がぼんやりしている間に、男たちが「チェック」を行なう。 そこに男たちが見たものは… 「おい?…」 「うん…」 ふたりは到底信じられないという顔になる。 「こいつは…」 「ああ、間違いない… HMX−12だ。」 次へ 戻る