感想（銀河英雄伝説）

★銀河英雄伝説～感想

第２期第３期第４期

ＮＥＷ！準備中

◆銀河英雄伝説（アニメ第１期）

　〔第１期の文章は、１９９１年６月に、Ｎｉｆｔｙ－Ｓｅｒｖｅで「ひなこ姫」さん（リンクページ参照）が主催していた『銀英伝ＨｏｍｅＰａｒｔｙ』に発表したものです。〕

　なぜ、私が今さら「銀英伝」にのめり込んでいるのか、書いていきたいと思います。
　「銀英伝」は、残念なことにアニメ化以前は小説の方はまったく知らなかったし、「わが征くは星の大海」（劇場版）も、週刊発売のアニメビデオ化の時も、あまり関心がなかったのです。小説では、私は文庫を買う方で、新書版は（高いし、判型が大きいので）「銀英伝」以外でもほとんど買ったことがないのでした（『銀河三国志』というタイトルだったら、興味を持ったかもしれません）。
　アニメ化の際も、ヒロイズムの極致のタイトルと美形キャラの設定を見て、ちょいとついていけんなーと思ったのです。それでも、２６話という長さは、それなりに見応えはあるだろうと、とりあえず見ていったのでした（去年〈１９９０年〉の５月ごろ）。

　第１期アニメについて
　ヤンとラインハルトの知略の対決とか、前宣伝があっただけに、戦術的にはアッと驚くほどでもなかったのですが、各個撃破の用兵論や、三つ巴の政治形態と政治手法、政治力学に興味のある設定と展開でした。
　「スタジアムの虐殺」は、中国の天安門事件をほうふつさせました。無防備の市民が殴られるたびに群集から「うおーっ！」と抗議と悲鳴がこだまする迫力。ソ連、東ヨーロッパでも市民への武力弾圧があったし、ちょっと古くは、韓国の光州事件、日本の６０年、７０年安保闘争（古いって (^_^｡)）などなど、為政者の力による支配は古今東西変わりませんね（『ウルトラセブン』“第四惑星の悪夢”も、今見ると現実の事件とオーバーラップし、妙に生々しい）。
　アニメのキャラクターについては、“美形キャラ”の先入観があって、取っ付きにくかったのですが、ハードなストーリーには、これでよかったと思います、もっとも、アニメを先に見たため、小説の描写の想像力を奪ってしまっているとは思いますが。
　声についても、まずまずのキャスティング。よく似合っていたのは、冷徹な詐術家参謀オーベルシュタインを演じた塩沢兼人（非情な黒子役にピッタリ）。「疾風ウォルフ」ことウォルフガング・ミッターマイヤーは、正義感の塊ガッチャマンの森功至。風采の上がらない、一見頼りなさそうなヤン・ウェンリーには、「タイガー・マスク」の伊達直人、富山敬（古い作品ばかりでごめんなさい）。
　アニメのラストは、これからが本番なんだぞって終わり方でしたが、とにかく長すぎるので、読めるかなと、小説には、まだ躊躇しました。意を決して買ったのが、秋も深まるころでしたか。でも、読み始めると止まらない。あまりにおもしろいので、一気に読んでしまうのはもったいないと、わざと少しずつ読んでいったのでした。
　小説とアニメを見比べて優劣を決めるのは無意味なことですね。それぞれに長所を持っているのですから。
　人類が宇宙に進出してからの歴史の変遷、歴代の銀河帝国皇帝の政治手腕、多彩に展開する登場人物の生い立ちから、性格、その他もろもろのエピソードなどの細かな描写は、小説ならではのこと。多彩な戦術を展開する宇宙会戦では、文章より「アニメーション」の方がわかりやすい（欲を言えば、“三次元作戦ディスプレイ”といった立体的な映像を工夫すべきでしたね。平面的すぎる）。
　ビデオシリーズは、帝国と同盟の動きを１話ずつ交互に描き、民衆の反乱、大貴族の没落など、小説では２～３行で軽く書き流されていることでも詳細に描写され、基本線を守りながらのサイドストーリーになっています。
　小説を読んだ後、またアニメを見ていくと、新しい（というか、気付かなかった）発見もありました。登場人物の多さに圧倒され、最初は、誰が誰だかわからなかったキャラも、二度見ると特徴を捉えているのがわかりました。小説での描写とは、違和感のあるキャラもありますが。
　また、この小説の一つの特徴である軽妙な会話や毒舌は、カットされているし、ヤンの政治哲学もあまり表に出てきません。「銀英伝」が、他のドラマや漫画などと違うのは、正対邪の単純な勧善懲悪にしていないところですが、ヤンの政治観、戦争観が、アニメで大幅に省略されているのは残念なことです。
　結局、アニメは、活字で表現できないことを映像で見せるのであり、一字一句正確にアニメ化したところで意味はないのかもしれません（漫画作品のビデオアニメ化は、色の着いた絵に、声と音が付いて動くというだけでは大枚はたいて買う気は起こりませんね）。最初に小説を読んで、それがどう表現されているのか“動く絵”を楽しむのが正当ではないかと思います（割り切って）。また、もともとアニメだったものを小説化したのなら、アニメをフォロー（状況設定、キャラの心理描写など）したものとして読む価値はあるでしょうけど。
　返すがえすも残念なのは、書下ろし刊行中、リアルタイムで読めなかったことです。おそらく、今以上にのめり込んで、同人誌なんかも作っていたことでしょう。でも、あらすじすら知らなかったことで、先入観なしで楽しめました。

　さて、「銀英伝」アニメ第二期が制作、発売されています。実際に観るのは、ＬＤになって、さらにもっと後になるかもしれませんが、楽しみです（ＬＤプレイヤーを持ってないので、この際買うかもしれない）。
　ヤン吊るし上げの「査問会」で、逆にやり込められる上官たち（ヤンの丁々発止のやりとりは、溜飲が下がる思いだ）。要塞同士の激突。そして、ラインハルトの旗艦ブリュンヒルトへ肉薄し、あと一歩のところで、「デスラー総統からお電話です」みたいな、戦闘停止命令。（やっぱりやるの～？　『銀英伝』は、けっこう『ヤマト』のパロしてますね。『ナディア』ほどあからさまに、これ見よがしにやらず、さりげないところはいいし、『ヤマト』を反面教師として御都合主義のストーリー展開は、“極力”避けていますが…）

　以上、第１期アニメを中心に簡単に感想をまとめてみました（これでもまだまだ書き足りないんだよね）。

（1991/6）

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◆銀河英雄伝説（アニメ第２期）

〈はじめに〉

　現在、キッズステーションで「銀英伝」ビデオシリーズが週３回のペースで放送中です（ただ今、第３期）。原作小説も、徳間デュアル文庫で、刊行中。
　今さら２期、３期の感想を書いていると、初めて観たときの印象とは、また違ったものになりますが、当時感じたことを思い出して、なるべくそのままに文章にしているつもりです。
　週１回ビデオで予約者に発送していたこのシリーズ、結局、ＴＶ放送と同じ制作ペースのようなもので、各話、作画監督の個性が強く出ていて、キャラデザインにもばらつきがありました。
　最近のアニメでの３ＤＣＧの多用は、変型メカのリアルさよりも、おもちゃのＣＭみたいな、かえってチャチな印象を受けるし、炎や水、雨、雪の降る、滑らかで立体的な動きも、単純な線のキャラクターとの違和感があったりします（『Ｄｒ．リンにきいてみて！』のことを言っているわけではありませんよ）。でも、「銀英伝」の劇画的なキャラクターなら、よくマッチしたでしょう。帝国軍の艦隊も“米粒”と言われずに、ＣＧでもっと立体的に個々の艦の質量というものを表現し、ダイナミックに動かせたんだろうなー。

（2001/8/23）

　さて、「銀英伝」第２期シリーズです。
　前回の感想で（といっても１０年も前のことですが）、

　》実際に観るのは、ＬＤになって、さらにもっと後になるかもしれませんが、楽しみです
　》（ＬＤプレイヤーを持ってないので、この際買うかもしれない）。

　と書いて、ＬＤプレイヤーを買ったのは、「エースをねらえ！」のＬＤボックスが発売されたからなのです。でも、ああ、時は流れ、半永久的と思われたＬＤライブラリーも、ＤＶＤに取って代わる時代となりました(Y_Y;)。
　それはともかく、予約して購入しただけのことはありました、「銀英伝」第２期。
　ジャケットがいい。小説の１章ずつを１話にまとめてありますが、それがＬＤ１枚に４話収録され、その代表的な１シーンをジャケットにしてあります。１枚目は、凛々しく成長したユリアンの「初陣」。２枚目は、「要塞対要塞」。派手なドンパチのシーンでなく、どっしり構えた巨大人工天体の迫力に圧倒される。３枚目は、幼帝誘拐の一種喜劇的なシーン。騎士道に酔いしれるランズベルク伯アルフレットと、後ろで、気が進まないながら、やらざるを得ないシュ－マッハ大佐の複雑な表情。……などなど、傑作シーンが続くジャケットです。
　２期からは、小説を読んでからアニメの方を見たので、映像では、文章で想像したのと、キャラクターや状況設定にイメージが違うというものがいろいろありました。
　「要塞対要塞」は、流体金属層というアニメオリジナルの設定が活かされて、鏡のように上下に映る水上での戦闘や、流体金属層の干満を利用した攻撃など、幅広い攻撃方法がおもしろかったと思います。
　査問会で委員たちの難くせをを次々と論破するヤン。しかし、ネグロポンティ委員長の甲高い声は、威厳を欠いたし、小説で描かれたヤンの心理描写が省略され、ふてぶてしいまでの態度も少なく、ちょっと拍子抜けしました。ホワン・ルイは、この茶番劇を第三者という立場で、冷めた目で見ていて、声もまたキャラの特徴がよく出ていました。
　パン屋の二代目と揶揄されているチュン・ウー・チェン総参謀長は、面長のさえない中年男に描かれていますが、私は、目が細い、小太りの中国人（いかにもって感じか(^_^;)）を想像していました。
　イメージが違うという点では、フェザーンの同盟弁務官事務所を、雑居ビルの中の何室か借りた簡単な出張所と想像していましたが、一戸建ての割と豪華な館。そこからの脱出で、ユリアンの決断と実行力、責任を回避したい弁務官のうろたえぶりは、小説の方がスリルがありました。
　その他、アニメにしてみると決定的に違うのが、音があるということですが、セリフを文字で読むのと、聞き取るのとは違います。帝国側で、お互い呼び掛ける「卿」という言葉は、アニメで最初聞いた時、「けい」を「貴兄」の「兄」かと思いました。（『卿』は『卿』で、他の言葉に代えることはできませんが）「下風（かふう）に立つ」より「風下（かざしも）に立つ」の方が判りやすい。漢字を読めば、すぐに意味の判る言葉も、耳で聞くと理解できなかったり、同音異義語もあったりして、わかりにくいのです。「銀英伝」の登場人物は皆、詩人。華美な修飾や、持って回った言い方が多いのが、田中作品の特徴ですが、アニメでは、小説を読んでいるファンだけではなく、広い対象年令も考慮して、わかりやすい表現に直すべきだったと思います（小説の方で、イゼルロ－ン要塞を放棄するというヤンに、幕僚たちは、“コーヒーカップで驚愕のポルカをかなでる”。この表現は好きです）。
　さらに、とても気になったのは、死の描写について、血が派手に流れ過ぎるのでは。「イゼルローン攻略!!」は、原作では催眠がスを通風ダクトに流して敵を眠らせ無血開城したのですが、アニメでは、白兵戦になり、お互いトマホークを斬りつけての流血戦。また、「バ－ミリオンの死闘」で、小説では、兵士たちの死にいく描写が、それまでとうって代わって、想像すると気持ち悪いくらいに細ごまと描写されています。さらに映像でも、具体的に絵にしています。しかし、そこまで描く必要があったのだろうかと疑問に思います。確かに戦艦が爆発しても、戦死者何万何千人という数字で表されるだけで、読者・視聴者には痛みは感じない。戦争を美化しているという批判や、逆に、格好良さに憧れるというファンレターに対して、作者としても、現実の戦争は悲惨なものだぞということを表現したかったのだろうか。だからといって、兵士一人ひとりの死をこと細かに描写して、戦争の悲惨さ、生命の尊さを訴えることができるのか。送り手としては、教訓的なことを押し付けるつもりもなかったのでしょうけど、難しい問題ですね。

　「おれたちは正義だったはずだ」・・・。“正義”が“暗黒の独裁政治”に敗れて、第２期は終わる。その時、ヤンは、快心の笑みを浮かべ、一部の艦艇を帝国軍から隠し、再起を目指すと言う。う～ん、うまい引きで、リベンジへの期待を持たせます。

（2000/09～2001/08）

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◆銀河英雄伝説（アニメ第３期）

　ＯＰのラインハルトは、精悍というか、野性的で、ビッテンフェルトみたい。ＥＤは、ネタばれですよー。アノ話が終わってからの方がよかった。
　イメージ的に、やはりアニメは、ズレを感じます。
　ヤンとフレデリカの結婚式は、小説では、帝国軍に監視され、内輪だけの質素な式と想像していましたが、アニメは、招待客も多く、華やかすぎます。
　キャラクターイメージでは、カリンの髪型が違～う。性格同様、絶対にショートストレートだと思っていました（道原かつみさんのイラストがぴったり！）。
　サイオキシン麻薬（psy－精神－とダイオキシンを合成した禍々しいネーミングだ）に苦しむユリアンの描写も、小説の方が想像力が働いて迫力があった。文章で想像するのとの違いです。

　ストーリーは、地球教の暗殺計画が敵を選ばず実行され、意外な展開となりますが、ヤンの羨ましい限り(^_^;)の年金生活と政府の謀殺からの脱出が、まず一つの見どころ（ヤンが主体的に行動したのではなく、フレデリカやシェーンコップらの活躍でだが）。悲観主義者レベロ同盟評議会議長も救われませんねー。地球教本部に潜入したユリアンたちと、彼らの正体を知らない帝国軍との連係プレイというのも、おもしろいエピソード。
　イゼルロ－ン再奪取作戦は、偽の通信のやり取りが一度読んでも良くわからなかったのですが、ニ、三度読んでようやく理解できました。相反する二つの指令がどちらも偽で、一方を本物だと思い込まされた帝国軍が翻弄されたというわけですね。
　ところで、艦隊戦は、さまざまな状況下で戦われてきましたが、古代からの平面的な戦術を応用しているだけで（騎馬隊を宇宙艦隊に、弓矢や鉄砲をビーム兵器に置き換えただけで）、それ以上のＳＦらしさが感じられないんですよね。一番気に入っているのは、「カストロプ動乱」で、原作では、キルヒアイスが非凡な艦隊運用の妙を見せましたが、アニメは、“アルテミスの首飾り”の防御をゼッフル粒子爆弾で破壊するという、これぞＳＦ的な作戦。

　第３期ラスト、「八月の政府」発足の式典で、同盟国歌が流れ、「帝国を倒せ！　同盟万歳!!」の大合唱。凄い熱気です。つい最近、押し入れの段ボール箱を整理していたら、９５年発行の「ＣＨＡＬＡ」創刊号に、道原かつみさんの「銀英伝」の続きと（掲載誌を変えながら続けていたんですね）、ファンクラブレポートが載っていて、ビデオアニメ鑑賞会とともに、ファンによる大シュプレヒコールの録音。なるほど、熱気あふれるわけだ(^_^;)。

　新書判の一巻一巻は、うまく話が完結し、しかも伏線を残して、次巻を期待させる終わり方になっていますが、はたして、９巻がどんな展開になっていくのか、その時の私にはまったく想像できませんでした。

（2000/11・・・2002/05）

【例のあのシーンの感想は、ここに書きました（ネタばれ）】

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