The Days of Multi<セリオ編>第一部第5章 投稿者:DOM
The Days of Multi <セリオ編>
第1部 Days with Hiroyuki
☆第5章 帰って来たメイドロボ (マルチ生後4ヶ月〜7ヶ月)



 浩之はぼんやりと、中庭の芝生に腰をおろしていた。
 セリオやマルチと別れて以来、体の芯が抜けてしまったような心持ちがする。
 幼馴染みのあかりが心配するのも、今はただうるさく感じるだけだ。
 喧嘩友だちの志保ともやり合う気になれない。
 雅史が気を使ってひとりにしようとしてくれるのが、一番ありがたい。

 ふと、傍らに人の気配を感じた。
 見上げると、芹香の顔があった。
 どことなく心配そうだ。
 何か言われる前に浩之が機先を制する。

「先輩… お願いだから…
 何も聞かないでくれ…」

 それきり黙る。

 しばらくして、芹香がやはり芝生の上に腰をおろす。
 浩之の隣ではない。さりとて、そう離れているわけでもない。
 浩之がちらっと見ると、芹香は、よくやる中庭でのひなたぼっこのように、あらぬ方を見てぼうっ
としている。

 芹香なりの心遣いだろう。
 芹香は浩之と無関係にそこにいる、と言いたいのだ。浩之が余計な気を使わないように。
 しかし、浩之が必要とするなら、いつでも応じられる、そういう距離にとどまっていた。
 そして、浩之が頼んだように、何も言わず、しかもその沈黙が重苦しくならないように配慮しなが
ら、座っていた。
 浩之は、芹香のそうした態度がありがたかった。

 魂の抜けたような浩之と、ぼうっとした表情の芹香は、長い間そのままの姿勢を保っていた。

 やがて浩之は立ち上がると、

「ありがとな、先輩。
 …少しは元気が出たような気がするぜ。」

 と、心から礼を言った。
 芹香も嬉しそうな表情を見せて頷いた。



「…長瀬か?」

「恐れながら、セバスチャンにございます。」

「…セバスチャン。
 どうだ、うまくいったであろう?」

「はは。大旦那様の遠謀深慮には、感服仕りました。」

「はっはっは。
 しかし、正直、あそこまでねらい通りに行くとはな。
 おまえの息子は大した者だ。
 人間の男を夢中にさせるくらい、魅力のあるメイドロボを作るとはな。」

「はっ。…実はその男のことでございますが。」

「? 藤田がどうかしたか?」

「今日、芹香お嬢様がご一緒の所を拝見致しました。」

「何だと?
 性懲りもなく、またぞろ芹香をつけ狙っておるというのか?」

「いえ…
 あの藤田という男、例のからくり人形にぞっこんだったと見え、
 あれ以来腑抜けのようになっております。」

「それなら、ねらい通りだが?」

「あまりのふがいない様子に、心優しいお嬢様が見兼ねて、
 慰めようとしておられるご様子とお見受け致します。」

「…………」

(あのおとなしい芹香の方から積極的に男に近づくとは、計算外だった…)



「失礼します。
 開発部の長瀬です。」

「長瀬君か。入りたまえ。」

「…部長。
 メイドロボの再試験のこととか伺っておりますが?」

「うむ。実は君の所に保存してあるHMX−12のことだがね…
 会長の肝煎りで、長期運用試験を行うことになった。」

「長期運用試験ですか?」

「そうだ。
 君が主張していたように、
 学習型のメイドロボを、たった8日の試験だけで判断するのは無理がある、
 との会長のお言葉でね。
 前回試験を行なったのと同一の学校にて、
 最低一年間、最高二年間の試験を行う。
 試験の結果、有意義なデータが得られれば、
 今度のマルチタイプには間に合わなくても、
 次かその次のメイドロボに生かすことができるだろうと、
 長期的な展望に立っての会長のご意見だ。
 なお、メンテナンスその他の必要経費は、
 一定額を越えない限り、君の裁量で用いてよろしい。
 その他の詳細については、書類を回しておくから、目を通してくれたまえ。
 何か質問は?」

「…いえ。」



「もしもし。研究所の長瀬と申します。
 お忙しいところ恐縮ですが、会長はおいででしょうか?」

「どういったご用件でしょうか?」

「今度運用試験を行う予定のメイドロボの件で、
 ちょっとご確認いただきたい点がございまして…」

「少々お待ちください。」

(…保留音…)

「お待たせしました。
 どうぞお話しになって下さい。」

「…長瀬君かね?
 メイドロボの件で話があるそうだが…?」

「はい。
 …率直に伺いますが、今度の長期運用試験の第一目的は…
 前回の試験で提示された任務の遂行にある…
 と理解してもよろしいでしょうか?」

「何だ? それが目的では不満かね?」

「いえ、そうではありません。
 …ただ、その任務を効果的に行うには、
 ぜひ助手をつける必要があると考えましたもので。」

「助手?…」



 修学旅行が終わり、またいつもの営みに戻る。
 相変わらず、体のまん中に穴が開いたような虚しさを覚える浩之だった。

 今日もいつもと同じ朝の風景…
 ホームルーム。
 先生が教室に入って来る。
 女生徒をふたり連れて…
 え? 女生徒?
 あれは…

「あー、皆。転入生を紹介する。
 ふたりとも、今日からこの学校で長期運用試験をすることになった、
 来栖川のメイドロボだ。
 皆、仲良くするように。
 では君たち、自己紹介を。」

 あれは…!

「えーと… 皆さん、こんにちはぁ。
 私、来栖川のメイドロボHMX−12で、通称…」

「マルチ!?」

「はい、マルチですぅ… え?」

 名前を呼ばれたマルチは、驚いた顔をこちらに向ける。

「マルチ、なんだな!?」

「あっ…」

 浩之を見て息を飲む。

「あー、藤田?
 自己紹介の途中だ、邪魔をしないように…」

「それにセリオ!」

 マルチの隣にいた少女が、浩之を見て頭を下げる。
 鮮やかな緋色の髪が、優雅な舞いを思わせる動きを見せた。



 1時限目が終わると、浩之はセリオとマルチの席へ駆け寄る。

「セリオ! マルチ!
 また一緒に…過ごせるのか?」

「はい! 今度は、もっと長く、学校に通えることになりました!」

「−−よろしくお願いします。」

 お辞儀をするふたり。

「だーかーらー!
 前にも言っただろう?
 友だちなんだからさ、いちいち頭を下げることなんかないって。」

「−−それでは、恐縮ですが、
 今後は浩之さんのお友だちとして、おつきあい願います。」

「お願いしますぅ。」

「おう、どーんとまかしとけ。」

「…浩之ちゃん?」

「ん? あかり? 何か用か?
 …そうだ、ついでに紹介しとこう。
 マルチとは顔見知りだったよな?
 セリオ。こいつは俺の幼馴染みで、神岸あかりっていうんだ。
 あかり。セリオは俺のダチなんだ。
 女は女同志ってこともあるから、よろしく頼むぜ。」

「−−神岸あかりさんですね?
 セリオです。よろしくお願いします。」

(志保さんによれば、浩之さんを好きな女性のひとり…)

「あかりさん。またお世話になりますぅ。」

「…あ、こちらこそよろしく…
 ねえ、浩之ちゃん。
 いつ… セリオさんとお友だちになったの?」

 あかりは怪訝そうだ。

「ん? まあ、いろいろあってな…」

 言葉を濁す浩之に、あかりは何となく寂しそうな目を向けるのだった。



 4時限目終了のチャイムが鳴った。
 生徒の礼を受けて、先生が教室から出て行く。
 と、そのとき。

 ヒュッ!

 風を切る音がして、何かが後ろのドアから飛び出して行った。

「な…何だ、今の?」

 後ろの方に座っている生徒たちが思わず振り返ったときには、もうその何かの姿はなかった。
 浩之はそれには気づかず、マルチたちと話をしようとして席を立って来た。

「あれ? セリオは?」

 マルチの隣の席が空になっている。

「セリオさんなら、食堂に行かれましたぁ。」

「食堂? どうして?
 あいつは食事なんて必要ないだろう?」

「クラスの皆さんのパンを買いに行かれたんですぅ。
 私も行くと言ったんですけど、ひとりで大丈夫だからと…」

「…………」

 クラスの連中、前のマルチみたいに、メイドロボをパシリに使うつもりだな。とんでもない奴らだ。
 …おっと、それよりも、セリオが困ってるだろうから、手伝いに行ってやった方がいいだろうな。

 浩之が食堂に急ごうとしたとき、

 ヒュッ!

 再び赤い旋風のようなものが教室に舞い込み、呆気に取られている浩之の少し前で止まった。
 …それは、パンと飲み物を抱えたセリオだった。

「セ、セリオ?」

「−−浩之さん。
 驚かせてしまったようで、申し訳ありませんでした。
 …失礼して、これを皆さんにお配りして来ますので…」

 セリオは手際よく、食料を注文主に配り始めた。
 メモもないのに、誰が何を注文したかすべて記憶しているらしい。
 それどころか、クラスの席順まで暗記しているとしか思えない、無駄のない配り方だ。

「…セリオって、すげーんだな…」

「はい。セリオさんはすごいんですぅ。」

 マルチが我が事のように顔を綻ばせた。



 図書館の中。
 充電中のマルチを前に、浩之とセリオが話をしている。

「…それじゃ、今度の運用試験は、
 おもにマルチの学習能力を試すのが目的なんだな?」

「−−はい。
 マルチさんには、信じられないくらい多岐にわたる物事を学習する力がありますが、
 それは一週間や二週間ではよくわかりません。
 それで、少なくとも一年、最高で二年という、長期の試験をすることになったのです。」

「ふーん…
 じゃあ、マルチもすげーんだな。
 …すると、セリオは、運用試験ってわけじゃないのか?」

「−−私は、マルチさんの運用試験が滞りなく行われるよう、
 サポートやアドバイスを与える役目です。」

「へえ、そうなのか…
 まあ、何でもいいや。
 ふたりにまた会えて、俺、すげー嬉しいぜ。」

「−−私もです。」

「そうか、そうか。
 …え? セリオ、『嬉しい』って気持ちがわかるのか?」

「−−いいえ。
 …ですが、この状況は、人間でしたら嬉しくて大喜びをする状況だと思われます。
 マルチさんの反応を見ていても、それが容易に伺われます。
 ですから、私は『嬉しい』と言うべきだと…
 そう判断したのですが?」

「…うーん。何だかまわりくどいけど…
 まっ、いいか。
 セリオも嬉しいのなら、俺もますます嬉しいってもんだ。
 …一年から二年というと、うまくすりゃ、卒業まで一緒に過ごせるんだな?
 そうだといいなあ…」

 そう言いながら、改めてセリオの顔に目をやった。

「…………」

 きれいだ。理屈抜きにきれいだ。
 …俺の知り合いの中で、これぐらいきれいな顔と言えば、来栖川先輩ぐらいしか思い当たらない。
 まあ、あの人は別格だよな。
 同じメイドロボでも、マルチはどちらかというと可愛い顔だが、セリオには吸い込まれるような美
しさがある。
 ほんと、吸い寄せられるみたいだ。

 …あ、あれ?

 俺はいつの間にか、椅子から立ち上がって、俺の目の前に腰掛けているセリオに近づいていた。
 それこそ、吸い寄せられるように。
 俺の目はセリオの目を見つめている。
 俺の顔が、セリオの顔に近づく。
 セリオは動かない。
 このままで行くと、お互いの唇が触れるのは時間の問題だ。
 それでもセリオは動かない。

(セ、セリオ!? いいのか?)

 セリオはまるでフリーズしてしまったようだ。
 二人の唇は次第に接近する。

 あと10センチ…

 あと5センチ…

 あと…

 ぶううううううん…

 あわやというとき、かたわらで起動音がした。
 はっとして目をやると、マルチの充電が終わって再起動したところだった。

「うーん…
 …あ、浩之さん、セリオさん。
 待っていてくださったんですね?
 すみませんですぅ。」

「−−いえ。
 浩之さんとお話ししていましたから、あっと言う間でした。」

 俺はセリオの言葉を聞きながら気恥ずかしく思っていたが、セリオは例のニアミス事件については
何も触れようとしなかった。



 放課後。
 セリオとマルチに掃除を押しつけようとした連中にガンを飛ばして追い払った浩之は、ふたりを守
るようにしてそそくさと教室を後にした。

「あ、待ってよ、浩之ちゃん。」

 一緒に帰ろうとしたあかりが、慌てて鞄を手に取った。

 …それから間もなく、ひとりの女生徒が二年B組にやって来た。
 後ろのドアからしばらく中を伺っていたが、目的の人物を見つけられなかったらしく、手近な女子
に何事かささやきかけた。

「え? 何ですか? …藤田君?
 えーと、藤田君なら、ついさっき帰ったはずですよ。
 はい。ほんの少し前です。」

 女生徒はそれを聞くと、表情ひとつ変えず、立ち去って行った…
 …と、誰の目にも見えただろうが、実際にはその女生徒−−来栖川芹香は、浩之に会えなくて大い
にがっかりしていたのである。



 浩之は、できるだけセリオおよびマルチと行動を共にするように心がけていた。
 周囲がすぐ、ふたりにパシリを言いつけようとするからだ。
 しかし、目つきの悪い浩之が絶えずふたりのそばにいるおかげで、だんだんそういう不逞の輩は減っ
ていった。
 その代わり、浩之はいつの間にか、「メカフェチ」のレッテルを貼られていた。
 もっとも、当人は一向気にした様子もなかったが。



(今日も会えなかった…)

 芹香は2−Bの教室を後にしながら、とぼとぼクラブ棟へ向かった。
 なぜか足取りが重い。
 浩之をオカルト研究会の活動に誘いに来たのだが、すでに帰宅した後だったのだ。

(今日もひとり…) 

 部室の鍵を開けながら、芹香は思った。
 以前はちょくちょく部室を訪れた浩之なのだが、このところ、学校が終わると飛ぶように帰ってし
まうため、顔を見ていない。



(2−Bの藤田って知ってる?)

(藤田? ああ、あの目つきの悪い子ね。
 そのうち犯罪でもやらかすんじゃないか、って物騒な噂のある…)

(そうそう。その藤田よ。
 あいつさあ、実はメカフェチなんだって。)

(メカフェチって…?)

(例の運用試験中のメイドロボと、怪しい関係なんだってさあ。)

(だって藤田と言えば、確か来栖川さんと…)

(ところが、ところが!
 あの変態、きれいなお嬢様より、人形の方がいいってわけよ。)

(まさか。)

(本当だって。ちょっと気をつけてれば、すぐわかるわよ。
 あいつ、いつだって、メイドロボにべったりくっついてるんだから。
 うっかりロボットにちょっかいでも出したら、ただじゃすまないそうよ…)



 そんなひそひそ話を小耳に挟んだ。

(メイドロボ…)

 試作型のマルチとセリオが長期運用試験中であることは、芹香も知っていたが…
 このところ浩之は元気がなかった。
 言われてみれば、マルチの姿が見えなくなった頃からだ。
 それが、急に元の浩之に戻った。
 芹香も嬉しくて、しばらく控えていた研究会への誘いを再開しようとしたのだが…なかなか会うこ
とができない。
 浩之が元気を取り戻したのは、マルチたちの二度目の運用試験が始まってからだ。

(マルチさん…)

 マルチがいなくなって、浩之は元気がなくなった。
 マルチが帰って来て、浩之は元気になった。
 浩之はメイドロボにべったりくっついているという。

 …お嬢様より、人形の方がいいってわけよ…
 …人形の方がいい…
 …………

(マルチさんが羨ましい…)

 そんなことを思って、はっとする。
 私は何を考えているのだろう?

(浩之さんはお友だちに過ぎない… そう、『たったひとりの大切なお友だち』に…)

 今日の実験を始めよう…



「−−遊園地、ですか?」

「ああ。ほら、前に約束しただろう?
 時間ができたら一緒に行こうって。
 今度の日曜日なんか、どうだ?」

 学校の帰り道。
 浩之とセリオ、マルチ、あかりの4人連れである。

「お父さんにお願いしてみますぅ。」

「お父さん?」

 あかりがマルチの言葉を聞き咎める。

「−−研究所の長瀬主任の事です。
 私たちの言わば生みの親なので、『お父さん』とお呼びしています。」

 セリオもこの頃では、自然にそう呼べるようになった。

「ふーん…」

「あかりさんも行かれるんでしょう?」

 マルチがそう言うと、

「え? ど、どこへ?」

 あかりが慌てる。

「−−遊園地です。
 あかりさんもおいでになるのでしょう?」

 セリオが答えた。

「え、ええと…」

 あかりは浩之の顔をちらちら見て、困ったような顔をしている。
 浩之は、しょーがねーなー、という顔で、

「あかり。おまえも来い。」

 と言い渡す。
 有無を言わせぬような口調が、浩之なりの優しさの表れだ。

「…うん!」

 あかりは嬉しそうにうなずいた。



「えへへ、遊園地かぁ…
 何着て行こうかなぁ?」

 あかりは家に帰ると、まるでこれからすぐ遊園地に出かけるかのように、あれこれと服を選び始め
た。

「ひさしぶりの…でーと…だもんね。
 …きゃっ!」

 自分で言って、自分で恥ずかしがっている。

 …あかりはこのところ上機嫌だ。
 春から初夏にかけて、浩之が芹香に急接近したため、大いに心配していたのだが、このところその
脅威が去ったからだ。
 あのふたりのメイドロボのおかげである。

 浩之は、どういう経緯があるのか、ふたりのメイドロボに対して保護者のような態度を取っている。
 学校にいる間、ふたりの傍を離れようとしない。
 そして、学校が終わると、ふたりを伴い急いで帰途につく。
 おかげで、芹香との接点がなくなってしまった。

 あかりは、できるだけ三人と一緒に帰るように努力していた。
 最初は邪魔者扱いされるかと心配していたのだが、セリオもマルチも、何かとあかりに気を使い、
立ててくれようとする。
 メイドロボの習性であろう。
 何より、あかりとふたりきりで帰ることに抵抗を示していた浩之が、メイドロボを含む4人で帰る
分には文句を言わないのがありがたかった。
 あかりとしては、しばらく自分から遠離っていた浩之が、また身近に帰って来たような感じがする
のだ。

 学校での噂は知っているが、

(浩之ちゃんは、メカフェチなんかじゃないもん。)

 という理屈抜きの信念があって、全く気にかけていない。
 いや、たとえ百歩譲って浩之が本物のメカフェチであったとしても、芹香とくっつくよりは、メイ
ドロボと一緒にいてくれた方がよい。
 …芹香は浩之と結婚できるが、メイドロボはどう逆立ちしても、結婚などできないからだ。
 やはり、あかりにとって最大の脅威は、来栖川芹香なのである。

「これにしようかな…
 でも、こっちも、前に似合うって言ってくれたし…」

 鏡の中には、幸せそうな少女の姿があった。


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